1-06【姉妹】頭の中のマニュアル。
◇頭の中のマニュアル。
「えぇ…と、なんかさらっと怖いことしてませんか、これ?」
近づいてくる光る指先に思わず頭を引きながら、ティータさんに安全性を尋ねる。
なんかいろいろマヒしてる気がするけど、この神さま私の頭の中弄るつもりだよね?
「クスクス、祐乃さんなら大丈夫ですよ。普通の観測者…人間でしたら壊れてしまいますけれど、貴女はすでにユピーの星の記憶領域と繋がっていますからね」
「あれ?、もしかして私…、もう普通の人間じゃないんですか…?。確かに光ったりはしますけど特に変化はないですよ?」
「そうですね貴女は既に特別な存在です。星の管理者に祝福を受けた『神聖皇帝』であり、母星と繋がった『星の皇子』でもあります」
ティータさんはもう一方の手で顔の前に指を伝わせるとそこに漢字で『神聖皇帝』『星の皇子』の文字が浮かび上がった。
「確かお腹で繋がっているんでしたっけ?、それだと私はユピーちゃんの星の子供のようなものなんですか?」
「ええ、繋がっていますがこの星はユピー自身でもあるので、正確にはユピーのお腹の中で胎盤とおへそで繋がった娘。…といった感じですかね」
「へ…?」
おへそで?…むすめ?
「………えっ!?、そうなんですか?、…その発想はありませんでした」
今の説明通りだと私はユピーちゃんのお腹の中にいる胎児ってことになるんだけど…、子供にしか見えなくてもやっぱり神様だしそういう事もあるんだね…。…あるかな?。うーん、でもやっぱりそうは見えないから複雑だなぁ…。
「クスクスッ…ところで祐乃さん、地球やこの星、惑星ユピティエルは何の為に生まれてきたと思いますか?」
私の戸惑う表情をみて楽しそうに笑うと、ティータさんは急に命題めいた事を聞いてきた。
「え?生まれた訳ですか?、…ウーン、私個人としてはビックバンと、重力やらなにやらの作用で偶然生まれたって認識なんですけど」
「多くの星はそうですね…でも知的生命体の住む星は違います。私たちがそうなるように管理してきました、…と言っても太陽との距離や星の組成に適正な衛星を最初に配置して、その後は殆ど眺めるだけなんですけどね」
なんかすごい雑っ…、いや大雑把な創世期を聞いてしまった……。しかしさっきもそんなようなことを言っていたけれど本当に46億年も生きているんだろうか?
「ティータさんは本当に46億歳なんですか?」
「そうですね…、自分の担当する星が生まれた瞬間から私達はそう在れという意識を得ますから、正確には…、って何を言わせるんですか。秘密です、そういうのは秘密」
「すみません、つい気になって聞いてしまいました」
秘密も何も46億年見てたとかさっきから言ってるじゃないですか…。てことはユピーちゃんも?、…ホントにぃ?。この人はともかくユピーちゃんが数十億年存在しているなんてちょっと考えられないね。
「では話が逸れましたが答えを教えますね…。星の生まれた意味…それは知的生命体の記憶を積み重ねて星の記憶を綴る事です。言い換えますと星は私達管理者の記録装置、家電で言うならカメラやハードディスクみたいな録画機器ということになります」
「星が…私たちを記録しているんですか?、何のために?…どうやって?」
「順に答えましょう、まず何のために?、というのは実は私たちにも知らされていないのです。ただ…より密度の高い記録を数多く集めることを求められています」
…神様の上司がいるのかな?、聞いた感じ会ったことはなさそうだけど。
「次に記録の仕方に関してですが、祐乃さんは魂魄という概念はご存じですか?」
「魂のことですか?、あるのかなって言うぐらいの軽い認識です」
「それだと半分ですね、魂と魄、合わせて魂魄です。魂が生殖した母体に宿ることで人は生まれ、生きていく過程で魂にいくつもの記憶や感情が絡まって生じるのが魄です」
「なるほど、それは聞いたことありませんでした」
「そういえば祐乃さんはミッション系でしたね。クスクスッ、そういった生死感に触れる機会はあまりなかったかもしれません」
「ええ、ミッション系でした、でもうちの宗教観はかなり大雑把なんで…。高校は母の母校だったので進学しただけでしたし」
「そうそう、そうでした。祐乃さんの生息していた地域はそうでしたね、信仰に垣根のない思考に至るのはなかなか難しいんですよねぇ。…あの地域は知育レベルも高くて他惑星からの転移依頼が多いんです。…っとまた逸れましたね、まずは魂魄がどういうモノかが雰囲気で理解していただければ結構ですので」
「え?、私以外にも飛ばされる人っているんですか?」
「ええまぁそれなりには…、でもそれは本筋から離れるのでまた別の機会に話しましょう、魂魄については分かりましたか?」
「は、はい、なんとなくですけどわかりました…続けてください」
凄い気になるけど仕方ないね…、今度教えてもらおう。…教えてくれるかな?
「クスクス、では続けましょう…。この魂と魄は人が生きている間は一つの状態になっていますが、死んでしまうと二つに分かれます。魂は宙に帰り浄化の後に次の宿り先を探し、魄は地に溶け込んで星に積み重なっていくのです」
「つまりそれが星の記憶なんですね?」
「はいっ、正解です、なぜこんな事を話したのかと言いますと、魄を記録し続ける星の記録媒体としての容量は無限に近いというのはなんとなく察していただけると思いますが。星と繋がっている今の祐乃さんはこの上限無しの記録領域の空きを使えて、その領域を制御できるだけの演算力もあるんですよぉ」
「えぇ…、なんですかそれ、話が大きすぎて怖いんですけど…」
「大丈夫ですよ、祐乃さんが力を使いたい時だけ領域を引き出せるように、私が上手くスキルを組みましたから。こういった『思考霊域』に入ったり、高速で思考したい時に使用する以外は普段と変わりません」
「それならいいですけど…、うーん…いいのかな?」
「いいのです、いいので改めてマニュアルを書き込みますねっ」
ピトッと人差し指をおでこに付けると指先が若草色に輝いた。
「あ…ちょっとっ!」
止める間もなく若草色の光が強く輝いたかと思ったら、アッという間に光は消えた。…どうやら書き込みは終わってしまったらしい。
「はい終了です。まずは『ステータス』という言葉で内面に意識を向けてくみてください、マニュアルはステータスのスキル名それぞれに付随してますから、」
「もう、勝手なんですから…。わかりました、やってみます…」
もうしょうがないって事にしよう…からかったりはするけれど悪意がないだけマシなんだよね…。
言われた通りにステータスステータスと頭の中で唱えながら意識を自分の内側に向けてみる。
『status』ってなんだろ?、地位とか身分に関係ある事かな?
よくは分からなかったけれど、思考の暗闇に浮かぶように『ステータス』とカタカナでバッチリ書かれた項目が苦も無く発見された。
■ステータス
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八重垣 祐乃 女性 18歳 【+】
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私の名前だ…この【+】はなんだろう…。
そこに意識を向けると、詳しい項目が開いたようで、ザザッと私の情報が記載されているらしい文字群が展開された。
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八重垣 祐乃 女性 18歳
所持因子:転輪聖王
◇クラス:星の皇子 Lv1
スキル
桜花植樹
┗ 桜花転移
記憶管理
┣ 記憶再生
┗ 記憶転写
無限思域
┣ 思考加速
┗ 思考霊域
物質収納
┣ 物質錬金
┗ 物質製造
物質置換
星煌制御
┣ 身体強化
┗ 空間制御
無尽魔力
量子移動
◇クラス:神聖皇帝 Lv1
スキル
玉体保護
帝法制定
┗ 刑罰執行
軍団号令
高速建築
┣ 城塞建築
┗ 城下建築
臣民管理 1
魄兵製造 0/1001
┣ 魂騎製造
┣ 感覚共有
┗ 転送起点
◇クラス:異世界人 Lv1
スキル
異界言語
病菌免疫
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長いし多い…。桜花植樹?、記憶管理?、言葉の意味自体は分かるけれど…どういったモノなのかよく分からないね。それに頭の中の文字を読んでいくのも不思議な感じがする。
頭の中にあるのに記憶には無いというのは奇妙な感覚だ。
「異世界転生、転移者に好評なゲームっぽいステータスで分かりやすいでしょう?」
ティータさんはしてやったり顔で語り掛けて来たけれど、私は…。
「あの、私ゲームとかあんまりやったことなくて…、その…よく分からないんですが…」
「えぇ…そうなんですか?、自信作なんですけどね…」
ティータさんは大げさにションボリしてみせた。
「とにかくわからないと思った所に検索…意識を集中させればマニュアルが出ますから。それで何とかしてみてください」
ションボリ体制から一転して胸を張り、指を一本立ててなんだか投げ槍にアドバイスしてくれた。
「まず、あの地下から脱出する為のスキルが『物質収納』。旅のお供としておススメは『魄兵製造』とか『量子移動』ですかね。あと祐乃さんが知りたがっていた体の光の制御は『星煌制御』に書かれています」
「意識を集中させて検索ですね、わかりました、やってみます」
まずはこの発光ボディを何とかしたいから『星煌制御』からかな?、…検索してみよう。
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『星煌制御』
□星を制御する力『星煌』を星と繋がる事で管理者でなくても扱えるようになる能力。
□『星煌』を使用する事で、『星の皇子』のスキル、身体能力の向上、空間を制御することで飛行が可能。
□『星煌』を纏わせることで、刃は斬撃を次元切断に、鈍器はミート部の内部爆砕、刺突は刺突部位を次元貫通する追加効果が発生する。
□星と繋がっている臍の流入口を開け閉めすることで『星煌』の量を操作できるが完全に断つことはできない。
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え?…私飛べるの?、ま…まぁそれは置いておいて(後で飛んでみようっ)、まずは力を絞ってみようかな。
お腹に意識を少し向けてキュッと力を入れてみる、イメージ的には蛇口を絞る感じで閉めていき、光に包まれた両手を広げて、徐々に光が弱まっていくのを確認する。
あ…、光が収まって…消えた…。…良かったぁ、ずっとこのままだったらどうしようかと思った、でもまぁそうだよね寝る時とかどうするんだって話だし。
個人的には何よりもまずコレを何とかしたかったので、ひとまずは胸を撫で下ろしたのだけれど。
…ん?、全部閉めてる感じなんだけど…アレ?、お腹の辺りがボンヤリ光ってる?
良く見なければ分からないレベルなんだけど服の下がボンヤリ光っている。私はベルトやらボタンやら着なれない服の前を開けることを諦めて上着の裾をまくり上げると、アンダーに着ていたワイシャツ(初めて知った)をめくってみる…。
あ…、おへその中が小さく光ってる…、これって…。
改めてマニュアルを読み直してみると…、『完全に断つことはできない』の文字が強烈な存在感を発していた。
「あの…ティータさん、これって…おへその光って完全に消すことは…」
ティータさんを見ると両手を合わせて頭を下げ、ごめんなさいのポーズ。
「あ…、出来ないんですか…、もう…しかたないですねぇ」
妖怪全身発光人間は回避できたけど、妖怪おへそ発光人間になってしまったようだ…スーパー銭湯とかどうしようコレ…。
「ええ、出来ないんです…。その力を完全に断つと祐乃さんは今の体を維持できないので…、なので普段もある程度力を開放してください」
えぇ…、私は点滴液持って院内移動してる人みたいな状態だったのか…。でももう文句を言っても仕方ないのかなぁ…。
「もうっ、了解しましたよ、こういう時は開放しておけばいいんですね」
「はい、特に能力を使うときはできるだけ解放してください」
「えっと、…『星煌』を開放して…。それじゃぁもう少し検索してみます」
ヤケクソ気味にお腹の栓を全開に開くと、徐々に桜色の光が漏れてくる。
「ええ、祐乃さんは素直に聞き分けてくれるので助かりますね、何かありましたら聞いてください」
「わかりました…」
私は自分の身体が再び薄桃色の光に包まれるのを確認してから、瞳を閉じてもう一度集中する。
それじゃぁ次は喫緊の課題、地下からの脱出手段らしい『物質収納』を見てみよう。収納でどうやって脱出するんだろう?
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『物質収納』
□星と同質量までの物質を時の止まった異相次元に収納できる。
(生物無効、植物は可)
□触れた場所から縦横50メートルまでの空間をスキャンして望んだ形に削って収納することが可能。
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なるほど、これで穴を掘れってことだね、上手くできるといいけど…。一応派生の『物質錬金』と似たような名前なのに別スキル扱いの『物質置換』『物質製造』も見ておこうかな?
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『物質錬金』
□『物質収納』で格納された物質を素材ごとに纏めて結合、加工、分解することが可能。素材を組み合わせて結合することも出来る。
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『物質製造』
□『物質収納』で格納された物質をつかって星の記憶に刻まれた加工品の再現物を製造できる。必要素材が収納されていることが条件。
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『物質置換』
□物質を惑星内に存在するあらゆる物質と等量で置き換える事ができる。
(生物、植物共に無効)
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『物質錬金』と『物質製造』は便利そうだね。木を収納してから木材にして出したり、昔造られた衣服を再現したりできるのかな?。…そして『物質置換』…これヤバくないかな?、こんなことホントにしていいの?。その辺に落ちてる石とかをダイヤとか金にだってできちゃうってことだよね。……うん……後でやってみよう。
私は思わず生唾を呑んだ。
なんか試してもいない凄すぎるスキルで皮算用してしまいそうだから次にいこう。後はおススメされたスキルを順に見て…他は後でいいかな?、ええっと…『量子移動』を検索っ。
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『量子移動』
□使用者を最小単位に分解し、有視界の目的地に自身が存在した可能性を上書きして肉体を再構築する。
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えぇ…と、分解とか再構築とかちょっと怖いことが書かれてるけど、見えてる場所にテレポートするみないな感じかな?、…そんなSFな事ホントにできるんだろうか?
一度分解されて別の場所に組み立てるって事なんだろうけれど、ブロックならともかく対象は『私』というのが引っかかる。
まぁ書かれてるなら出来ちゃうんだろうね…。えっと次…『魄兵製造』はどういう感じだろう?
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『魄兵製造』
□一般的な観測者3人力程度の強さを持つ銅製の兵士を最大で1000体製造できる。
(神聖皇帝Lv上昇、臣民の増加で上限があがる)
□『記憶転写』を使用する事で一般観測者2人分の経験を記録させることが可能。
□神聖皇帝の『物質収納』『臣民管理』を一部共有することが可能。
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私には最初から千人の兵がいるってことかな?。…あれ?、マニュアルだと1000体なのにステータスでは1001体になってるね。…臣民の増加でって…これはもしかして凪恋?、『臣民管理』の横の1って数字は臣民の数だと思うから…ちょっとこっちも見てみよう。
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『臣民管理』
□神聖皇帝を心から信任した者を臣民として記録する。
□帝国臣民が増えると氏名、所持スキル、所持因子などが名簿として登録される。登録された臣民の名称を頭上に表示させる事もできる。
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なるほど、私の事を信頼している人は臣民にカウントしちゃうんだね。名前出してくれるのはすごい便利そう…覚えるの大変だし。それじゃホントに凪恋が臣民になってるのか名簿を展開してみよう…。
そこまで考えてから自分の名前だけ載っている可能性が浮かんでしまう。
い…いや…、凪恋は私を信頼してくれてるはず…。大丈夫大丈夫…、ええっと…頭の中で唱えればいいのかな?、ええっと…『臣民管理』!!
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1 八重垣 凪恋 女性 12歳 【+】
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おおっ出来た、良かったやっぱり凪恋だ、臣民になっちゃってるんだね…、【+】項目をさらに見ると…。
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1 八重垣 凪恋 女性 12歳 所持因子:聖女
◇クラス:異世界人 Lv1
スキル
異界言語
病菌免疫
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やっぱり詳しく見れるね…これはわかりやすいかも…。ん?…あれ?、因子…聖女?
思考の中の活字に聖女という文字が見えた。
まぁ凪恋は確かに『聖女』だけど…、この項目って私のだと『転輪聖王』ってなってるところだよね。これってどういう事なんだろう?、…後でティータさんに聞いてみるかな?。他には私の方にもあったけど『異世界人』、これは職業なのかな?。スキルも私と一緒で『異界言語』と『病菌免疫』があるね。
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『異界言語』
□他言語を自国語と同等に聞き取り、読み書きもできるようになる。
□自国語が他言語使用者にその人物の最も親しんだ言語として認識される。
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『病菌免疫』
□体内に侵入したあらゆる病原菌への免疫を即座に得る。
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すっごいねこれ…、病気にかからないのも良いし。日本語通じない旅行はできる気がしないから、海外なんて考えて事もなかったけど…これなら行ってみたい国いくつかあるよ…。
西海岸や地中海、太平洋の小さな島々…いろいろなリゾートが頭に浮かんできたけれど…。
まぁそもそもお金ないんだけどね…。
すぐに泡となって消えた。
「どうですか?使いやすいと思うんですが、解らない所とかはありましたか?」
「ひィゃっ…、何してるんですか?…もぉ…」
目を開けて顔を上げると目の前にティータさんの顔があってビクッとしてしまった。
この神さまホントに苦手なタイプだよ…。
「クスクスッ、ごめんなさいね、祐乃さんが可愛いものでつい…、それでどうでしたか?」
「えっと、家の妹の凪恋なんですが、所持因子聖女ってなってるのはティータさんが何かやったんですか?」
「え?所持因子のところに書かれてましたか?、見間違えでなく?」
「ええ、書かれてましたけど、ティータさんは見れないんですか?」
「ちょっと待ってくださいね、えいっと」
またティータさんが私のおでこにピトッと指を充てた、何となく何でもお見通しなのかと思ってたんだけどそういうモノでもないらしい。
「あッ!、ホントですねっ!、聖女ですっ!、凪恋さんでしたっけ?あなた達姉妹は揃って凄いですねっ!」
ティータさんがこれまでにない程興奮している、ちょっと引いてしまいそうなほどの喜び方でぴょんぴょん跳ねだしそうな勢いだ。
「えと…そうなんですか?」
「ええっ、聖女は転輪聖王同様とんでもなく貴重な因子ですよッ!、…姉が聖王で妹が聖女だなんてできすぎですねっ…有史以来初でしょうっ、オマケでついてきてしまった普通の観測者だと思っていたのでチェックしていませんでしたがとんでもない拾い物ですよッ」
凪恋が褒められてるっぽいのは嬉しんだけど、この神さまの獲物を見つけたように輝く瞳は引っかかる。
ちょっと情報を引き出しておきたいね…。
「えっと、聖女っていうのはどういう因子なんですか?」
「その名の通りです、真理に祝福された女性で人々を惹きつけるカリスマ性がとても高く、時には宗教的偶像として称えられ、時には生贄や人柱になって天変地異を防いだりと、とてもべんr…、いえ…優秀な人材です」
今便利って言いかけてたよねっ!、これはダメなヤツだ!、この神さま凪恋を生贄に捧げる気なの?
「家の凪恋を生贄になんてさせませんよ…、そんな気配チラリとでも見せたら、即刻こんな星見捨てますからね!」
「ええッ!?、それはもちろんですよっ、ちょっと…聖女の説明としては間違っていましたね…、生贄云々は地球での話ですっ。この惑星ユピティエルでは奇跡同等の最高の回復魔法を使いこなす癒し手になることができます、そんな貴重な人材を生贄になんてするおバカはいませんから安心してください」
「どうも信用できないんですよね…、いいですかっ!。妹に何かあったら本気でこの星潰しますからね!、…潰して私も死にますからっ!」
「それは困ります、本当に困りますからっ。わかりました…私の方でも妹さんを守れるように手を尽くしますっ、祐乃さんは『魂騎製造』を使って魂騎士で凪恋さんを守護させてください」
珍しく慌てた様子で取り繕うティータさん、本当に信用していいのだろうか?
「魂騎士ですか?」
「ええ、魂兵10体分で作られる英雄クラスの実力を持った騎士なので、そこいらの強者では相手にならない強さですからっ。…コレは比喩ではありません、実際に矢が千本降ってきたって、雷が落ちたって凪恋さんを守ってくれますよ」
「それは頼もしいですね…、戻ったら早速作ってみます」
「ええ、そうしてください、星を壊されては敵いませんから…」
ほっと息を吐き、ティータ様は一歩下がると、私の顔をじっと見つめてからフワリと浮かんだ。
「では…マニュアルも渡せましたし、私は帰ります。…祐乃さんがチョット怖いモードに入ってますしね…。貴女は転移に必要な『星煌』が貯まるまでユピーの星で過ごしてみてください、その時帰還を望まれるのでしたら約束通り地球の記憶を弄りますから」
「わかりました、出来る範囲でなんとかやってみます、妹の事…本当に頼みますよ」
「ええ、必ず、この名に懸けてお約束します」
「お願いしますね、ホントのホントに!」
「祐乃さんが妹さん第一だという事は肝が冷える程よく分かりましたからご安心を…、あっ…そうですね」
そのまま存在が薄まっていくティータさんは思いついたように人差し指を立てた。(癖なのかな?)
「今のやり取りで確信したのですが、後出しだと面白みがないので最初から言っておきます」
真面目な顔をしているけれど『面白み』という言葉が美人を台無しにさせ、続く言葉に嫌な予感しかしない。
「クスッ…やはり転輪聖王の因子を持つ貴女は…一日もせずにユピーの星を救う決意をすると思います。その時は何らかの宣誓ないしはアピールを私に向かってしてください、私から貴女にギフトを送りますから、…クスクス」
「一日ってそんな…いくら何でも…」
いくら何でもそこまでチョロい女じゃありませんよ!とは思うものの少し自信ないね…。
そんな私を見透かすように、すっごい自信満々な顔で挑発するように、にぃ~と口角と顎を上げるティータさん…。
「わかりましたよ!、その時は降参って、負けましたって言いますよもうっ!」
「まぁっ、楽しみですねっ、祐乃さんの事とても好きになりましたよ」
ティータさんは両手を組んで嬉しそうに微笑む、本当に美人なんだけどその笑顔に私の顔は引き攣る。
「ちょっと分かってきました、私で遊んでますよねティータさん」
「そんなことはありませんよ、本当に期待しているんですからねっ、クスクスッ…それではまたっ、異世界旅行を楽しんでください」
そういうと同時にティータさんはニッコニコのご機嫌で姿を消し、そして海辺の景色も霧散していった。
__________
□↑の線がスマホとPCで長さが変わる事に気が付いて直してたら時間かかってしまったとです。
□スキルは分かりやすさ重視で名前付けたので中二心に欠ける気もする。【暫定】
□明日もちょっと遅れるかもです。
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