第24話 来客
その後、二人はヘレンの元へと向かう。
今も一応投獄状態になっている。
というのも、二人が帝国に行っている以上、措置は保留という事になっていた。
「久しぶりね」
牢の中にいるヘレンに話しかける。
ヘレンは大分ゆっくりしている。まるで、自分の家であるかのように。
「それで私はいつ出してくれるの?」
ヘレンはそう呟いた。ゆったりしているとはいえ、もうこの状況にはごりごりなようだ。
「結局貧民層への保護とかどうなってるか分からないし」
「それはちゃんと考えている」
そう言ってレノルドは牢を開ける。
「とりあえずこれからのことを話そう」
「レノルド様」
「ああ、いいんだよ。このままずっと牢において置く訳にもいかないだろ」
「そうですね」
リリーの胸には一抹の不安があった。
しかし、ここで彼女を出してやらないと、だめだというのは分かる。
だが、
「しかし……レノルド様、少しいいですか?」
リリーはレノルドの肩をグイっと自分の方へとやる。
「あの話、ルーゲストの件は彼女に話すつもりですか?」
「ああ」
「それはだめだと私は考えています」
レノルドが目を見開いた。
「ルーゲストはおそらく、魔法を使う人たちを集めていると考えています」
「いやそれならむしろいうべきだろ。勧誘を受けた際に断れるように」
「私はやっぱり反対です。私は彼女を信用しているからこそ、だめだと思います」
リリーには不安があった。
ルーゲストの脅威から隠さねばならない。
ルーゲストが何を狙っているのかは、未だに何もわかってはいないのだが。
「どうしたの?」
「何でもないですよ」
リリーはそう優しく諭す。
その言葉に、ヘレンは首をかしげるのだった。
そして、部屋でヘレンに詳細な話し合いをしたいと思っていたのだが。
「レノルド様、至急来てください」
レノルドを呼ぶ声があった。その先にいたのは兵士だ。
「私も行った方がいいのでしょうか」
「いや、リリーはヘレンのそばにいてやってくれ。何があったら呼ぶから」
今ヘレンを一人にするわけには行かない。
「分かりました」
リリーは頷き、レノルドを生かせる。
そしてヘレンと二人部屋まで歩いて行くのだった。
「それで、貴方には少し力を付けて欲しいの。これから訪れる脅威に対抗するために」
「脅威?」
「ええ、帝国にとあるテロリストが入ってきたの。その集団が今猛威を振るっている。それに対抗するための力です」
濁して言う。それが二人の妥協点だった。
あくまでも、ルーゲストという名前は伏せ、脅威とだけ伝えていく。
今もまだルーゲストの狙いは分かってはいないが、それも警戒が必要だ。
「ルリエル」
リリーは誰にも聞こえない程度の声量で言う。
あの日、ルリエルが何を思い死んでいったかどうかは分からない。
むしろ、犯した罪状からしたら、死刑でもおかしくない物だ。
しかし、味方だと思っていた人たちから殺されるなんて、無念だろう。
そんな彼女の敵を取ってあげたいと思うのは、リリーの中にある優しさなのだろうか。
見えざる脅威。しかし、リリーにとっては望むところだ。
「貴方が私たちに協力をしてくれるなら、民の不満は出来る限り解消します」
元々解消せねばならないのは分かっていることだ。
そうでなくては賢君にはなれない。
そう、まさにレノルドの隣に立つことが出来ない。良き妻として支えることもできないのだ。
「だから、私を信じて」
「分かった」
ヘレンは小さくうなずいた。
その頃、
宮殿の中に一人の男が現れた。
レノルドはそれに対して受け答える。
「俺は! ランディ! 俺を重役に登用してくれ!!」
レノルドはそれに対し思わず「は?」とこぼしてしまう。
「えっと、どういう事だ?」
「だから言っているであろうが。俺をこの国の重臣にしてくれ」
二回目を聞いても、全く意味が分からない。
「すまないが俺は忙しい。それを言うなら後にしてくれないか?」
リリーの元に戻らねばならない。
それにこのタイミング、恐らくはあのルーゲストの手の物だろう。
見てわかる馬鹿さっぷりに少しため息をつきたくはなるが。
「いや、そう舐めてもらってはいけない。俺はまさしくあのメルト王国を財政破綻から救った英雄であるんだからな」
「兄さま」
そこに、隣にいた少年が言う。年は10歳程度だろう。茶色の髪色が目立つ少年だが、立ち振る舞いは見た目よりもはるかに大人びて見える。
「それは正確には僕の成果です」
「そうだったな。二人の戦果という訳だ」
「証拠はどこにある」
「僕の名前はルディオス。これを聞いてわかりませんか?」
ルディオスという名前は確かに聴いたことがある。
財政破綻から救った英雄だと。
「本当は俺の名前が記録されるはずだったが、ルディオスの名前が残ってしまってな。この俺が偽物扱いされるわけよ」
「兄さま、実際に兄さまは策を練ったけど、実践したのは僕だったよ。それに、僕と違って兄さまは戦闘系じゃないか」
「そうだな。俺は実際はワトソンタイプの人材だからな」
ワトソンタイプ。つまり、ひらめきを与えるという事か。
レノルドは軽く考えた。
ルーゲストなどというおかしな話がある中、新たな悩みの種だ。
「しかし、我々の国は財政破綻などしそうな雰囲気に無い。ならなぜここに」
「決まっているであろう。未来に起きる未曽有の危機を阻止するためだ」
未曽有の危機。
「その根拠は?」
「俺には未来を見ることが出来るんだ」
「未来だと」
まさかこいつもまた力を使えるというのか。レノルドは驚いた。
「兄さま、それは僕の力だよ」
「そうだったな」
(おい)
しかし、ここでレノルドに警戒や他の感情とは別のものが生まれた。
(兄さま、今のところ何の役にも立っていないぞ)
それがレノルドに生じた感情だ。
今のところ弟の良い所しか現れていないのだから。
「とりあえず妻と話を聞こう」
「まあ、この国の王太子妃に会わせてくれるなら願ってもない。ああ、きっと俺の事が気に入るよ、気に入るに決まっている」
「すみませんね、こんな兄さまで」
ルディオスが頭を下げる。
「我々を案内してください」
「分かった」
そしてレノルドは二人をヘレンとリリーの待つ部屋へと案内する。




