43――初配信の反省回を配信してみた with クロ子さん(後編)
いつもブックマークと評価、誤字報告ありがとうございます。
「ちなみに性的なマローンは即削除です、うちのかわいい妹の目には触れさせませんので」
「クロ子さん、それ僕の前で言っちゃダメなヤツなのでは?」
真奈が意図的に低くした声で言うのを聞いてツッコミを入れつつ、視線で『そんなのが来てるの?』と聞いてみたら顔をしかめながらコクコク頷いた。その表情から結構エグい内容なんだろうなと思っていると、メッセンジャーに達也から『こっちで選別するか?』とフォローが来ていた。
それを見た真奈が『お願いしてもいい?』とめずらしくしおらしい感じで返事をしていたので、僕は場をつなぐためにコメントから話題を拾うことにした。
「えっと、『すとらいの先輩にはもう挨拶はしたの?』とのことですが、リアルで会ったことはないですね」
「マネさんとか会社の人たちには挨拶したもんね」
「ちなみにソレイユさんとは前にゲスト出演させていただいた時に、映像でご挨拶はしましたよ」
みそラーメン:ちなみにリアルソレイユの第一印象は?
すずのね:それは聞いてみたい
「ソレイユさんの印象ですか? すごく優しい美人なお姉さん、ですかね」
「まぁ……中学生にメイド服を着させる怪しい人でもあったけどね」
「ちょっとクロ子さん?」
もしかして真奈、あの時のソレイユさんに何か思うところがあったのだろうか。普通に僕のメイド服姿にはしゃいでた記憶しかないけど、一応あとでフォローしておこう。多分これからもソレイユさんとは絡むだろうし、真奈には今後も本人がやってくれる限りは色々なことをお願いするだろうから、わだかまりはない方がいいよね。スタジオへの付き添いとかで、ばったり顔を合わせることもあるかもだし。
「歌音ゆうひとして生まれるきっかけをくださった方なので、今後もお姉さんとして慕っていこうと思います」
日向ソレイユ:ソレイユもゆうひちゃんを妹として可愛がるよー!
「わ。ソレイユさん、観てくださってたんですね。ありがとうございますー!」
「まぁ度が過ぎるようなら私が止めますけどね、姉として」
「クロ子さん!?」
くろのすけ:姉バトルか、バチバチじゃんw
ぼんてん:まぁゆうひちゃんは少々PONの者っぽい雰囲気があるから、保護者は複数いた方がいい
日向ソレイユ:どっちが真の姉なのか勝負だね、クロ子ちゃん!
『真の姉ってなに?』って聞きたくなったけど、なにやら真奈とソレイユさんが楽しそうにしているので口出しはしないでおいた。そうこうしていると、達也から『選び終わったぞ』というメッセージが来て、マローンの本文がメッセンジャーにコピペされてきた。ザッと目を通すと無難な感じのアドバイスだったので、多分これなら大丈夫だろう。
「それでは、マローンを送ってきてくれた方ありがとうございました。早速表示していきたいと思います」
「はい、ドーン」
真奈の口から飛び出た適当な効果音に合わせて、達也から送られてきたマローン画面のスクリーンショットを配信画面に表示する。
「距離を感じるのでまずは敬語をやめよう、ですか。『できる範囲でかまわないから』と付け加えられているのが優しくていいですね」
「でもゆうひちゃんは正直アドリブが苦手だから、普段からそういう風に心がけるのがいいのかも」
確かにそうだなぁ、と真奈の言葉にうんうんと頷く。多分配信に慣れてきたらそういうアドリブもできるようになるのかもしれないけど、配信2回目の素人にそういうのを求められても困る。
みつひろ:小ネタ入れんな、中学生にさ◯ま◯しはわからんだろw
スカラティーナ:隠しきれないおじさん臭……
スープカレー:やめろ、その術は俺に効く
ミミック:とりあえずタメ口配信やってみたら?
コメントに背中を押してもらったので、とりあえず頑張ってタメ口で話してみることにした。達也や真奈と話すときの感じでやってみたらいいのかな、でも油断すると言っちゃいけないこととかがポロッと口から零れそうだから気をつけないと。
「じゃあ、これからは敬語はなるべく使わないようにするね。でも無意識に使っちゃったらごめんね」
ペコリと頭を下げると、何故かコメント欄に怒涛の勢いで『かわいい』が流れた。普通に話しただけなのに、リスナーさんたちのツボがよくわからない。その後も『もっと歌を歌ってほしい』とか『雑談を聞きたい』とか色々な希望をもらった。ゲーム配信がないのは、多分ソレイユさんとのゲーム対決であんまり上手じゃなかったからかもしれない。
花乃いろは:マネちゃん経由でコラボお願いしてるんだけど、進捗はどんな感じぃ?
ムカゴ:やべぇ、いろは様もおるw
サーフェス:そういやSNSで言ってたな
「先輩には敬語でもいいのかな?」
「いいんじゃない? 部活だって先輩には敬語使うでしょ」
「それじゃあ、えっと、いろは先輩はじめまして。歌音ゆうひと申します」
僕がペコリと頭を下げると、画面の中のゆうひちゃんもシンクロしてお辞儀する。やっぱり挨拶は大事だよね。まだスケジュールは決まってないんだけど、今度会社のスタジオに呼ばれているのでその時も誰か先輩が一緒だったとしたらしっかり挨拶したいと思っている。
「あ、花乃いろはさん。ゆうひちゃんの姉のクロ子ですが、マネさんから業務連絡をいただきました」
「だからなんでクロ子さんが、マネージャーさんと繋がってるの……?」
「ディカッションの連絡先、交換してるからね」
リスナーさんからは『公式公認の姉じゃん』とか『ソレイユまた負けたのか』とかすごい勢いでコメントが流れていく。僕もマネージャーさんとはディスカッションのアカウント交換してるんだけど、こちらには特にそういう話は届いてなかったんだけどね。ちなみにディスカッションとは通話もチャットもできる高性能コミュニケーションツールで、スマホのアプリで手軽に使えるんだって。僕もまだ使いはじめたばかりだからよくわかってないけど、ファイルを送信したりもできるから配信者さんは大抵使っているみたい。
「『中学生にお前みたいな生き物を見せるのは教育に悪い、ワガママ言ってると東京湾に投げ込むぞ』だそうです。ゆうひちゃんとのコラボは数年待ってくださいね」
「えぇ……最初にご挨拶したときは、優しそうなマネージャーさんだったのに」
「なんかね、ゆうひちゃんの前はいろはさんを担当してたんだって。脱走したいろはさんを肩に担いで歩く姿から、腕力マネって呼ばれてるんだとか」
あれ、確かマネージャーさんって女性だったよね。いろは先輩がどれくらいの体格なのかはわからないけど、成人女性を抱えられるってすごい力持ちだ。
すばらしか:腕力マネか! ゆうひちゃんのボディーガードとしては最適じゃねぇか
夢見しいな:このマネさん、本当にやるって言ったら実行するんだよね
花乃いろは:げぇっ、旧マネ!? しかたない、ここは一旦退こう。ゆうひちゃん、またねぇ~
嵐のように去っていったなぁ、いろは先輩。それはさておき、そろそろまとめないと最後の歌う時間がなくなってしまう。
「そろそろもらった意見をまとめようと思います。とりあえず僕が今一番やるべきことは、敬語じゃなくてタメ口でリラックスしながら話すこと、でいいのかな?」
「そうだね、いきなり全部は難しいからまずはそこからやっていけばいいと思うよ」
「でも次回からはクロ子さんはいないんだよね、ちょっとさみしいかも……」
「はいはい、不安なのはわかるけど。コメントでみなさんも支えてくれるだろうし、ひどい悪口書く人は開示請求とかしちゃえばいいんだよ」
ムムシカ:初手開示請求w
サイトウ:ゆうひちゃんのことは俺らにまかせてくださいよ、お義姉さん
しょうが湯:さりげなくお義姉さん呼びしてるの草生える
「お義姉さんじゃないし。ゆうひちゃんには私たちが吟味した、ちゃんとした人を紹介します」
「紹介されても困るんだけど……それでは、最後にお別れの一曲を歌います!」
「時間も差し迫ってるもんね。今日はありがとうございました、妹のことをこれからもよろしくお願いします!」
最後はバタバタしちゃったけど、とあるアニメの劇中歌でしっとりしたバラードを1コーラスだけ歌って反省会配信を終えた。許可を取ってくれたのは、さっき話に出たマネージャーさん。鳳さんはマネージャーさんだけじゃなくて事務方の統括って感じになっているので、専任で対応してくれる人がいるのは正直助かる。
コメントでも僕の歌へのお褒めの言葉とかアニメの思い出話も混ざりつつ、肯定的な意見がほとんどだったからよかった。真奈に対しても『また遊びに来てほしい』とか『レギュラー化希望』とかあたたかい意見が多くてよかったなぁ。でも確かに僕の配信なんだから、真奈に頼らずにしっかりやっていかないといけないよね。
後日この配信のアーカイブを聞いたササミママがしっかりとしたクロ子さんのキャラデザをしてくれて、ゆうひちゃんとクロ子さんが仲良くしているイラストを描いてバズったのは別のお話。
配信っぽさを出そうとすると、どうしても会話多目になっちゃう傾向がありますね(汗)




