第33話 最終決戦
その最終決戦。
リリーとレノルドを含め、多くの国の兵士がやって来た。
ランディとルディオスの集めた兵の数が特に多い。
これに関しては、感謝をしなければならない。
さて、そんなわけで、大移動だ。
数をそろえて移動だが、当然大人数でいきなり動くわけにもいかない。そのようなことをするとばれてしまう。
なので、直接向かうのは精兵20兵だ。
その中にはヘレンや、リリーレノルドたちも当然含まれる。
そして、時間差で本拠地を囲う。
気が付けば、ルーゲストの逃げ場が亡くなるという寸法だ。
今回、様々なグループに分かれて行動することとなる。
連撃を仕掛けていくのだ。
勿論内密にだ。
移動も本当に、こっそりと目立たぬように。
それに対し、少しワクワクしている自分をまた、リリーは感じた。
そうして、近場で暫しの時間待機し、リリーたち本隊は走って向かう。
そして本拠地へと飛び込んだ。
そこには数多くの兵が配置されている。
この中に宿敵ルーゲストがいるとわかってはいる。
だけど、どこにいるのかが分からない。
「行くぞ」
その中でランディが指示を出し、一斉に中へとなだれ込んだ。
「ルーゲスト、ここで壊滅させてやるぜ」
そう、高らかと叫び、ランディは一気に剣で組織の敵を一網打尽に倒していく。
「はっはー」
そう叫ぶ彼の突破力は激しい物だ。
一人たりとも生存を許さない。そんな勢いだ。
「すごい」
リリーはそれに思わず見とれている。
リリーとレノルドは安全な兵の後方に待機している。
今出口は別隊が封鎖している。
普通に考えてここから逃げ出せるわけがない。
それが普通なのだ。
(妙だな)
その道中、ランディは異変に気が付いた。
明らかに敵の兵数が少ないのだ。
むろん兵の数だけが組織の大きさではない。
それにしてもおかしい。
「上だ!!」
ランディは叫ぶ。
上空から多くの矢が狙っている。
しかも、そこには兵はいない。
弓が自動で降ってきている。
「これも魔法なんだろうな」
そう言ってランディは剣で弓矢をはじいてくる。
魔法の使い手をとにかく集めている組織。
「やっぱり」
ランディは息を吐く。
「厄介だなあ」
敵を切り裂いて行く。
鬼神の如き強さだ。
「あの、レノルド様」
リリーは傍らにいるレノルドに声をかける。
「何かおかしいとは思いませんか?」
その言葉にレノルドは頷く。
それはランディが一時持っていたいわkンと同じく、兵の数が少ない事だ。
その時だった。
リリーの背後に弓矢が落ちた。
その矢から黒い謎のオーラが出現する。そしてそれはリリーの体を覆っていった。
「なに、これ」
リリーは自身の体から力があふれていくのが感じ取れた。
その力がリリーの邪気を増していく。
「力があふれる」
そうなったら全ては変わり果てた。
全てが敵に思える。
レノルドたちでさえも。
何でだろう。
この力は、全てを破壊する力。
そう思い、一気にレノルドへと襲い掛かった。
「何っしてんだよ!!」
だがその腕はランディに受け止められる。しかし、ランディの剣はあっという間にサビていく。
「腐食の力か」
ランディは呟く。
そしてリリーから距離を取る。
「ランディ、この人は敵です」
そう叫んだ。
「もう、洗脳済みかよ」
「うるさいです」
リリーは、全てを無視して襲い掛かる。
「いいぞ」
そして上から声がする。
「流石はリリーだ。我の見込んだ者よ」
そこには、仮面をつけた男がいた。
果たして本物なのか、偽物なのか。
その答えは分からない。
が、
「貴方は僕が倒します」
そこに、ルディオスがやってきた。
「ようやくここまで来ました。そろそろ年貢の納め時ですよ」
そう言うと、ルディオスは拳でルーゲスト(仮)と対処する。
が、ルーゲストが手を広げると、そこには大量の兵士がやってきた。
しかも恐ろしいことに、そこにいるのはリリーとルリエル達だ。
「姿を模しているのですね」
「もしているのではない、クローンだ」
「クローン」
それを聞き、目を細めながら見る。
確かに全てが精巧な姿で再現されている。
「ハーネスト家には感謝しなければならない。こんなにいい素材が手に入ったのだから」
それはクローンなのか、本物のリリーなのか。
「いい加減隠れるのにも飽きた。ここで国を取る」
そして大量のリリールリエル兵たちが襲い掛かってくる。
「僕はランディほど力は強くはないですっけど!!」
その拳で敵を吹き飛ばす。
「でも、このために力を貯めていました」
力。その力を解放するなら今しかない。
数年、いや何十年睡眠時間を蓄えてきた甲斐があある。
ルディオスは軽くうなずいてみせた。
そしてもう一発拳を突き出す。
その攻撃は男の仮面を一気に突き破った。
「貴方がルーゲストですね」
そこには、卑下の生えたお爺さん的な見た目の人がいた。
その瞬間、ランディと戦っているリリーの手が止まる。
洗脳が一瞬解けたようで、とぼけた顔をしている。
「おじい様」
その姿、リリーには見覚えがあった。
そこにいたのはリリーの祖父、ルジオス・ハーネストだったのだ。
「くぅ」
彼は、その場にうずくまる。
「大丈夫ですか? おじい様」
ランディとの戦闘を一時離脱し、リリーはルジオスのもとに行き、そう訊く。
「ああ、大丈夫だ。孫娘よ」
リリー自身、祖父とはほとんど会っていない。
彼はずっと時家の書斎にこもっているような人物だった。
リリーが王太子メルタイアの婚約者になってからは、ほとんど会ってはいなかった。
そもそも自分の家に帰る時もそこまで無かった。
だからこそ、会うのは久しぶりとなる。
「おじい様、なぜこのようなことを」
「この世を是正するためだ。この世は腐っている。だからこそ、わしらが何とかしなければならない」
「ええ、そうですね」
リリーの目は青くなっていく。
そしてまた朧になっていく。
そう、何かにとりつかれたかのように。
「お前の洗脳状態を強固にした。もう解けることはない」
先程は、リリーの一瞬の動揺によって解けたが、ルジオスが洗脳状態に無事戻して見せた。
「分かりましたおじい様。一緒に反逆者を倒しましょう」
リリーの手から高速の空気の塊が放たれる。
それこそ、空気が押し出されるようにして。
その瞬間、ランディの体が後ろに弾き飛ばされる。
「くそ、腐食だけじゃないのか」
「結果的に、連れてこない方がよかったですね」
そう、ルディオスは呟く。
「予言はこういう事だったんですか」
「だな」
ランディは受け身を取り、立ち上がる。
「だが、俺が必ず元に戻して――」
だが、そこにいたのは、レノルドだ。
レノルドが意気揚々とリリーの元へと走り出していた。
「レノルド」
「無茶だ。返り討ちにされるぞ」
「それでもかまわねえよ。リリーに殺されるなら本望だ。だが」
空気の弾丸をくらいながら、レノルドは少しずつ歩んでいく。
「リリーは、人を殺したら行けない。それだけは唯一言える事なんだ」
そしてレノルドは口から血を出していく。
だけど、それでも歩みを止める様子を見せていない。
「分かったよ」
ランディはそう呟き、レノルドの前に出る。
「俺が護衛してやる。その代わりにリリーを元に戻してやれ」
「ああ、もちろんだ」
「わしの事を忘れてはいないか?」
ルーゲストは、ランディに襲い掛かる。
「貴方は僕が食い止めます」
ルディオスがそれを止めた。
「小雀なガキが」
「ガキで結構。150年以上生きているあなたにとっては僕はガキですからね。でも、だからって簡単にはやられませんよ」
「まるでわしがルーゲストと決めつけているみたいじゃな」
「ええ、勿論」
そうして三者三様の戦いが開始される。




