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第十七話 調査

 


 リリーがメルタイアによって事実上の軟禁状態になってる時、レノルドは、王宮の兵士たちと連携を取りながら、再調査に及んでいた。

 他国のために一国の王太子が動くというのは、まずありえない状況だ。

 しかし、今はやむを得ない。自身の婚約者の冤罪を晴らさねばならないのだから。


(リリーのためだ。絶対にリリーの冤罪を晴らして見せる)


 そう、レノルドは心に誓っている。

 もうリリーの悲しみにあふれる顔なんて見たくない。

 リリーの笑顔が見たいのだ。

 しかし、果たして簡単に冤罪を晴らせるものなのだろうか。

 だが、晴らせなければリリーは自分の元から去ってしまう。

 そんなの嫌なのだ。


 レノルドは早速、帝国側から遣わされたレイに会いに行く。


「これからは僕と共に行動してもらいます。ですが、レノルド様、僕は中立であらねばなりません。もし、リリー・ハーネストの罪をひっくり返せるほどの証拠を得られなければ、分かってますよね」

「ああ、分かっている。その時はちゃんとそちらの言い分に従うよ」

「とは言っても、誤解しないで欲しい。僕はあくまでも今回の件。リリー。ハーネストが冤罪だった場合は、それを押しつぶそうなどという真似はしませんし、豪放な場合は、そちらの捜査には口出ししませんから。あくまでものお目付け役という立場ですから」

「ああ、分かっている」


 レノルドはとりあえず帝国側が捜査の邪魔をしなさそうであることにとりあえず安堵しながら。


「これからよろしく頼む」

「ええ、よろしく頼みます」


 互いに手を取りあった。


 そして向かう先は学院だ。

 そこに、リリーとメルタイアとルリエルの日々を知る者がいるはずだ。

 そこでこれからの情報を探っていくという訳だ。


 学院の見た目は荘厳な感じがした。

 格式が高い様子だ。

 この帝国の人達はこの中で皆勉学に励むのだと考えると、もの恐ろしさを感じる。

 レノルドは、そんな王族だからとはいってそんな学院には言っていない。

 身分を隠し、クライとして学校に通っていた。


「レノルド様」


 レイが話しかけてくる。


「まずは、ルリエル様のルームメイトのセイアに話しかけて見ましょう。彼女はまだ学院に通っているはずです」

「分かった」


 そして中に足を踏み入れる。


 その中でレイはこの学院の決まりについてなどなど様々な事をレノルドに話しかけてくれた。

 この学院は主には普通の学校とほとんど変わらないらしい。しかし、その中でいくつか普通の学校と変わっている部分がある。

 まず第一に、この学院は学年では区切られているわけではない。その中でどの授業が受けたいかを選び、その授業を受けることが出来る選択制だという事だ。

 どうやらこの学院では、それぞれに定められたカリキュラムというのはないらしい。

 しかし、ほとんどの生徒が、大体の道筋に達し授業を選んでいく。

 リリーはまず優秀でトップスピードでほとんどの授業を取得して学院を卒業した。

 とはいっても、当時の婚約者であるメルタイアよりも先に卒業するわけには行かないので、卒業は待ったが。


 そしてメルタイアとルリエルは、それから二ヶ月遅れて卒業している。



「ここが寮です。男性は女性寮には入れないので、その近くの個室で話し合う事になってます」

「分かった」


 そして、所謂客間のような場所へと言った。


「ここは、完全に密封されている空間だ。ここなら。話し合えるだろう」

「ありがとう」


 レノルドはそう感謝し、部屋に入った。

 そこにいたのは、地味気な赤紙を有している、眼鏡をかけた少女だった。

 年齢は少し幼めであろうか。


 レノルドは軽くせき込みし、


「俺の名前はレノルドだ」


 そう彼女に話しかけた。


「知っての通り俺は王国の王太子、レノルド・アトランガルだ。ここには俺の婚約者である本当に言われている通りの事件を起こしたのかどうかを確かめるために来た」


 そう前置きをして。


「それで、セイア譲、何か、ルリエル譲におかしなところはなかったか?」


 そう、優しくレノルドは訊く、が、食い気味に「無いです!!」

 そう、強い口調で言われた。

 あまりにも強すぎる言葉に、レノルドが軽くびくっとなった。


 何しろあんな地味気の少女があんなに大声で強く言うとは思っていなかった。


 それに、言葉に少しだけ疑問を感じた。普通そんな食い気味に否定することなんてあるのだろうか。

 普通、もう少し考え込むはずだが……。


 もしかしたら彼女は同じことを訊かれ続け、疲れ居てるのかもしれない。

 だが、レノルドには、ただそれだけとは到底思えなかった。



「ルリエルさんは本当に優しいお方です。あの方が王妃に素晴らしいのです」


 演技かかった風に言うセイア。

 うっとりとしていて、まるで洗脳でもされていそうな言い方だ。


「リリー嬢は悪いうわさが絶えませんから」


 ここで来たか、とレノルドは軽くした唇をかむ。


 だが、ここで喧嘩腰になってしまったら、訊きたいことが訊けなくなってしまう。


「ルリエル嬢は、最初は平民だと聴いていたが、最初はどんな感じだったんだ?」


 最初というのは、メルタイアとお近づきになる前という事だ。


「いえ、そこまで派手な生徒ではなかったと思いあmス。最初は控えめな性格だったので、しかし、メルタイア王太子に近づいてからは性格が明るくなっていったんです。まるで人が変わったように」

「人が変わったように……」


 レノルドは復唱する。

 そこが疑問だ。

 今のルリエル。一瞬会っただけだが、傲慢で、我儘な性格だった。


 平民生まれで、そんな性格になるものだろうか。

 普通なら、もっと真面目で質素な生活を送るだろうに。

 これは、生まれついてから王族だったレノルドだから納得が出来ないのかもしれない。しかし、不思議に思ってしまう。


「その変化前のルリエルはどんな感じだったんだ?」

「先ほども言った通り、ルリエル嬢は臆病な感じでした。でも、それ以上に、不器用ながら真面目に取り組んでいるイメージでした」

「それなのに、真面目じゃなくなったと」

「ルリエル様は今もいい人です。でも、今思い返してみると、リリー嬢に虐められた時も、あまり悲しい顔をされなかったような。というか、元気だったような。……あれ」


 記憶の齟齬かある。

 これは重要な事実の様に感じた。

 もしかしたら、ヘレンのような魔法で何かおかしなことをしている可能性が生じてきた。ヘレンは物理的な力だったが、これは記憶操作。

 まだ確定していないが、もしそうだとしたら恐ろしいことになる。

 リリーがいじめをしたという事実を植え付けることにしか使ってなかったようだが、その力を悪行に使うと、帝国を一人で滅ぼすことでさえ可能になってしまう。


「ありがとうございました」


 そうレノルドがいい、その場を離れる。


 その後、いくつかの場所で聞き込みを行った。

 その皆、ルリエルを擁護し、リリーのことを悪く言った。


 それに気味が悪いくらいに。

 ルリエルの人間性が素晴らしいから、とだけでは説明がつかない。

 これはルリエルに会わなければならないとレノルドは思った。

 記憶改竄の証拠をつかむために。

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