表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/36

第35話 決着

 リリーには二つの能力が残っている。

 空気砲を放つ能力と、腐食の能力だ。

 近距離で空気砲を放ち怯ませてから、腐食の力で、体を直接狙う。


 まずは、レノルドがリリーを担ぎながら走っていく。

 そして、その前方に来る攻撃を必死にさばいていくランディ。

 二人は一気に、走っていく。


「ちぃ」


 ルーゲストは迫りくる三人を見て、退避行動に移る。


「逃げるんですか」


 ルディオスは叫ぶ。


「逃げる? これは退避だ。戦略的撤退じゃ」

「そうはさせませんよ」


 ルディオスは一気に地面を蹴り、ルーゲストの前に躍り出る。


「じゃまじゃ」


 ルーゲストの放つ光線を、ルディオスは間一髪でよける。


「こじゃくじゃな」

「貴方は実際に孫娘にやられるのです」


 その後、ルーゲストがどこへ逃げようとしても、ルディオスがそこにいる。

 逃がさない、そう決めたように。


 しかし、同時に。


「はあはあ」


 ルディオスの吐く息が多くなってきている。


「まずい」


 リリーたちの先鋒を担っていたランディが呟く。


「先を急ぐぞ」


 そう言って速度を上げる。


「どうしてだ?」


 レノルドが訊く。


「あいつはため込んでいた力を解放しているに過ぎない。だからこそ、その力が亡くなるとあいつの身体能力は……平均以下になる」

「という事はそれまでに決着を付けなければならないという事ですね」


 リリーのその言葉に、ランディは静かにうなずいた。





「はあはあ」


 ルディオスは自身の吐く息の量が着実に増えていることに気づいた。


(これは、長くはもちませんね)


 そう、自分の体力を冷静に分析した。


 だが、それでいい。

 登ってきている三人。彼らが決着をつけてくれたら、その時に死んでもいい。

 それだけルーゲストには嫌な記憶が長く続いている。


「それで、わしに敵うとでも」


 その目は冷たい視線だ。


「そのままでは死んでしまうぞ」

「お見通しですか」

「わしは天下のルーゲストじゃ」

「それはもう飽き飽きですっ!!」


 その言葉を放ちながら、ルディオスはルーゲストのお腹を全力で殴る。


「ふっ」


 ルーゲストは口から血を吐きながら耐えきり、ルディオスに反撃の攻撃を加える。


「っ痛いですが、間に合いました」



 そこにはリリーたちがいた。



「ルーゲスト」



 そして、お腹を貫かれた瞬間、不敵に笑う。


「貴方はここでおしまいです」





 リリーはルーゲストに対して近距離で空気砲を放つ。

 その攻撃は、ルーゲストの無防備なお腹にぶつかりはじける。

 そして――


「リリー、行け」


 そう言いながらレノルドはルーゲストの方へと走りゆく。

 そして、リリーはルーゲストのお腹に対し腐食の力をぶつけていく。


「くっ、しまった」


 ルーゲストは苦しそうな顔をする。

 お腹からどんどんと腐食が広がっていく。


「終わりです。おじい様」

「わしは不死身じゃ。これで終わるとでも?」


 リリーはルーゲストから手を一切話さない。

 その力は、ルーゲストに対して襲い掛かり、顔以外のすべての場所の腐食に成功した。


「不死身なのは事実なようですね。でも、今の状況からは何もできません。あなたの負けです」

「ははっ、こりゃ本当のようじゃ。わしの与えた力で負ける。何とも惨めな事だ」

「聞きたいことは色々とあります」

「否。何も話さずに消えたほうが黒幕っぽいじゃろ?」


 そう、にやりと笑ったルーゲストは一思いに舌を噛み切ろうとした。

 だが、リリーはその前に腐食の力を舌に作用させた。


「おじい様。あなたは、死のうと思ったら自分の不死の能力を解除したらいい、違いますか?」


 ルーゲストは頷いた。

 それを見てリリーは舌の腐食をやめた。

 かろうじて腐りきるところまでは防げた。



「わしはお前を愛していた。これは何も変わりのない事実じゃ」

「なら、なぜ私を利用しようと?」

「わしは元々ハーネスト家の一員としてずっと裏から操っていた。まあ、わしは度々歴史で現れていたからの。しかし、リリーお前に対しては違う。お前はわしが面白そうだと思って単独で王宮に送ったんじゃ。お前はイレギュラーじゃった。いつかわしの物語に光を与えてくれると思ったんじゃ」

「つまり、貴方は自分の人生自体を面白くしようと」

「そうじゃ。そのためなら死んでも構わない」

「……納得がいきません。あんなに温厚だったのに、なぜ」

「大した意味などない。わしは、長い人生を楽しんでいただけよ」


 その瞬間、ルーゲストの体が光り輝いていく。


「おっと、もう時間のようじゃの。わしはもう消える。他人の手で打ち負かされた時、わしの不死身の能力は消えるからの」


 ルーゲストの能力。それは、完全敗北したときのみに作用する。

 それ即ち、今。

 不死身ではある物の、それは完璧な不死身とは遠かった。


「じゃあの。わしは存分に楽しめた。あ、そうじゃ。……レノルドとやら」

「はい」

「わしの孫娘を頼んだぞ」

「分かりました。俺がリリーを幸せにします」

「なら、安心じゃな」


 そしてルーゲストは完全に消滅した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ