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TSして昔の声を取り戻したボクは女性シンガーの歌を熱唱したい!  作者: 武藤かんぬき
第二章

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43/50

41――初配信 後編

いつもブックマークと評価、誤字報告ありがとうございます。


 実は呼び方投票で一番人気だったのは『にぃに』と『ねぇね』だったんだけど、さすがにこれは恥ずかしすぎたので勘弁してもらった。


 アバターのゆうひちゃんがそんな風にリスナーさんを呼んだら、客観的に見たらすごくかわいいだろうとは思うよ。でも中身が僕だからね、呼んでる自分を想像したら直視に耐えられなくて必死に抵抗した。


 その姿を笑うでもなく、コメント欄が怒涛の『かわいい』で埋め尽くされたのはどういうことなのか。後で真奈に聞いたら、僕の動きを忠実にトレースしたアバターの動作がすごくかわいらしかったらしい。なるほど、僕じゃなくてゆうひちゃんへのコメントなら納得できる。


 僕がうんうんと頷きながらそう言うと、何故か呆れたように真奈が僕を見ていたので小首を傾げてしまった。別に呆れられるようなことはなかったのにと不思議に思った僕が小首を傾げると、真奈は何やら達観したような表情で『優ちゃんはそのままでいいんだよ』と言いながら頭を撫でた。最近同じようなことしか言わないけど、真奈はどうしちゃったんだろうか。


 SNSのハッシュタグは普通にゆうひちゃんの名前と事務所名のすとりーむらいぶを付けてもらって、後々必要ならファン用のタグを作ることで落ち着いた。ハッシュタグで検索した人がたまたま僕の配信のお知らせを見つけて配信を観てくれる可能性も少ないけどあるだろうし、あんまり突飛なタグよりはありふれた物の方がそういう意味ではいいかもしれないよね。


 僕の自己紹介として、学生であることと現在学校をお休みしていることは伝えておいた。でも秋に別の学校への編入試験を受けるために勉強しなきゃいけないことや、ボイトレに通ったりするので配信頻度は他の学生Vtuberの人と変わらずゆっくりめであることも併せて話す。事務所の人が言うにはこういう事情を話しておけば、『配信頻度が少ない』なんていうクレームを減らす効果が期待できるんだって。ネットでなら相手に何を言ってもいいと思っている人も結構いて、そういう人たちからのクレームというか言いがかりはゼロにはならないと残念そうに社員さんが言っていた。


「あと、最後に。配信のメインテーマって、その日によって違うと思います。でも例えばゲームのプレイ配信の日だったり、雑談配信の日でも配信の最後に一曲歌わせていただきます」


 みつひろ:歌枠じゃなくても歌コーナーがある感じ?


 僕の唐突な言葉に、早速リスナーさんが質問を投げてきてくれた。僕がひとりだけで説明しようとするとうまくまとめられなくてグダグダしそうだけど、こういう風に的確なタイミングで必要な質問をしてくれて会話にできるのは本当にありがたい。


「そうですね。元々自分の歌を誰かに聞いてほしいという動機で配信をはじめたので、歌のコーナーは必ずやりたいと思っています」


 カムイ:そもそも歌ってみたの動画も見てないからわからんけど、どれくらい上手いの?


 大根総理:聞いてみないと判断できないな。カラオケレベルだったとしても初期からチェックして上達したところで古参ぶりたいヤツらもいるだろうし


 当然だけど、リスナー全員が僕の歌を聞いたことがある人たちではないんだよね。さっきのコメントじゃないけど、素人のカラオケを聞かされても迷惑だって思う人もいれば、逆に下手なところから見守って上手になった頃に『俺が育てた』と自慢したい人もいるんだろうし。


「当然聞きたくないって思う人もいるでしょうから、配信のエンディングテーマみたいな感じで最後に歌わせてもらおうと思っています」


 そういう方法なら聞きたくないと思う人は配信から離脱しやすいだろうと、アドバイスしてくれたのはすとらいの社員さんだったりする。ちなみにさっきから話に出てくる社員さんは特定の人ではなくてアドバイスをくれた複数人だ。事務所で打ち合わせをしていると挨拶がてら顔を出してくれて、本当に細かいところまでアドバイスしてくれるんだよね。鳳さんは『ゆうひちゃんが可愛いから、色々と教えたがる人が多いのよ』と言っていたけど、僕としても教えてもらえてすごく助かっているので今後もアドバイスをもらえたらと思っている。


「せっかくですし、今日の配信でやるべきことは全部終わったので。1曲歌わせてもらえればと思います」


 ゴリ夢中:初見期待


 スープカレー:ソレイユの動画で歌聞いたけど、上手いよこの子


 プリムラ:素人のカラオケレベルだろうけど物は試し


 コメントの中にはなかなかに厳しいものも含まれているけど、ほとんどは期待とか応援の言葉だった。それに勇気をもらって、机の上にあるミネラルウォーターをゴクリと飲んで喉を潤す。よし、準備万端。


 スカラティーナ:ごくごく音助かる


 くるみ:と、特殊な変態だーっ


 紅蓮丸:まぁこんな変態どもがいるので、飲み物休憩するときはミュートにするといいよ


 いつの間にか『ごくごく』でコメント欄が埋め尽くされていてびっくりはしたけど、リスナーさんたちのチームワークの良さに思わずほっこりしてしまった。


 それはさておき、今日歌うのは3年ぐらい前に人気が出たアニメの主題歌だ。僕はそのアニメを観たことがないんだけど、すとらいの社員さんがはじめての挨拶代わりに歌うならこれがいいのではと勧めてくれた曲だ。もちろん許可取りもすでに終わっているので、なんの心配もなく歌えるのがありがたい。


「それでは、皆様へ『はじめまして』と『よろしくお願いします』の気持ちを込めて歌います。アニメ『シェアハウスわたあめで会いましょう』のオープニングテーマ、『はじめまして』です」


 僕が言い終わると、イントロが流れ出して体が勝手にリズムに合わせて揺れはじめる。社員さんからははじめての配信だし録音してその音源を流す方法を勧められたんだけど、ワガママを言って今回は生で歌わせてもらうことにした。下手に聞こえるかもしれない、前にスタジオで録った時と違って僕の部屋だから音質なんかはよくないと思う。でも今こうして無事にスタートできた気持ちと感謝を歌にのせて、リスナーの人だけじゃなくて関わってくれた人たちに伝えたい。


「ドキドキして ワクワクして ケンカするときもあるけど。でもここが私たちの帰る場所だから」


 みんなそれぞれの生活があって、きっと毎日いろんなことがあると思う。良いことも嫌なことも。でもどっちがあってもそれを自分の中で消化して、また新しい気持ちで次の1日を過ごすお手伝いを僕の歌でできたらいいな。


 アウトロの余韻をしばらく残してから、僕は居住まいを正してマイクに向き直った。コメントはどんな反応だろう、下手とか聞きたくないとかマイナスの反応もあると思うしそれは仕方ない。でもできればそういうコメントの数が少なかったらありがたいよね、覚悟して見たとしてもやっぱり傷つくだろうし。


 芙蓉かえで:じょうずー!


 新機軸:中学生だと考えればかなりの上澄み、今後に期待


 ツバメの巣:声がいい、これからいろんな曲が聞けるのが楽しみ


 日向ソレイユ:ゆうひちゃんは私が育てた(ドヤァ


 ハチ公:ソレイユwww


 スープカレー:確かに見出したのはお前だけどさぁ、ドヤられると腹立つな


 拍手代わりの『8888888』がすごいスピードで流れる中、肯定的な意見がいくつも見えてホッと安堵の息を吐いた。その中にソレイユさんの名前もあって、見守ってくれていたんだなとすごく嬉しくなった。


「ソレイユさんだ。お忙しいのに、来てくださってありがとうございます!」


 僕が挨拶とお礼を言うと、ソレイユさんは『またコラボしようねー』と気軽な感じで返事をしてくれた。もちろん『言うほど上手くはない』とか『自分の方が上手い』とかそういう言葉もあったけど、それは『ここで満足するなよ』っていう激励だと思おう。まだボイトレも通いはじめたばっかりだし、これからまだまだ成長できると思うからね。


 こんな感じで、なんとか僕の初配信は大成功とまではいかないけど及第点はもらえるぐらいでなんとか終わらせることができた。ただ後日マネージャーさんからダメ出しとまではいかないけど、ここはこうした方がよかったという指摘をもらったがちょっと残念だったかな。配信も歌と同じぐらい頑張って、上手にできるようになっていかないとね。

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