第28話 荒治療
「じゃあさっそく行くぜ」
そう、ランディが言う。
向かう場所は偽装革命の第一歩。
ヘレンの協力を求めるために、ヘレンの場所にいくのだ。
「貴方も行くのですか?」
リリーはランディに訊く。
「ああ、もちろんだとも」
「それはやめてください」
だが、リリーは一言でそのランディの行動を非難した。
「ヘレンに今ストレスは与えたくありません。私から話しておきます」
その言葉にランディは頭をポリポリとかく。
「過保護すぎないか」
その言葉を聞こえないふりをしてヘレンの部屋へと向かうリリー。
「ヘレン、今から話があるんだけどいいですか?」
レノルドは今別のところで仕事をしている。
ランディは「仕方ねえか」と呟き、その場にどさっと座り込む。
★★★★★
そのさなか、レノルドはというと、ルディオスと話している。しかし議題はリリーの事だ。
「リリーのいない今だから言えることだが、実のところ俺も最近のリリー、特に帝国から帰ってきた後おかしいと思っているんだ」
そう、ルディオスに告げる。
「それはそうですね。……思い当たるところは?」
「ああ、ある。リリーがおかしくなったのはこの国に帰ってきてからだ。いや、正確にはハーネスト家を訪れた後だ」
「ハーネスト家」
ルディオスは呟く。
「ハーネスト家も、怪しい人物の中の一つだ。奴らが事を仕掛けていたとてもなにも不思議じゃない」
「という事は犯人は、ハーネスト家の人物であるという可能性があるという事ですね」
「ああ。そのことについてはメルタイアが調べてくれているはずだが」
そこでレノルドは頬を軽くポリポリとかく。
「しかし、あれから一度も使いはこない。まだ、調べている最中なのだろうか」
「そのことについて一ついいですか?」
陽気に、ルディオスが言う。
「ハーネスト家については軽く知っています。確か、帝国の元婚約者の生家であると」
「それがリリーだ」
「それについてですよ。ハーネスト家はリリー嬢が婚約破棄されてからルーゲストと手を組んだ。そう考えれば話は簡単です。しかし、あまりにも早すぎる。もしかしたら元々ルーゲストとハーネスト家は手を組んでいたんじゃないでしょうか」
「なら、なぜリリーを悪女にしようとしたんだ。その説明がつかない」
「おそらく気づかないうちに、支配下に置かれていたのでしょう。簡潔に話しますと、ハーネスト家には信頼を置いていた人がいた。その人が、リリーを皇太子妃候補にすることを提言した。しかし、リリーは有能過ぎた。だからこそ、リリーを婚約破棄させた。これならどうでしょう」
ルディオスはあくまでも僕の仮説ですが、と続けて。
「しかし、そうだとするといつリリーを狂気にいたらせたのか」
「おそらく再訪問の時でしょう。とは言っても本当に分かるのは帝国からの使者が来てからでしょうけど」
「ランディには伝えなくていいのか?」
「伝えていますよ」
★★★★★
「ねえ、ヘレン」
リリーはベッドですやすやと眠っているヘレンを起こす。
「ん、どうしたのかしら」
「ちょっと力を借りたいことが出来たの。いい?」
「牢から出してもらったし、私に出来る事なら何でもしてあげるわよ。それでどうしたの?」
「革命軍の人達を再集結させることは出来ない?」
その言葉にヘレンは唾をのんだ。
「それはいったいどうして?」
「実は内部に潜む癌をあぶりだしたいの。そのために、革命軍を汲まなければならないんです」
そしてリリーは事の詳細を詳しく話し始める。
話の内容をじっくりとヘレンは効く。相づちを打ちながら。
そして話が終わった後。
「私、たぶんその人と会ったことがある」
そう、ヘレンが言うからびっくりだ。
「私が革命を決意したのはある人の言われたからなの。革命をしてみませんかって。彼は確かルーゲストと名乗ってたわ」
一番聞きたい言葉を聞けた。
ルーゲストはヘレンにも接近していた。
重要な情報だ。
「でも、私はそれだけしか分からないわ。仮面をかぶっていたから長身の金髪の男の人だったという事しか」
「なるほど」
リリーは呟いた。
という事はランディも恐らくは違うだろう。
彼は金ではなく銀髪だ。
「それで、革命軍と話させてくれる?」
「待ってね。私がやれば大丈夫」
「それはだめ」
リリーは言う。
「ヘレンは、この部屋で待ってて。危険な目に合わせたくないし」
「私だって戦えるわよ」
「そう言う話じゃない」
リリーの豹変にヘレンは戸惑いを見せる。
「これは私がやらなきゃならないことだから」
そう、そうでなければ拾ってもらった恩を返せなくなる。
今レノルドといて幸せだが、レノルドに助けられてばかりだ。
だからこそ、行動を起こさなきゃならない。
「ちょっと待てよ」
そんなリリーを引き留めようとする人影が一つ。
そう、ランディだ。
「なんでここに?」
「お前焦ってんだろ?」
その言葉にリリーは一言「は?」と漏らす。
「焦ってはないですよ」
「俺が見たらすぐに分かんだよ。今のお前は全てに対して焦っている。そんな状況でいていいわけがねえ。お前もしかしてあれか? 自分以外を信じてないっていうやつか? 違うだろ」
「違うだろというか」
「お前は焦っているんだ。無理もねえ、自分自身でこの国を亡ぼすだなんて言われてるしな。そもそもの話」
ランディはリリーの横っ腹を軽く殴る。
「グッ」
リリーはその場で倒れ込む。
「お前には物がついている。大まか魔法でもつけられたんだろうが。こんなものに惑わされて一国の王妃は務まらねえよ」
リリーの口から物が飛び出る。そこにあるのはまさに、物の怪の類だ。
度の魔法でかは分からないが、擦り付けられたのだろう。
「いつつけられたかなんてわかっている。あいつにも注意されたしな。だが、とりあえずいうべきことは一つ。さっさと気づいとけだ。馬鹿」
馬鹿だなんて言われるのは、本望ではない。
「私は」
かすれゆく意識の中でリリーは言葉を紡ぐ。
「私は馬鹿じゃない」
「お前は馬鹿だろ。自分が一度はめられたからこそ、思考が支離滅裂になっている。だから間違えるんだ。後は俺に任せておけ」
「任せておけって」
「お前は一人で頑張りすぎだ。だからこそこの俺が来たんだ。お前は俺のサポートでもしていればいい」
そしてリリーは気絶した。




