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TSして昔の声を取り戻したボクは女性シンガーの歌を熱唱したい!  作者: 武藤かんぬき
第二章

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45/50

42――初配信の反省回を配信してみた with クロ子さん(前編)

いつもブックマークと評価、誤字報告ありがとうございます。


「初配信の反省会を配信しちゃう配信ー!」


「わー、パチパチパチ」


 僕の初配信から数日経った。マネージャーさんからダメ出しをされた時に、『どうせならリスナーのみんなからの感想も聞いてみたら?』と提案された。大丈夫かな、怒られたりしないかなと不安になっていると、真奈が『すとらいさん側がOKなら、私が相槌役で一緒に出ようか? リスナーさんの気もちょっとは逸らせるんじゃないかな?』と言ってくれた。


 『さすがにそれはマズいでしょ』と思いつつも、マネージャーさんに相談してみたら『いいんじゃない?』と軽い返事でOKをもらえてしまった。しかも『動かない立ち絵だけど、それでいいなら貸しちゃうよ』とデフォルメされた忍者みたいなイラストも送られてきた。


「真奈、本当に大丈夫なの? たくさんの知らない人たちの前で話するんだよ?」


「うーん、まぁ言っちゃマズいこととかは優ちゃんと一緒に研修受けたからわかってるし。やってみたら案外いい感じにハマるかもよ」


 せっかく真奈がそう言ってくれたので、今回だけ協力してもらうことにした。さすがに達也は男子だし、このVtuber界隈って演者の女性に男性の影がチラつくのを嫌う人が多いらしい。なので前回と同様にモデレーター権限を使って、NGなコメントを消したりユーザーをブロックしたりする裏方業務に専念してもらうことになった。


「この間の初配信を見てくださった方、ありがとうございました! 今日は『こういうところがよかったよ』とか『ここはこうした方がいいよ』みたいなアドバイスをみなさんにもらいつつ、初心者Vtuberからレベルアップしていこうという企画です」


「ぶっちゃけちゃうと雑談回だよね」


「そういう本当のことは言わないで! えっと、この黒い忍者さんはクロ子さんです。今日だけ助っ人として来てもらいました」


「不慣れなゆう……ひちゃんのために、合いの手やツッコミを入れる役です。まぁ、置物みたいなものだと思ってもらえれば」


 途中で変な間が空いたけど、それ以外は非常にリラックスしながら真奈はマイクに向かって話していた。もしかして、こういう配信者に僕より向いているんじゃ……?



 みみぞう:それ男忍者のイラストじゃねーか。ガバガバ過ぎるw


 ハチ公:クロ子さんは事務所の人?


 ししまる:本名で呼びそうになった?w




 早速コメントでもツッコまれていたけど、真奈は苦笑しながら『噛みそうになっちゃった』とうまくかわしていた。まぁ『ゆうひ』だから愛称でゆうちゃん呼びしてるっていう言い訳でも、なんとか誤魔化せる気はするけどね。



 ノブ:クロ子さんの自己紹介が聞きたい!



 まさかリスナーさんからそんなリクエストが飛んでくるとは思っていなかったのか、隣にいる真奈の顔が引きつる。


「あはは、まさかこんなフリー素材みたいなイラストの忍者が自己紹介だなんて、そんなおこがましい……」


 そんなよくわからないコメントで煙に巻こうとした真奈だけど、リスナーさんからすればすとりーむらいぶ所属のVtuberに絡む謎の忍者なわけで。中の人がどんな人なのか気になっちゃうのは仕方がないのかもしれない。


 口に出して喋っちゃうとマイクにそのまま声が乗っちゃうので、手元にある簡単な進行表の余白にサラサラと文字を書いて真奈に見せた。僕が書いた『当たり障りのない自己紹介ならしてもいいんじゃない?』という文字を見て、真奈はこくりと頷いた。


「えーと、それではリクエストに答えまして。私はあくまで今回限りのアシスタントなので、簡単に自己紹介します」


 そう前置きした真奈は、こちらに視線を向けてきた。多分『どこまで話していいと思う?』という意味なんだろう。さっきの文章の下に『幼なじみのお姉さんってことは言ってもいいんじゃない?』と答えを書くと、了解の意味なのか真奈はグッと右拳を握って見せた。


「名前はクロ子です、実はついさっき決まった名前だったりします」


「わ、ぶっちゃけた!」


「だってホントのことでしょ」



 ミカ:なるほど、黒子ってことね。でも黒子と忍者って似て非なるものなのでは?


 ひよりん:仲よしだなぁ


 もぐもぐぷりん:ゆうひちゃんのリアル姉とか?



「するどい……」


「ゆうひちゃん、口に出てるから」


 思わずコメントを見て呟いてしまって、真奈にツッコまれてしまった。もちろん左手の甲で、ビシッと軽く叩かれるのもセットだ。言葉には気をつけないといけないのに、真奈と一緒だと気が緩んでしまって思わず失言してしまった。油断せずに集中しないとね。



 だるまナイト:このうっかりうさぎ娘、口が緩いぞwww


 シリコン:ヤバいな、この子ポロポロ内緒話とか漏らしそうだw


 カルボナーラ:そういうところもかわいい


 イリーガル:まだ配信2回目の初心者なんだから、多少は大目に見てやれよ



「ゆうひちゃんが口を滑らせてしまったので言っちゃうけど、半分正解かな。小さい頃から一緒にいた幼なじみなんです、ゆうひちゃんは妹みたいな存在ですね」


 僕のVtuberとしてのプロフィールは中学生ということになっているから、実際は同い年でも真奈の方が姉という扱いになるのは仕方がない。


「Vtuberになるって決めたときに相談したら、手伝ってくれるということだったので裏方さんをやってもらっています」


「まさかこんな風に配信でしゃべるなんて思ってなかったけどね」


 いい感じに真奈が会話が一段落させてくれたので、話を進めることにした。さっき真奈へのメッセージを書いた進行表を手に持って、書かれているセリフを読み上げる。


「クロ子さんの紹介はこれくらいにして、今日の本題にいきたいと思います」


「そうね、時間にも限りはあるし。先に進めましょう」


「タイトル通りなのですが、先日の僕の初配信についての反省会をやっちゃおうかと。みなさんからのご指摘をうかがって、今後の配信に活かそうという趣旨です」


「褒め7、お叱り3ぐらいの割合でお願いします。ゆうひちゃん、結構凹みやすいのと褒められて伸びる子なので」


「お叱りも優しい感じでお願いします」


 真奈がアドリブでそんな風に言ってくれたので、僕もペコリと頭を下げながらお願いした。画面上で垂れウサ耳を揺らしながら、アバターも一緒にお辞儀している。



 ししおどし:姉というよりオカンやないかw


 きみどり:可哀想な方がかわいい、イジメて泣かせたい


 タンザナイト:さすがに女子中学生をイジメて喜ぶのは人間性を疑う



 怖いことを書き込んでいるリスナーを、他のリスナーがたしなめているのが目に入る。やっぱり愉快犯というか、ネット上だと言葉や主張が乱暴だったり過激になったりする人がいるんだなぁと実感する。こういう人をうまく流して、見ている人の気分を害さないようにするのも配信者としての僕の役目なのだろう。


「みなさんの意見が欲しいのは、ここはこうした方がよかったという改善点。それとよかったところですかね」


「そうだねゆうひちゃん、よくできました」


「えへへ、褒められた」



 クレセント:身内が率先して甘やかすのはダメでしょw


 たい焼きおじさん:ゆうひちゃん、ニッコニコで草


 ゴリ夢中:こっそり連れて帰りたい



「それじゃあ、このマローンにご意見送ってください」


 URLを配信画面に固定する。ちなみにマローンとは匿名でメッセージを受け取れるサービスで、自分から本文に名乗りを入れない限りは誰が書いてるかわからない。Vtuberの配信とか、あとはネットで創作物を発表している創作者さんたちが感想をもらうために使っていたりするみたいだ。


 マローンの確認は僕たちの後ろの席に座っている達也がやってくれるので、配信に出しても大丈夫な質問は僕のPCに送られてくる手筈になっている。そこで真奈と僕が最終チェックして、リアルタイムにリスナーさんたちにも見えるように表示する。やっぱり何重にも問題がないかチェックしないと、炎上したらこわいもんね。


 さてさて、どんな文章が送られてくるのか。ちょっとだけ楽しみだったりする。


マネさん「黒子のイラストはないから、忍者でいっか。服黒いし」

これぐらいのノリだったと思われます(笑)

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