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“僕は君を夢見てる”  作者: 秋乃 しん
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幽霊を信じるって素敵じゃないですか?

幽霊になりたくない?


 人の顔を目視する。そうするとその人の本心を無意識に見てしまう。だから今日も、教室の隅から知らないクラスメイト達の笑っている顔を目視した。


“問題ない”


 学校を終えた帰り道。ボランティアマークを右腕に付けた中年の男の顔を目視する。


“認め、面倒、言い訳、欲求”


なにを認めて欲しいのかはわからないけれど、自己優越感に浸っているのは確かだった。そうやって吹き出される人間の汚さを同時に目視して呟く。


「問題ない」


 人の本心というものは、感情や気持ちの形だったり、或いは本人すら認識できないものだったりもする。厄介なことに、本心と感情は矛盾する時もある。簡単に言ってしまえば、本心と言うのは人としての根本的本能や極限の軸みたいなもので、「理性」も「人それぞれ」なんて言い訳も通用しない生物にとっての塊なんだと思う。

言わば『本能』というものが一番に近い。それが正解だろうか。

だけど、この世の中で本能を残した人なんてこの世に居ないのだから、それも違う気はする。

そもそも僕は心理学に詳しいわけでもないし、それを信じているわけでもない。それに哲学者でもないから、誰かにこのことを話しても何も得られはしない。だけど、これはどうしようもないものだ。

誰の顔を目視してもその人の本心が漫画の吹き出しのようになって現れる。それを僕が目視できるだけ。そんな体質なだけ。

見たい訳じゃないけど、そう見えてしまうのだから仕方ないことなのだろう。

 人は僕が見る本心を汚いと思っている。そんな汚さを隠すために、滲み出てしまわぬように上手く偽っているんだ。決して悪いことじゃない。そうして上手く生きているんだから。僕だって同じだ、都合のいいように偽って生きて来たんだ。だから、偽りに対しては理解していて、そろそろ諦めも着く頃なんだ…。

いや、やっぱり納得がいかない。

だから今もこうして文句を浮かばせているんだろう。


 夏休みも明けてしまい、いつも憂鬱に感じる通う学校からの帰り道。夕暮れの中一つの石ころに対して文句をぶつけるよう、何度も蹴り飛ばしながら独りで歩く。

 

 偽りしか無い世界。人のためなんてない世界。信じられる者が居ないこの世界。そんな世界に信じるものがあるのか。そんなことを僕は考え始めている。そしていつか、こんな考えを馬鹿にしてきた人を、「何も考えていない浅はかな人間だ」と、心の中で完結させた。


 目がひらく。

考えっぱなしだった昨日の頭の中。その続きが始まっている。


「そうだ」何かを確信して小さく呟く。


 信じるとか信じないとか以前のことだ。信じようがないだけだ。この世界の本心が見えるのだから。「信じる」さえもこの世界が生み出した偽りであって、人が作り上げた形だけの、都合のいい綺麗事だ。

 既に慣れていた朝の習慣を熟してか、玄関を出ている。今日も僕の心に合わせた曇る空に無温な外気を受ける。そして、登校中にそんなことを考えている自分に安堵していた。


「問題ない」そう呟く。



 普段通っている高校までは自転車に乗って行くけれど、偶に特別な意味もなく、今日みたいに徒歩で向かう時もある。意味なんか無い。

けど、自転車を漕げば大体十分程で着く道のりのくせに、徒歩で向かう時だけ。学校に着く時間はあやふやで、その差は10分から20分以上空く時もある。理由はわからない。


「別になんだっていいだろ」


呟く。


 高校1年生になってから、一人で呟くことが増えた根暗で性格の悪い僕。

『秋野 しん』

今日もクラスで飛び交う偽りの空間の中で過ごす。もちろんこんな僕だから、クラスでも独りだし、あまり人と関わらない。

それはむしろ望んでいることでもある。だけど、ある事情。普遍的な日常生活で関わる人に対しては、世間一般に同じく、普通に関わって常識的な対応を熟している。そのくらいは僕にもできる。ただその時は「顔を見なければ大丈夫」と自分に言い聞かせながら。

僕がクラスの人にどう思われているのか知らないし、知りたくもないから。そうやって自分の心の中で、全ての偽りに対して句点をつけて完結させて理解してきた。納得してきた。能力って奴を生かして誰よりも上手く生きて来た。だから僕は、人間関係に対しては得意なんだ。


      ある1人の存在を除いて。


なりたい!


よろしくお願いします

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