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その9 明治・花花・対決

 巡査部長・藤田五郎と部下の警察官は懸命に、高田一派の捜査をしていたが、捜査は難航しているようだ。


 そして警察は捜査だけではなく、高田一派との決戦に備えて、格闘訓練にも力を入れている。


 剣術は僕が指南していたのだが、徒手による格闘は、なんと、あの桜庭春花が教官となるようだ。


「おおぉーう」


 最初、警官たちは、道着を着た桜庭春花さくらばはるかを見て、その美貌に、どよめいたが、


「あなたたち、実戦では、そんな戦い方じゃ、ダメよ」


 春花は、実戦的で近代的な格闘術に通じているらく、


「ほら、後ろが隙だらけ!」


 と、竹刀でビシバシと警官を叩き、すぐに格闘訓練は厳しい修羅場へと変貌した。


「あなた達が戦うのは、一騎打ちでもないし、正々堂々でもないのよ!」


 桜庭春花のシゴキを観ていると、なんだか屠龍館時代の綾花あやかに似ているなと、思えてきた。


 そこへ、綾花が僕の弁当を届けにやって来る。


 道場に入るなり、綾花は春花の姿に目をとめて、春花も綾花の方へ視線を向ける。


 似た者同士の同族嫌悪のためか、一瞬のうちに、両者の間に火花が散った。


「あら、女性が指南しているの?」


 綾花の言葉に、藤田は、


「彼女は近代的な戦闘の専門家だ」


「無手での戦いなら、屠龍老荘流の私のほうが、強いと思うわ」


 この挑発的な発言を聞いた僕は、


「止めないか、綾花」


 妻である綾花をたしなめたのだが、それを聞いた春花は、


「あら、ずいぶんと自信家なのね。じゃあ、試してみますか、奥さん」


 受けて立つ気、満々だ。藤田も二人の対決には興味があるらしく、


「まあ、古流と近代戦闘の対戦をみるのも、勉強になるかな」


 と、対戦への、肯定的な理由付けをする始末だ。


 結局、この二人は柔道で対戦することになり、柔道着に着替えた綾花と春花が、道場の中央で一礼する。


 見物する警官たちも、興味津々の視線で二人を観ていた。


 審判は藤田が務め、


「始め!」


 組手が始まる。花花対決だと、僕は思った。


 実は綾花は屠龍館時代、出稽古に来た、大島優花という女性剣士と試合をしたことがあり、今回が二度目の花花対決だ。


 互いに様子を伺う、綾花と春花。


 バッと、組み付き、綾花が足を払ったが、体勢を崩しながらも春花は、腕の関節を取りにくる。


 両者が倒れて、寝技の攻防になり、二人は畳の上で絡み合った。


「止めい」


 審判の藤田が、硬直状態となった二人を一旦止め、立ち上がらせる。


 再び、組み合った二人だが、綾花の再度の足払いに、


「痛っ、今のは打撃でしょう」


 と、春花が抗議する。


「何、言ってるの、足払いよ!」

「いいえ、今のは、蹴りです!」


 二人は口論になり、頭に血が上ったのか、


「何よ、エセ巫女のくせに!」

「あんたは怪力のバカ女よ!」


 罵りあいの末、綾花と春花は、拳で殴り合うケンカを始めた。


「綾花、止めないか」

「おいおい、止めろ」


 僕が綾花を、藤田が春花を羽交い締めにして、引き離すが、


「罰当たりの偽巫女!」

「年下好きの助平女!」


 綾花と春花は、大声で喚き散らし、口汚く相手を罵る。


 女性の戦いは、本当に恐い。

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