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TSして昔の声を取り戻したボクは女性シンガーの歌を熱唱したい!  作者: 武藤かんぬき
第一章

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13/50

12――カラオケと今後の相談

いつもブックマークと評価、誤字報告ありがとうございます。


 ファストフード店でしばらく他愛もない話をした後、僕の生歌を聞きたいと言われたのでまたもカラオケに行くことになった。


 いっしょにいるのが派手な外見の女子高生たちだったからか、受付のお姉さんがこっそりと耳元で『大丈夫?』と聞いてくれた。女子高生の中にひとりだけ女子中学生っぽい子が混ざっていたら、無理やり連れてこられたのかなと心配してくれたのかもしれない。僕が店員さんだったら多分本人には確認しないけど、『大丈夫かな、あの子』と心配にはなるだろうし。


 せっかく今後快く協力すると言ってくれている彼女たちにあらぬ疑惑を掛けてはいけないと、『大丈夫です!』と笑顔でキッパリとその心配を否定しておいた。


 利用時間は30分だけにしたので時間を有効的に使うために、部屋に来る途中にあったドリンクバーで飲み物をついでに取っておいた。中に入って席に座ると、すぐにタブレットみたいな選曲機を渡された。ダラダラとしていて追加料金が無駄に発生してはいけないと思って、チャチャッと曲を選ぶ。まだ声変わりしてなかった頃によく流し聞きしていた、サブスクで初めて聞いたテンポの早いポップス曲。


 へぇ、この曲ってゲームの曲だったんだ。モニターの側に座っていた奏さんがマイクを取ってくれて、持ち手をこちらに向けて渡してくれた。さっき『脳筋っぽい』とか思ってごめんなさい、その優しさと気遣いに思わずキュンとしてしまった。


 テンポが早いからラブソングっぽく聞こえないんだけど、『あなたの隣まであと何歩』とか『あなたに好きを届けたい』とかそういう歌詞があるからジャンルとしてはラブソングなのだろう。普通に歌詞を読むと恥ずかしくなるけど、不思議と歌としてなら普通に歌えるんだよね。


 スタッカートみたいに歌詞を短く区切りながら歌っていると、なんだか下り坂で走りながらピョンピョンとジャンプしているような気分になってきてすごく楽しい。


 ジャン、とアウトロの最後の音が鳴るのを聞き終えてマイクのスイッチをオフにする。ほんのしばらくの間が空いて、『おおー』という感心の声とパチパチと拍手の音が室内に響いた。


「声がいいね、すごく耳に優しいというか」


「すっごく上手、動画を観た時も思ったけど生歌はやっぱ違うわ」


「……ぴょんぴょん跳ねてるの、すごくかわいかった」


 口々に褒めて(?)もらっているのが照れくさくて、思わず『えへへ』と笑みがこぼれる。何故か向かい側に座っている真奈が、自慢げに腕を組んでうんうんと頷いているのが見える。いや、なんで真奈がそんな『私が育てた』みたいな雰囲気を出しているのか。確かに小学生の頃はよくカラオケでの練習によく付き合ってもらったから、そういう意味では育てられたというのもあながち間違いではないんだけどね。


 僕の歌についてはみんなが太鼓判を押してくれたので、後はどういう服装や演出で動画を撮るのかとアイデアを出し合った。そんな中で強硬に僕に大きなヘッドホンを装着させると言い張ったのは、クールビューティなのにかわいい物好きな伊織さんだった。


「……かわいい女の子がサイズの大きな物を身に着けたら、もっとかわいくなる」


「うーん、それって彼シャツしてる女子がかわいいっていうのと同じ話?」


「……近いけど、その例えはいかがわしい。メンズのパーカーを着る小柄な子って、かわいい。あんな感じ」


 短いセンテンスながら普段よりも勢いがある伊織さんの言葉に押し負けて小町さんが腕組みしながら例えを出したのだけど、伊織さん的にはちょっと納得できなかったみたいで訂正が入り、同じ感性を持つらしい真奈がうんうんと頷く。ちなみに僕には全然違いがわからないし、ふたりが何を言っているのかもよくわからなかった。


「まぁコーデでヘッドホンを取り入れるとかもあるしね、いおりんが言うならそれが最適解なのかも」


 さすが衣装担当、小町さんが納得を示すとみんなも頷いた。僕としてはこの中で一番女の子のファッションに疎いんだし、伊織さんや小町さんだけじゃなくてこの場にいるみんなが先生みたいなものだ。彼女たちがアリだと言うのなら、きっとアリなのだろう。


「優ちゃん、確かたっちゃんがおっきくてゴツいヘッドホン持ってたよね。今度動画を撮る時に貸してもらおうか」


「……あれってすごく高いヤツって言ってなかったっけ、貸してくれるかな?」


「大丈夫だって、優ちゃんがお願いしたら絶対貸してくれるよ」


 軽々しく言う真奈だけど、ヘッドホンとかパソコンとかそういうのが好きな達也にとっては宝物だろうし気軽にはお願いできないよね。何か担保になるようなものを預けて、傷つけたりしたらそれを差し出すとかいう風にしたら達也も納得して貸し借りができるかもしれない。大事な幼なじみで友達だからこそ、ちゃんと筋を通してお願いしないとね。


「そう言えば、この間の動画ってどこで撮ったの? 頑張ってたのは伝わったけど、声の返りとかがアンバランスだったのがちょっと気になった」


「……ええっ、そうだったっけ? アタシ全然気付かなかったけど」


 奏さんが言うと、全然思い当たらないとばかりに弥生さんが返した。まぁ初めての録音だったし、僕自身も何度も繰り返し聞かないと不自然に音がブレたり部分的に変な強弱がついたりしているのに気づかなかったぐらいだ。奏さんの言葉を聞く限り、やっぱり場所が問題だったのかな? 今度はカラオケボックスで撮影してみようか。でもとあるカラオケ機種に歌っている姿を撮影できる機能があってそれを使って撮影した動画を昔に観たことがあるんだけど、雑音が多かったりしてそんなに音が良いって思わなかったんだよね。むしろ今回達也が色々とした上で録音した方が、音質はよかったと思う。


 自分の部屋だと答えると、奏さんが『今度はスタジオを借りて録音してみようか』と提案してくれた。どれだけ言葉で違いを説明したところでよくわからないだろうし、スタジオ録音と自分の部屋で録音したものを聴き比べれば一番納得がいくのではないかとのこと。百聞は一見にしかずという言葉があるけれど、目が耳に替わっただけで意味合い的には一緒だよね。


「でもスタジオって、そんな簡単に借りられるんでしょうか?」


 個人的にはそういうちゃんとしたスタジオって、高そうな機械がたくさんあるイメージがある。レンタルできたとしても、機械を壊したりするリスクを考えるとお試しでやってきた学生に貸してくれるのだろうか。僕がそう思って質問すると、弥生さんが『優希ちゃんは心配性だねー』とケラケラ笑った。


「確かにアタシらだけで借りようとしたら難しいかもしれないけど、でもアタシらには強い味方がいるんだよねー」


「……味方?」


 その味方っていう人が全然想像できなくて小首を傾げると、隣に座る伊織さんが僕の肩をトントンと軽く叩いた。僕が視線を向けると、細くてキレイな人差し指を自分の顔へと向ける伊織さん。


「……私たちでも貸してくれるスタジオ、いくつか知ってる。前にも借りたことある」


「いおりんはモデルだからね、色々と便利な知り合いがいるんだよ」


 小町さんの補足に、ちょっとだけ自慢げに伊織さんがコクリと頷いた。なるほど、想像だけどモデル業界って人脈がすごく広がりそうだよね。横の繋がりがどこまでも続いていきそうな感じ。


 話を聞くと、前にコスプレ動画を撮るためにダンススタジオを借りた時にも彼女の人脈を頼ったらしい。


「でもスタジオの中の機械って、すごく専門的なものが多そうなんですけど。スタッフさんも借りられるんでしょうか?」


「……そっか、確かに。そういうスタッフさんの心当たりも、モデル仲間に聞いてみる」


「ありがとうございます! でも伊織さんに頼ってばっかりで、なんだか申し訳ないですね……」


 思わずお礼を言ったが、彼女にばかり負担を掛けてしまっている気がする。でも僕には伝手がないし、そもそも姿どころか性別も変わっているんだから男の僕の知人には頼れない。いや、まぁ前の僕は無気力人間だったから、姿が変わっていなかったとしても役に立つ人脈なんてないんだけどね。


 伊織さんはしょんぼりした僕の頭をポンポンと撫でて、優しく微笑んだ。


「優希ちゃんは、私と仲良くしてくれたら、それでいい。時々ぎゅってさせてくれると、すごく嬉しい」


 やってもらうこととお礼が全然釣り合ってないと思うのだけど、伊織さんがそれでいいなら僕としては全然構わない。同い年の女子に抱きしめられるのも頭を撫でられるのも精神的にすごく恥ずかしいけど、僕はこれから女の子として生きていかないといけないのだから。これくらいのことには動じないように慣れていかないと。


 僕が伊織さんのお願いを受け入れると、彼女は早速僕をぎゅうっと優しく抱きしめた。柔らかいしいい匂いがするし、なんだかちょっとドキドキする。女子とのこういう接触に、果たして慣れる日なんていつか来るのだろうか。


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