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冤罪で追放された少女、隣国の王太子様に溺愛される  作者: 有原優


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第八話 演劇


 そして完食した後、二人が向かうのは、劇だ。


「そう言えば私、この国で劇見るの初めてな気がします」


 祖国では見ていたが、この国で見るのは初めてだ。


「なら、楽しみにしていてくれ。この劇団は凄いぞ」


 チラシを見せながら言う、レノルド。


「悲恋形なんですね」


 悲恋。鯉が最後に敗れる物語だ。


 正直意外だった。レノルドが好きなのはハッピーエンドかとばかり思っていたからだ。


「この劇は凄いぞ。泣くかもしれない」

「そんなにですか」


 やけに自信満々なんだなと、リリーは思った。


 そして、雑談もそこそこに二人は椅子に座る。

 特等席だ。レノルドの権力で取ったんだろうなと、リリーは推察した。


「そう言えばさっきの祖国に戻るという件はどういう事ですか?」

「それはシンプルな話だ」


 レノルドは咳払いし、


「今度外交関係で話すことがあるんだ」

「外交関係……」


 という事は、リリー関係なく、元々そう言う話が出ていたのだろうか。


「元々貿易関係の話し合いをしなければならなかったんだ。だからちょうどいいなって」


 ちょうどいい……


「それに私が行くと?」


 そう。、リリーが言うと、レノルドはただ黙って頷いた。


「無理でしょ。私が戻ることなんて」


行きたい。しかし、あの国に行っても門前払いな気がする。


「いや、公的に俺の関係者として行ってもらう」


 戻れるわけがない。

 戻れない。が、確かにそうだ。

 追放されたが、戻ってこれないとは一言も言われてない。

 しかも、物的証拠が無かったはず。


 勿論個人で行った場合は、追い出される、が、それがもし公的な謁見だったらどうか。


 経済的に豊かなこの国を刺激するリスクを負ってまで、リリーを追い出さないってことだ。


「それは、レノルド様の妻になるってことですか?」


 話の流れからしたらそう言う話になる。

 つまり王妃になるという事はつまりレノルドと結婚婚約するという事だ。

 そんな覚悟はまだできてはいない。

 まだあくまでも選択肢の一つとしてしかとらえられていない。


「あくまでも、俺の補佐としてついてくるだけでもいい。が、もし、王妃として行った方が、追い出されるリスクは少なくなるだろう」


 一種の脅しだとっリリーは思った。


「まあ、今ここであまり公的な話をするのは、望ましくもない。周りに聞こえたら大変だからな。続きは、王宮に戻ってからだ」


 今ここは個室。二階の箱席に座っている。

 だからこそ、周りに話を聞かれるリスクは少ないが、絶対ではない。


「分かりました」


 リリーは、心の中に持っている疑問を押し殺した。

 話を持ち掛けて、自分から話を斬るなんてずるい。

 でも、逆に言えば、考える時間をくれたとでも考えたらいいだろう。


 レノルドは別に王妃になることを無理強いしていない。

 その訪問時期くらいは訊いておきたかったが、元々質問したのはこっちだ。

 あまり問い詰めるわけには行かない。


 劇が始まる。

 物語は敵国同士の対立から始まった。

 が、そんな中、中立国に、王女と王子が出向く。その中で、二人は恋に落ちてしまう。

 だが、緊張状態にある二国では、開戦の兆しが段々と見え始める。


 二人は戦争を止めようとするも、国民の意識は戦争一択だ。

 最終的に二人は、戦場の中心で出会う。

 一国の将として。

 周りには多数の死骸が転がる中、二人は愛の気持ちを押し殺して決闘をする。

 そして王女が勝った。


 王女は、王子の首を取るしかなかった。そうしなければ。戦場はさらに苛酷になり、死傷者は増えていくだろう。

 それを感じた王子は静かに言う。「俺の首を取ってくれと」王女は断るも、運命の渦からは逃れられない。二人は最後に抱きしめ合った後、王子の首をはねた。

 その首を見てまた王女は泣くのだった。


 二時間の劇を、見終わった後、二人はしばらくその場から動けずにいた。


 単なる幻想、単なる創作、言い捨ててしまえばそれまでだが、役者の演技力が素晴らしかった。


 まるで、自分もあの世界の住民になったかのような、没入感だった。



「どうだった?」


 静寂を打ち破るように、レノルドが言う。


「素晴らしかったです。祖国で見たものよりもはるかに」


 比べ物にならないくらいに素晴らしい。

 リリーは劇が苦手だ。

 所詮は作り話だと一蹴出来るからだ。


 昔は、メルが劇を見るのが好きだったから何度も見に行ってた。


 幼いリリーにとっては、劇の内容よりも、隣で無邪気に笑うメルの方が、見てて楽しかったのだ。


(また、辛いことを思い出してしまったわ)


 あの優しい、メルはもういない。

 今のメルは、リリーのことが嫌いなメルだ。


「私、先ほど言ってた件、前向きに検討します」


 もう一度メルに会いたい。その気持ちは変わらない。

 あの日、ショックさに、上手い事反論できなかった自分が悔しかった。

 結果的に、ルリエルの虚言が真実となってしまった。


 メルを隣で支える、それが自分の人生だった。

 それがなくなった今、自分の幸せに、そこまで固執するつもりはない。


 レノルドを愛しているかどうかはまだよくわかっていない。

 しかし、どちらにしても、足蹴にすることは可能だ。

 レノルドをだましているようで悪いが、この取引を持ち掛けた時点で、レノルドも理解している。

 利用されるなどという事は。


 それにレノルドへの恋心が無いとは言えない状況であるし。


「そうか。それはうれしいな」

「私は、段々とレ――クライ様のことを知って行きました。まだ会って間もないですけど、悪い人ではないと理解しました。それで」

「俺と目的のために、婚約してもいいかもと思ったと?」

「うぅ」


 心の中を見透かされている。

 ああはいったものの、言葉にされると、嫌悪感を感じる。

 レノルドを利用しようとしている自分が。


 レノルドはリリーの頭をポンポンと叩く。


「俺のことはいくらでも利用してくれていい。もし、俺のことが気に入らないとかなった場合には、婚約破棄を申し出ていい。その場合は、俺が婚約破棄するから」


 基本、婚約破棄とは男性側からする。立場の弱い女性の方からしたならば、リスクが高いのだ。その後、夫の貰い手がいなくなるリスクが。


「ありがとう……ございます」


 リリーは顔を赤くしながら感謝の言葉を伝えた。何て優しく愚かな人なんだろう。

 だけど、それがこの人の好いところだ。

 国民を想う賢王になるだろう。

 国民のことを想いすぎて、国が立ち行かなくならないかは心配ではあるが。


「じゃあ、とりあえず決意が出来たら俺に言ってくれ。そしたら父上に話を通すから」

「はい」


 その帰り道。


「手を繫いでみませんか?」


 そう、リリーは提案した。

 恐らく自分は、レノルドと婚約することになるだろう。

 その際に、レノルドの妻を演じられるように、練習をしておこうという事だ。


「いいな」


 そう、一言言って、レノルドはリリーの華奢な手をつかんだ。


(意外にしっかりとしている……)


 メル君とは違った印象の手だ。

 メル君の手は、どちらかと言えば、優しい手だった。

 その一方レノルドの手はがっちりとしていて、まさに男性の手だった。


 ちゃんと鍛えているんだろうな。

 層リリーは思った。

 メルタイアに関しては、彼と最後に手を繫いだのが。十四の時だったからというのも、理由の一つには入るのだろうけど。


 その日の夜は、父王には、話さなかった。

 まだ、踏ん切りがつかなかった。

 確定させるという事が。


 ベッドに二人眠る。二日目だが、まだ慣れない。

 隣にメル君が寝ていた時はあるが、あれとは状況がまるで違う。

 メル君と、レノルドでは体格が全然違うのだ。


 やっぱりどきどきする。

 背中がくっついた時、不思議と熱い何かが心の中からくる。

 それが怖くて、またすすすと、レノルドから離れる。


 ここで、レノルドをだきしめたら、楽になるのだろうか。実際のところ、レノルドに惹かれて行っている自分もいて、それがまたリリーにとっては怖いのだ。

 メルを忘れる気がして。


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