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ファウスト -Terminus Flores-  作者: Blackliszt
第2章Cerester
59/71

59 Moonlight with daytime break


──ノーフォーク──


「ねぇ、このびちょびちょ乾かしちゃダメ?」

「ダメよ! それはあなたへの罰! しっかりと反省しなさい?」

「うへぇ……ハクチッ」

「ハックション!り、リアム殿、あともう少しの辛抱です。耐えましょう」

「はい、ジュリオさん」


 状態異常で表すならば、状態異常《びしょ濡れ》と言ったところだろうか。

 春先のまだ少し冷たい風が無情にも僕らの体温を攫い、先ほどから震えからくるくしゃみが止まらないでいた。


 えっ? ダンジョン内で蓄積した疲労や状態異常といった健康状態はガイアからこちら側に戻ってくると、全て潜入前の状態へと戻るのではないのかって?


 もちろん、僕たちはメーテールからノーフォークに転送陣で戻ってきたときにすっかり元どおり、潜入時同様身も心もリフレッシュした状態で帰ってきたのだが、ミリアが戻ってきて早々元気にはしゃぐ僕たちを見た途端に、再びウォーターボールのスクロールを使って僕たちをびしょ濡れ状態にしたのだ。

 おかげで僕たちは先ほど広場で感じていた視線とはまた違う異色の注目を浴びながら、街中を歩く羽目となった。



──公爵城──


 それからなんとか検問所を通り、公爵城についた。

 もしミリアとジュリオ、アルフレッドがいなければ僕はそこを通過できたかどうかも怪しい。


「こんにちは……」

「どうしたのリアムくん!? びしょびしょで!?」

「騎士さんもびしょ濡れですね。一体何が」

「さしずめ小さなお姫様を怒らせて逆鱗に触れてしまったというところかしら」


 出迎えてくれたのはマリア、リンシア、そしてアイナの母親三人組だった。


「いえその……ミリア、そろそろ乾かしてもいいかな?」

「ま、いいんじゃない? これで一先ず罰は中断ね」

「一先ず中断!?」


 ミリアに許可を得て、彼女の言い草に戸惑いながらも、温風魔法でびしょ濡れの体を服ごと乾かす。


「ミリア、これはどういうことかしら」


 マリアがニコリと朗らかな笑顔を向けながらミリアに事態の真実を求め問いかける。


「……というわけで、躾のなっていない家来だからこうしてお仕置きしたの!」

「まあそうだったの。本当に成長したのねミリア」

「ふふんそうでしょ? お母様ももっと私を褒めて」


 堂々とこれまでの経緯を話して胸を張るミリアに対し──マリアは表情をピクリとも動かさず、貼りついたような笑顔のままミリアに近づいた。


「お母様?」

「あなたという子は本当に教育のし直しが必要かもしれませんね……そこに座りなさい!!!」

「えっ、でもここ外……」

「座りなさい」

「は、はい!」


 スッと、空いた左腕を水平線上まで流れるように動かして、その後、肘を曲げながら角度70度〜80度斜めに手を自分の顔よりも高い位置に掲げると、容赦無く振り下ろした。


「それはまあ眷属魔法を上手く使って活躍したのは百歩譲ってよしとしますが! 勝手に城を飛び出して尻拭いをリアムくんに任せた挙句、今日の1番の立役者であるリアムくんに恥をかかせてここまで凱旋させるとは何事ですか!」

「ご、ごめんなさいお母様! ゆるして!!!」

「それにリアムくんはあなたの家来ではなく家庭教師です! 対等どころか教えを請う先生に対してその態度! 今日という今日はお客様の前だろうが矯正させていただきます!」


 ものすごい勢いで、その場に座らせたミリアを上から叱りつける。


「あいつは、二つの謀を持って堂々と凱旋したんだ」


 隣でアルフレッドがその光景を眺めながら、何やら語り出す。


「一つ目はまず、黙って城を出てきたからには相応の成果を挙げて凱旋して己の罪をはぐらかすこと」


 相応の成果を持って己の正当性を主張する。

 うん、実に理にかなっている様でかなっていない謀略だ。

 この作戦、それとこれとは話が別だと相手側が言えばそれまで、目の前の光景を見ればそれが如何に穴だらけの作戦であったかがよく分かる。


「そして2つ目は母と言ってもマリア様は公爵かつ領主夫人、そんな立場にあるマリア様が領民のお前達、あるいは辺境伯家に属する僕がいる手前からくる気まずさを引き出し、怒りを表に出せず尻込みしたマリア様は自分のことを叱りづらいであろうという望みを持って……はぁ」


 2つ目のミリアの心内を推測で述べる途中で、一旦それを中断して大きなため息が間を作る。


「あいつはマリア様の胆力を見誤り推し量れていなかった。あの方は確かに身分があり、皆に示しがつくよう常に気品ある姿を心がけていなければならない立場にある。だがそれは同時に正義を貫くことであり、常に公が正当性とともにあらねばならないということ。それを貫くための強かさ、胆力を持ち合わせ、我々程度の前であれば悪いことは悪いとはっきり言える方だ」


 うんうんと相槌を打つ。

 実に深い、上に立つものにしか分からない心構えというものがまた、あるのだろう。 

 同時に、僕は成長している親友の言葉に感心していた。


「それに、普段からより腹黒い貴族を相手に指揮をとって国政の一端を担ってもいる。であればこそあいつの5も6も先の手を読んでいるマリア様に、腹芸であいつが勝てるなど万が一にもありはしないというのにな」


 いま尚、説教を嵐のように浴びせられているミリアを見てやれやれと呆れた様に呟くと、見ていられないと視線を逸らして巻き込まれないうちに退散する。


 前提条件を確認もせずに無視して計画を立てるなど愚の骨頂、そんなものは小突くまでもなく風が土台ごと崩してくれる欠陥砦だろう。


「エリシア」

「は、はいお母様!」

「今朝の件について、私もあなたを今にでも叱りたいところですが」

「うぅ……」

「他所のお宅で家のことを持ち込んむことは憚られますから、あなたのお説教は家に帰ってから行うことにします」

「ほ、ホント?」

「ええ」

「ありがとう、大好きお母様!」

「こんなに喜ぶなんて……もしかして、リアム君の前だから嫌だったのかしらね」


 リンシアがエリシアに近づいてコソッと耳元で何かを呟いた後、面食らうエリシアに向かってウィンクしていた。


「お、お母様!? な、にゃにを言って!!?」

「ふふ。とりあえずはその真っ赤なお顔をもって一先ずの罰としましょう。それともやっぱり今する?」

「わかった!わかったから、もうこれ以上恥ずかしいことを言わないで!」

「はいはい。やっぱりまだまだ子供ね〜」


 顔を真っ赤にして慌てふためくエリシアの頭に置いた手を、リンシアは優しく動かしていた。


「野次馬か冷やかしか。リアムはそっちの趣味があるの?」

「母さん、からかわないで」

「そうね、これ以上勘違いで変な噂でも流れるのはマズイものね」

「わかってるならなおさらだから」


 アルフレッドが去ると、入れ替わる様に隣にアイナが立った。

 それから、アイナは登城に至るまでの経緯を教えてくれた。


「というわけで、コンテストで同席したから、私たちもお呼ばれしてここにいるわけね」

「公爵様一家もコンテスト会場まで見に来てたの?……本当に?」

「本当よ。それでみんなでお城でパーティーを開きましょうってマリア様がお誘いしてくださったの」


 だから、広場であれだけの視線が集まっていたのか。

 ジュリオからはただ公爵城でパーティーを開くことになったとしか聞いていなかったから、てっきりミリアも参加することを知ったブラームスが暴走した結果、無理を通してパーティーを催すこととなったのだと思っていた。


 話を聞く限りブラームスが暴走気味で会を催したことには間違い無い様だが、初対面の僕の両親まで緊急に企画したパーティーに招いてしまうとは度量が違う。

 マリア様ぱないな。

 

──公爵城庭園──


「それでは、これよりチームロガリエの勝利並びにキングトード討伐記念の開催をここに宣言する」


 ブラームスが主催者として代表挨拶を行う。


「ふっ、今日の相手はお前か」

「お前? どの口が私に向かってお前なんて言ってんのよ! フラジールコップ! こいつの鼻からこのストロベリーミルク飲ませてやるわ!」

「ま、待て! こういう対決にはそれ相応の様式美というものがあって──おいフラジール! なぜニコニコとなにも言わずそいつにコップを手渡しているのだ!み、ミルハラはヤメロォ!」


 早速、昨晩と同じ過ちを再び犯そうとするアルフレッドに、ミリアがフラジールの代行として罰執行する。


「こうして眺めると壮観だな。ダークなんて切り口がわからないほど綺麗にくっついてるぞ?」

「こいつらの肉捌きは城の人に任せていいんだよね?」

「素揚げかぁ、美味しんだろうなぁ」


 僕が亜空間から取り出し並べられたトードーズを眺めて、圧巻の光景に舌鼓を濡らす3兄妹。


「キングを中央後方に飾れば完璧だったなぁ」

「しょうがないじゃないかな? 通常ボス戦でボスを倒せば光の粒子となって消えて本体、または解体された素材を交換所のアイテムボックスから引き出すものだからね」

「学長先生……」

「それよりもリアムくん!キング戦で見せたあの魔法は相手の魔力、すなわちそれにほとんど近い性質を持つ油をサンプリングすることで即座に魔法式を構築して発動させたと思うのだけれど、その構築は一体どうやって!? いやそもそもまさか君は同調のプロセスを解明したのかい!!?」

「い、いっぺんに聞かないでください!……秘密です」

「前後の文が若干うまく繋がっていないのだけれども……まあまあ、そんなことは無視してどうやって対キング用の魔法を即座に構築したのかの説明と同調の詳しいプロセスを」

「ブーメラン!?」


 興奮さめやらぬ様子でキングに使った魔法について聴こうと迫ってくる。

 鬱陶しッ!……だけどなんだかんだ、しばらくルキウスと魔法談義と洒落込んだ。

 結構、楽しかったりした。


「ちょっと! なんで私の倒したトードを中央に置かないのよ!」

「いやだって両方丸焦げだし」

「ルキウス、きれいにして」

「無理言わないでくださいよ、ミリア様」

「できないの!?」

「出来ません」

「えぇー!なんでよー!」


 アルフレッドを始末・イチゴ牛乳攻めの使命を果たした後、並べられたトードーズの順番に対して不服を申し立てるミリアにルキウスもタジタジである。


「ミリア! あんまりリアムを困らせないでよ!」

「なんであなたが私とこいつとの関係に口を挟むわけ?」

「リアムは私の一番の友達だから!」

「ふん! 私の一番の部下兼友達だってリアムだから!リアムは一生、私のなんだから!」


 なんか騒がしくなってきた。

 でも、悪くない。

 絶対混ぜたら危険だと思っていたミリアとエリシアの邂逅もすんなりと僕の知らぬところで何事もなく済んでいた。

 今は二人とも僕が一番の友達と言ってくれるが、将来は、お互いを助け合う一番の親友になるかもしれない。 

 となると、引き合わせた僕は少しだけ鼻が高い。


「それでさっきの続きだけどだねリアムくん! 同調というのは単体でもとても難しい魔法なわけだよ! しかもね、とても高い魔力波長の親和性が必要でさぁ!」

 

 まだこの人がいたんだった。


「おいルキウス! 子供達の団欒に横槍を入れるでない!」

「ブラームス様。しかしこれは、未来の教育、いや魔法研究業界を左右する質問なのです! 」

「そうか。そんなに教育熱心ならば、ルキウスにはミリアの魔法教官を引き受けてもらおう。お前は頭だけでなく、魔法の実力も十分すぎるほどあるからな。これも()()()()()()の未来のために重要な依頼だ」

「どうしてそうなるのですか!? 私は今、魔法の未来の話をしているのです! これを究明すればまた一歩世界の真理に」

「ところでルキウス。先ほどコンテストの会場で、貴様はその場にいたもの全員が間抜けだと言ったが」

「ああー……そういえば、はい。言いましたね」

「つまりお前は公爵であるこの私、そして妻のマリアに息子のパトリックまでも間抜けだと言ったわけだ」

「グッ!」


 あっ、ぐうの音は出た。

 さてはて、コンテストの場にいなかった僕にはなんのことだかよくわからないが、そいつぁルキウスやっちゃったなぁって、普通に失言だと思う。


「お前には罰として週2のミリアの家庭教師に加え、そろそろ始める予定だった週2の魔法訓練の教官も、引き受けてもらおう」

「そ、そんな! ただでさえそれで自分の実験の時間が減っているというのに! これ以上は!」

「お前は家柄、金だけは持っているからな。減給ではちっとも応えんだろうし、であれば金で買えぬ時間を代わりとして罰としよう」


 追い詰められたネズミ(ルキウス)を全力で狩にいく羆さん。

 北の羆(ノーフォーク)南の海蛇(リヴァプール)東の虎(ハワード)西の雄牛(マンチェスター)と、四大貴族と言われるだけのことはある。

 罰の選択にしても、実に見事な審判だ。


『これで子供達の口喧嘩に口を挟みそうなものの排除は終わった。後はミリアが言い負かされて此奴を諦めるのを待つのみ。公爵家の一員として何事かに負けるというのは少々気がひけるが……頑張れ、ブラッドフォード家の娘よ』


 口喧嘩を続ける自分の娘とエリシアを咎め仲裁もせずに去っていこうとする親心を演じたブラームスが、まさか脳内でそんなゲスい感情によってその行動に出たということは、内心でほくそ笑む彼しか知り得ない策略だった。


「こらあなたたち! せっかくの祝勝会なんだから仲良くなさい!」

「マリア!?」


 でもなかった。

 彼の妻マリアには、そんなゲスい夫の策略などお見通しだったようだ。


「でもこの無礼者エリシアが!」

独裁者ミリアが!」

「それじゃあそうね。いっそ、1番のお友達が同じ二人がお友達になったらどうでしょうね」


「「えっ?」」


 パトリックは間違いなく母親似だな。 

 ミリアの中のこの人の血も早く覚醒してくれることを願う。


「そういえば、エリシア……のあの跳ねる板を出す魔法すごかった」

「ミリアの魔法だって、あのキングトードにクレーターを作ってすごかった!」

「そ、そう?ねぇ、今度は私も跳ねさせて!」

「ここでしたら……怒られそうだから、いつかね。ねぇ、あっちに甘そうなケーキがあったから一緒に食べよ!」

「オッケー!」


 マリアのアドバイスで、ミリアとエリシアは距離を縮めて、行ってしまった。

 切り替えはやい。


「助けてくださってありがとうございました」

「ノーフォークに多大な貢献をしてくれてる方の窮地を救うのも、仕事のうちですよ」

「ミリアのことですか?」

「いいえ、ミリアのことはどちらかというと、家族のことですから。例えば、新たな魔道具の開発ね。ほら、魔法箱。ここ半年だけでも国の流通のあり方が揺らぎを増している。それから領地の新しい特産品の開発ね。これにはパンケーキやその他これからあなたが展開する商品も含まれている。それでも足りないというのなら、あなたは我が娘ミリア・テラ・ノーフォークを身を呈して炎の波から守り、脅威をも取り払った。キングが出てきたのは想定外だった。それにあのままあっさりこの子だけがやられていたのでは、公爵家の株もまた相応に落ちていたかもしれません」

「でもそれはオブジェクトダンジョンの中だったからです」

「それでもあなたがミリアのために人道的な選択を取って助けたことに変わりわない。ありがとう」


 この話の内では、マリアは、ミリアの親としてではなく、公爵家の親として立場を貫いた。

 そこにどんな真意が隠れていたのかは窺い知れないし、公爵家は結局、ミリアなわけだから、深い意味はないのだとしたい。


 それからは、終始、僕はパーティーを隅で眺めていた。

 懲りずに隣に陣取ったルキウスがずっと隣でぺちゃくちゃと喋っていたが、程々に会話を楽しんだ。

 エリシアとミリアはしばらく食事をした後、いつの間にかお城の探検に出かけていた。

 ウォルターとアルフレッドは、主に肉の置いてあったテーブルの近くに陣取りながら今日の活躍を褒めあっているのかな。

 ティナもレイアやフラジールと楽しそうに歓談して馴染んでいた。

 昔、リゲスを含め冒険者をやっていたウィルとアイナはダリウスと面識があったらしく、旧交を温めている。

 ヴィンセントとリンシア夫妻は公爵夫妻、それからマレーネとラナも交えて話に花を咲かせていた。

 ラナは中等区分を卒業してからは、研究員としてスクールの属する研究機関に籍を移した。

 研究テーマは魔力を使わない治療法の探究、及び、薬の開発らしい。

 ウォルターと同じように、諸事情で魔力を体外に放出するのが苦手なラナらしい研究題目だと思う。

 魔法世界では、マイナーかつお金のかかる分野で、支援金だけでは足りない研究費用を確保しながら生活費を捻出するため、実家の薬屋の材料調達を基軸に、エクレールにヘルプに入ったり、スクールでティーチングアシスタントをしたりしながら生計を立てているから、稼ぎ口を広げようと営業しているのかもしれない。


「でさー。その亡くなってしまった僕の先輩がマンチェスターに築いた交通文化に対抗するため、最近ハワードが車を馬なしで走れるよう改造したらしくてね」

「そう……です……か……」


 長く腰をかけていたからか、目が鬱らと重くなる。


 そして、僕は夢を見た。


 父さん……母さん……。


 ウィルとアイナが笑っている。

 本当に優しい笑顔、転生した日、二人に初めて出会った日に僕が見た表情だった。


 この二人は、本当に僕が幸せにいつまでも過ごして欲しいと3番目に思えた人達。

 1番目は短い時間だったがとても大切な思い出をくれた鈴華。

 2番目は前世の父さんと母さんにまだ幼かった妹。

 そして、3番目が今ここにいるウィルとアイナ、それとカリナだった。


 みんなが楽しそうに笑ってた。

 目ではっきりと笑ってるとわかるくらいに近い。

 僕は夢の中で彼らと他愛のない話をする。

 すごく楽しい。

 それなのに、心はいつも自分で作った小説でも読んでいるかのような心地だった。 

 話がわかるのに、音が足りない。

 どうしてこんなに遠いと思ってしまうのだろう。

 月に昼の世界を見せられているような気分だ。


 転生してから、こんな夢を見るのは初めてだった。


 転生する前は、時々同じような夢をみていた。


 今も会える人、もう会えない人が夢の一堂に入り混じる。

 

 そんな夢から闇に醒めると、もう会えない人たちは、前世の父さんたちは僕がいなくなった後でも、強く生きていてくれているはずだと束の間にはもうそんな非現実的な悪い考えは捨ててしまえるほどに、僕は大切な家族のことを心のそこから信じることができるほど強くなっていた。

 それだけ、時間が経ってしまったということなのだろうか。

 それでも、次の場面ひかりに包まれると、物語が進む場所が変わってるのに、同じような夢をみる。


「父さん……母さん……」


 偶には、会いたいと思う。


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