幽霊を信じるって素敵じゃないですか?6
よろしくお願いします。
あれから数十秒が経つ頃だったと思う。
一階から騒がしく上がってくる足音と共に、ぼんやりとしていた意識が戻ってくる。いや、戻さないといけない。それは、君に眠そうな顔を見られてしまうと、何かしら面倒になりそうだから。
両頬を軽く叩いて目を覚ます。そんなことをしている直後のことだ。
「あーげてぐれぇー」
訛りの入った口調と掠れた声を出したドアの向こうの存在。直ぐに君だと言うことはわかったけれど、なぜおばあさんの真似をしているのかは知りたくもなかった。
「どなたですか?」
仕方なく、僕は掠れた声を作る。そしてゆっくりとドアを開いて目の前の君を見る。
「秋野くん?あたま大丈夫?」
両手でお盆を持ち、わざわざそちらが始めたノリに乗ってあげた僕に対して、舐めきった表情が立っていた。
だからドアを閉める。
「あ!うそうそ!開けてください女神さまぁ!」
「なんで女神なんだよ!」とも突っ込みたくなったが、またくだらない君のノリに乗ってあげることにした。
ドアを開けたあと、今度は自由の女神ポーズをして出迎える。
「秋野くんさ、恥ずかしくない?」
ポーズをやめて、細目で君を見ながらもう一度閉めた。
「あぁぁー!ごめんー!」
確かに面倒だったけど、ほんの少しだけ、少し固まっていた頬の緊張がほぐれた気がしていた。そして君はいつもの笑顔だ。
「秋乃くんって意外とノリがいいんだね」
「そうだろ?ああいうノリは得意なんだ」
お世辞とも思える君の言葉。そんな君からの意外な言葉に開き直った僕は正直嬉しかった。伊達に人の本心を見てきたわけじゃないんだ。中学生の頃は、人の本心を目視して深く考えずに能力を生かして人と関わっていた。だから大体の流れは本心の読めない君にも通用する。という自信があったのだ。
丸テーブルを挟み座る僕の目の前で、君はニコニコしながらお盆に載せたオレンジジュースと、コップ3つをテーブルに並べている。こんな時、どうして3つなのだろうか。もしかして、それも突っ込み待ちなのか。そんな君の行動が理解できなくて、さっきまでの自信と喜びがどこかに飛んで行ってしまった。
ありがとうございます。