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1-11【姉妹】貴族その1

◇貴族その1。 


 …んー、20人くらいかな?、なんだか物騒な展開になってきた。


そんなに簡単にはいかないだろうなと思ってはいたけれど、武装した集団からは歓迎オーラが一切出ていない。


 ユピーちゃんはちゃんと付いて来てるんだろうか?、凪恋の背中にいたはずだけど怖がってなければいいなぁ…。


先頭の男性は見るからに偉そうな態度で、1人だけ兜の代わりに大きな羽根の付いたツバ広の帽子を被った20代くらいの優男(やさおとこ)で。左にはバットみたいな武器を持った2メートル位の大柄の男、右には鎧を着ていても細身と判る槍を持った男。その二人で両脇を固め、その後方に統一された簡素な鎧の一団が続いていた。


 厳つい集団だなぁ…半グレとかそういう人たちがこっち向かって来てるみたいで怖いんだけど…。


先頭の優男は左右を見回しながらズカズカと人をかき分け私の2メートル程前までやってくると、踏ん反り返ってガリウスさんに話しかける。


「ガリウス、新たな皇帝陛下はどこにおられるのか?、平民などよりもこのパウルスク伯爵家の次期当主である私がまず初めに挨拶をせねばなるまい」


「こちらに御坐(おわ)すお方にございます、テオスト様、貴色(きしょく)御光(みひかり)がお見えになりませんか?」


「なに?、…この小娘が、……皇帝?」


そう言ってテオストなる優男は、今初めて気がついたように、冷淡な視線をこちらに向けた。


 私こんなに光ってるのに今まで視線に入らなかったの?、凄いね…こんなドラマの悪役みたいな人初めて会ったよ。


私のなかで割と悪い意味で充てた『優男』の形容は更に下がって『悪役』になった。


「まてまて何を言っている、それはない…女ではないかっ、不遜(ふそん)にも貴色に光りおって何処の精霊が悪さしておるのかっ!?、栄光あるアクィアクス帝国の歴史に女帝など1人もいなかったのだぞ?」


存在感タップリに失礼なこと語り出したけど、色々情報が出てくるものだから聞き入ってしまった。  


 この人達の国はアクィアクスって言うみたいだね、そしてさっきから言われてる貴色って、薄い桃色の事?、ユピーちゃんの光は尊い色とされてるのかな。


悪役さんは鼻息荒く私をマジマジと下から上へ眺めてから、視線をアリスティアちゃんへと移した。


「アリスティア嬢、知らせを受けて急ぎ来てみればなんなのだこれは?、貴女の熱意を汲み取り陛下の来訪をお迎えする任に付いて頂いたが、こんな(かた)りに(そそのか)されるとは…、やはり家名を廃し我が家に保護を求めて嫁いだほうがよろしいのでは?」


侮蔑(ぶべつ)下卑(げび)たものを多分に含んだ視線でアリスティアちゃんを見下ろし、どうにも聞き捨てならない事を言い放つ。


 この人今なんて言ったっ!?、えっ?自分のところへ嫁に来いって言ったの!?、悪役なのにっ?、ちょっと…イヤかなりライン超えてきたよ!この悪役ロリコンは…。


私の胸に異様な程の苛立たしい気持ちが湧いた、それは怒りとは少し違う、もしかしたら独占欲の様な物なのかもしれない。


「これほどの貴色の輝きを騙りと仰るのですかっ!」


アリスティアちゃんの必死な反論を鼻で笑うと、これでもかという位に胸にを反らせて語り出す。


「この様な小娘に何ができるというのだ。どう考えても世界救済など成しえぬではないか…、その程度も判断できぬから(だま)される、さっさと我が家に嫁いでくれば確り教育してやったものを…」


「パウルスク家に()う教えなど何ひとつ、…ふぁっ、陛下っ?」


武装した大人に喰って掛かろうとするアリスティアちゃんを、私は所有権を主張するように背後から抱きしめて引き寄せた。


「ここは私に任せて、アリスティアちゃん」


「ユノ陛下……」


アリスティアちゃんが抱き留めた手にそっと手を添えて応じてくれた事で、(くだん)の不快な感情はスッと収まり、私はにこりと笑ってから悪役さんと目を合わせた。


「ふん、皇帝を(かた)る不届者め、切り捨てられたくなければこの地を去るが良い」


大して身長変わらないのにすんごい上から目線で睨み返された、この人にはなぜだか知らないけれど絶対に負けられない。まだ実戦経験ないんだけど…、本心では色々実験して置けば良かったとか思うけど。この星最強らしい私の力を信じて挑発してやろう。


星の皇子のスキル『身体強化』を密かに使い、私は不敵な態度で悪役さんに挑む。


「貴方、余り頭が良くないんですね」


「なんだとっ!?、貴様誰に向かって口を開いているのか分かっているのか!?」


悪役さんはみるみる顔を赤くして此方を睨む。


「誰に向かって?、次期伯爵とか言っていたけれど、それは皇帝より偉いんですか?、それでしたら謝っても良いけれど」


「なっ……」


「自分の経験と知識だけで判断するのは危険だと警告しますよ。もし私が本当に皇帝だった場合、貴方どうするつもりだったんですか?。ああ…でもそのケースを一ミリでも考える頭があれば、そんな態度取りませんものね…。と言う事は………、やっぱり頭悪いんじゃないですか」


「貴様ッ!」


掴みかかるどころか顔目がけて拳が飛んできたので『思考加速』する。


 さてどうしようか、星煌で筋力やらは強化されているらしいから掴んでしまおうかな…。


そんなことを思案しているとさっき洞窟で思考加速した時と違い視線が動かせる事に気が付いた。


 アレ?視線が…、身体もゆっくりだけど動かせる、『身体強化』のおかげかな?。コレならどうにでもなりそうだし腕掴んで捻り上げてやろう。


しかし講義で習った簡単な護身術を掛けてやろうと行動に移そうとした私の視界左側で、ゆっくりと槍の切先が悪役さんの胸目掛けて進んでいるのが見えた。


 あ、コレはアザレアの槍だ…、私が攻撃されたから守ってくれてるんだね。


そう考えている間にも槍はドンドン進んでいく。


 でもこの速度で突いたら死んじゃわない?思念で命令できるかな?


『アザレアっ、殺しちゃ駄目っ、気絶もさせないように大人しくできる?』


思考を飛ばしてみると、アザレアの槍はピタリと止まった後、上方に弧を描き、槍の反対側の地面に立てる部分が先程より早く悪役さんに突き出された。彼の拳の方はどうかなと視線をやると一ミリも動いていないようだ。


 アザレアに任せて大丈夫そうだね。


そう確信して私は思考加速を解いた。

 

時間の流れが戻るとゴッと音がなり、続いて悪役さんが一歩程後方にくの字になって押し出されると「ひぃぅ…」と空気を絞り出すような情けない声を漏らして前のめりに崩れ落ちた。


彼の護衛を含め何が起こったのか理解できず、一瞬固まる中。


「ひぅっ、陛下ッ!」

「ひっ、姉さんっ!」


反応があったのは挙げた拳に怯えて目をつむったアリスティアちゃんと、腕にしがみついた凪恋が私を心配する声だけであった。


「大丈夫、2人とも目を開けてみて」


凪恋に優しく語りかけ、抱き留めた手に両手を重ねて必死に力を入れるアリスティアちゃんを強く引き寄せると、2人は恐る恐る瞳を開けた。…その眼前には。


呻き声をあげる悪役さんとなにやら心配そうに声を掛ける護衛2人。彼は鳩尾(みぞおち)に強打を貰い、呼吸すらままならないようで苦しみもがいていた。


更に一拍置いて騒めきだす避難民。大丈夫なのか?、貴族を倒してしまうなんて……と口々に私を心配しているみたい。


彼の護衛は扇状に私を取り囲み、槍を20度ほど此方に傾けて待機し、命令を待っているようだ。


「ねぇ、そこの細い鎧の人」


私は悪役さんを介抱している護衛の細いほうに声をかけた。


「…ッ、オレかっ?」


話しかけられたことが予想外だったのか少し(ども)ってはいたけれど、返事をしてくれたので続けて質問する。


「そう貴方、貴方は私の騎士が攻撃したのが見えましたか?」


「…い、いや、見えなかった、お、お前がやったんじゃないのかっ?」


「ぐほっ、ンぐハッ……ぐハッ、ハッ、ハァぁ…、なっ、なにをっ、あっている、わだじにっ、攻撃したんだぞっ!、早くっ、ッハァ…あやぐごろぜっ!」


どうやら鳩尾の痙攣が収まって来たらしい、悪役さんは元気に喚き出した。


「大人が未成年の女性を囲んで殺すつもりなんですか?、強そうな護衛のお二人はそんな不名誉な命令に従ってしまうのかな?」


目を細めて左右を見遣ると2人はビクッと身構えた。


「テオスト様一旦引きましょう、相手はかなりの使い手です」


「あぁオレも賛成だテオスト様、…強行すれば後悔する事になりますぜ」


「ふふっ、2人は誰かさんと違って賢いんですね、逃げても追っかけたりしませんから安心して良いですよ」


「ごし抜けっ…どもめっ!、ハァ…ハァ……、こんな…小娘相手にっ、撤退するなどという恥辱、パウルスク伯爵家の次期当主であるわたしに受け入れろというのかっ!?」


「テオスト様っ、どうかご自重をっ」


「うるさいっ、槍を構えよ、これまで家族を含め食わしてきてやった恩を忘れるなっ!」


悪役さんは大柄な護衛にしがみ付くようにして立ち上がると周囲に唾を吐きかけるように命令を出した。


「仕方ないですね、一応警告しておくけど…さっきの攻撃が見えてなかったなら…、本当に勝ち目ないですからね」


『魄騎士製造』

_______________________

 魄兵製造 8/1367

_______________________


私の前に新たな騎士が4体、地面を素材に生まれ、槍を構えて立ち上がる。


「イベリス、ウツギ、エリカ、オンシジウム、攻めて来た瞬間に攻撃開始、相手を無力化してっ、アザレアは私達の護衛をしながら中央の偉そうな人プラス護衛二人の無力化をお願いっ、わかった?」


そこまでは相手にも聞こえるように命令し、その後…。


『殺したら駄目だからね』


思念で大事な命令を送ると。


「「了解シマシタ」」


と五つの声が重なって聞こえた。


護衛2人の顔が青ざめ、私を囲んだ兵達も互いに顔を見合わせて動揺する中、1人激昂した悪役さんだけはやる気満々のようだ。


「姉さんっ、私達はシロが守ってくれるって、だからっ…」


「アザレアは完全に攻撃に回していいんだね、わかった、ありがとう凪恋っ」


『アザレアは正面の三人をお願いね、護衛二人は気絶させて、真ん中の悪役はさっきと同じで鳩尾に一発いれてあげてっ』


『了解シマシタ』


 あ、今度は思念で了解が返ってきた。聞かれたくない命令をしたときに命令したこと自体を悟られないようにっていうコッチの意図を汲んでくれてるんだよね。魄騎士はちょいちょい意思があるのでは?と思わせる動作をすることがあるけど…今度検証しよう。


「そんなガラクタがなんだというのだっ!、私に続けっ、勇気を示せぬ者は後で家族共々森の外に放逐(ほうちく)してやるから覚悟せよっ!」


「っ…、仕方あるまい、ティモンやるぞっ!、皆ッ!、相手は怪物と思い最善を尽くせっ!」


「あぁ…、流れ着いた先で結局化物か…、もうどうにでもなれだっ!」


兵士全員が武器を構えると槍先が白く光を発し始めた、護衛2人などはそれぞれ赤と黄緑に眩く発光させていて、なかなか綺麗だ。


 コレも魔法なのかな?


でも焦らない、凄く強そうに見えるけれど、多分アザレア一人でも全員倒してしまえると思う、それくらいの速度差がある。


ガリウスさん他、避難民達は悲鳴にも似た声をあげているけれど、臣民数は減っていないみたいなので、私を心配してくれているんだね。


キュッと手と腕の両方に力が入り、私は安心させる様に、少女を抱きしめる手に力を入れ、妹に微笑んだ。


「くくっ、それで良いのだっ!、…女ァッ!、必ず私の手で串刺しにしてやるっ!、一斉にかかれぇッ!」


号令が発せられると同時に時間が鈍化する。その中をアザレアを除く4体の騎士が一斉に2メートル程の高さに頭を下にしながら軽々と宙返りし、何もない空中を足場でも有るかのように蹴り、兵士達を頭の上を高速で飛び越える間にピンク色の光を纏わせた槍を横凪にして全員の槍の柄を切ってしまうと、背後に着地してから後頭部に槍の刃の無い部分で一撃をいれていった。


アザレアは槍を光らせてから、逆に低い姿勢で踏み出し、悪役さんが号令の為に(かざ)した剣を下から槍を振り上げて簡単に切断すると、その勢いのまま飛び上がり、空中で護衛2人に刃の無い反対側を光らせてそれぞれの胸部を突くと、薄桃の光の衝撃が鎧を貫いた。そしてやはり何もない空中を足場にして少し後退した場所に着地すると、悪役さんの鳩尾にまた一撃を入れてから、こちら側に飛び私の前に戻ってきた。


 すごい…舞踊を見てるみたいだ。


思考加速を解くと、ウッ…と言う呻めきと共にガラガラと切り取られた剣や槍が地面に落ち、次いで兵士と護衛がバタバタと倒れだした。


「ひぅぅ…ッ、ヒグッ…、ッハわぁぁ……」


周囲の難民達が静まり返る中、1人腹を抑えてなんとか呼吸しようと(うめ)く悪役さんに兵士達を倒した4騎士が槍を向けた。


「あれっ?、……終わったの?」


凪恋の呟きが静寂の中に響くと、皆一斉にザワつき始めた。倒れているのが統治者であろう貴族だった為に大っぴらに歓声は上がらないけれど、どよめきの中には驚きと感嘆、そして期待の声があがっている。


「す、凄いです…陛下、これがユピティエル様に授かった救世の御力なのですね」


「こういう事できる人ってこっちでも珍しいのかな?」


「はい、英雄譚の様な伝説でしか聞いたことがありません、獣族や魔族などには目に見えない程早く動ける者がいるらしいのですが…」


「なるほど英雄級か…ティータさんが言ってた通りだね」


 あの神様、困ったことに言ったことはみんな真実なんだよね…。


「ティータさん?、それは先程ユノ陛下が仰っていた陛下の世界の神、ティータラフィス様の事ですか?」


「覚えてたんだね。ユピーちゃん…、ユピティエル様のお友達、ちょっと意地悪なんだけど凄い美人で素敵な神様だよ」


「神々のお話しっ…とても興味深いですユノ陛下っ」


「なら今度ゆっくりお話してあげるね、でも今はそこで呻いてる人をなんとかしてくるよ」


「はい陛下っ、お気をつけてくださいっ、お話し楽しみにしていますっ」


なんて素直で可愛いのだろう、キュッと抱きしめてから頭を撫でて…仕方がないので悪役さんの所へ歩み寄る。左後方にはアザレアがついて来ていて、妹達の守りはシロに任せた。


悪役さんはある程度呼吸ができるようには回復したみたいだけれど、自身の護衛が全て倒され、四方から槍を突きつけられて(ひざまず)いてた。


 武器を突きつけての交渉なんて初めてなんだけど上手くできるかな?、部費交渉や仲裁、他校との交流や調整なんかとは性質が違うよね。示談交渉や、聞こえは悪いけど人民裁判みたいな感じなんだろうか…?。


学校の生徒会は政治や裁判の縮図なんて言う人はいるけれど、実際に人の生き死に関わる職業の重みは別格に思えた。


 まぁいずれにせよこちらの要求を通すっていう目的に違いはないよね、戦いに勝ってかなり上の立場から話しができるから、普段の話し合いより楽かもしれない。


 えっと…この人は、確かテオストって呼ばれてたよね。


呼びかけまで悪役さんは流石に可哀想なので呼ばれていた名を思い出す。


「さてテオストさん、敗北を認めますか?、認めるならいくつか要求を飲んでほしいんだけど」


「ひぃっ!、きっ、貴族の私にっ!、なっ!何を要求する気だっ!?、無礼なことは止めて…こっ、この槍を下げさせよっ!」


怖がってるのに偉そうな人初めて見た…、そして困ったなぁ、こんなメチャクチャな人どうしていいかわからないよ。どう交渉すべきなの?こういう時…。


わたしの困惑する姿を弱気と見たのか、悪役さんはさらに態度が大きくなった。


「なんだ?、今更後悔しても遅いぞ小娘っ!、貴様はパウルスク伯爵家に弓を引いたのだ!、生涯日の当たらぬ生活が待っていると思え!」


「はぁ…、そうなんですか?」


うーん、まさかこういう障害があるとは思わなかった、ホントにどうしよう。


『陛下…、ドウゾワタクシ共ニ、御命ジクダサイ、心ヲ砕ケト』


『え?、アザレアはこういう相手得意なの?』


『ハイ』


『それじゃあやってみて、もう少しまともなお話しができるようになるといいんだけど』


(かしこ)マリマシタ』


「そうだ!貴様は奴隷として扱き使ってやるから覚悟せよっ!、恐れ多くも陛下を騙るなどっ…」


ヒュンっ!


アザレアの槍が輝くと悪役さんの胴鎧はバラバラに砕け散る


「ひええぇっ!、んなにおっ…ぐふぅぅ」


次に彼の両手をイザリスとオンシジウムがねじり上げて顔を地面にゴチンと押さえつけた。


「ごふぅ…ッ…ハァ…ヒイイイィッ!」


そして呻きながら呼吸のために顔をずらしたその目の前にアザレアが槍を突き立てる。


 ええっ?、アザレアッ?、…もしかして今怒ってるの?、なんとなく…そんな気はしてたんだけど貴女達感情あるの?、それとも私がどうして良いか悩んでいたから、(はく)に刻まれた記録の中から最適として選択した行動なんだろうか?


アザレアだけでなく他の騎士も完璧に連動して悪役さんを取り抑え、エリスが剣を抜いて耳の下に押し当て、食い込ませながら…。


「左耳、右耳、爪、指、鼻ト順ニ削イデイク」


抑揚のない声で淡々と彼の耳元で囁いた。


 うわぁぁ…これはぁ…、数時間前まで女子高生だった私にはとても出来ない手段だね…。


ただコレは子供には見せられない、私も成人してないけど…。


『凪恋っ、ユピーちゃん、目をつむってて』

『アリスティアちゃん、目をつむってて』


と二つの思念を送ってから振り返り、可愛く両手で目を塞いでいる二人の姿を確認した。


 …これでよしっ!


「ま…待てっ!要求を呑むっ…呑むから止めさせてくれぇ!、頼むっどんな要求でも呑むと言っているだろうが!」


ググっと剣に力が入り、彼の耳たぶの裏から血が流れだす。


「ヒィィ!、飲ませて頂きますっ…、どのような事でも致しますから、どうぞご慈悲を!」


「陛下ヘノ敬意ガ抜ケテイマスネ」


「陛下っ!陛下どうぞご慈悲を!、哀れな罪人に慈悲をお恵みくださいィ!」


やりすぎっ!、と心の中は叫んでいるけれどコレがこの世界、この時代の普通なのかもしれない思い至り、止めることはできなかった。


 この世界を救うっていうのはこういうような事も対処していかないといけないんだね…、実際問題として私にはどうしていいか全くわからなかったし…まだまだ経験不足なんだなぁ…。


「それでは要求を言いますね、一つ目は、パウルスク伯爵家の人間が次私に突っかかってきた場合は、ええっとさっき貴方なんて言ってましたっけ…」


悪役さんがアリスティアちゃんに掛けた失礼な言葉を思い出す…。


「あ、そうそう、家名を廃させてもらいますから、その旨を家族全員に伝えてくださいね、イイですか?」


「ひゃ…ひゃい…、確かに承りましたっ…」


「2つ目は、その下品な目でアリスティアちゃんを見ることを禁じます、そしてパウルスク家に嫁ぐ事を断じて許しません」


「なッ…そ…なっ」


「そんなも何もあの子は私の物なので諦めてください。あ…そうそう家の妹の凪恋にも手出ししてはいけませんよ。わかりましたか?」


「グ…グゥ…、し…承知…しまじた…」


悪役さんは絞り出すようにそう答えると、ぐったりと力を抜いて抵抗を完全に諦めた。ついでに私もぐったりするくらい精神的に疲れた…。


初戦闘です、祐乃さんは見てるだけでしたが…。

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