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悪化する状況


 最早ここに到着してから2時間以上が経過した頃、いい加減このままではどうしようも無いと判断したガロスが丸い手のひらに収まるほどの物をコミュニティの方へと投げ込んだ。


 そしてその投げ込まれた物からけたたましいサイレンが大音量で流れ始めるとゾンビ達はそちらへと流れていく。

 

 「一旦休憩だ半人間、持って10分程だろうから今のうちに休んどけ」


 そう言ってエイミーへと飲料を渡すガロスは長時間の戦闘や無茶な動きや衝撃によりエラーを吐き始めているパワードスーツを取り外した。


 「かして、一応修理できないか見てみる…それとコレお願い」


 「へいへい…うっわ…完全ななまくらになっちまってらぁ」


 エイミーが壁に立てかけた大剣の側まで近付き先程戦闘中に遠目に見たその刃と言うには少し無理がある状態の大剣が更に悪化しているのを見てため息を付いた。

 

 依然少女はこちらを眺めているだけですぐさま襲ってくるとは思えなかった為2人は一旦休憩を取る事にした。

 だがそもそも大剣の状態を見るに僅かな休憩が大剣の研ぎに全て奪われてしまいそうな事にガロスはげんなりとした。


 「なぁ…これ折れないように補修するだけでいいか?鈍器として使っても充分戦力になる」


 「もしあの人が襲ってきたらそれじゃあ役に立たないわ…でも時間が足りないならそれでもいい」


 「まぁやれるだけやってみるがよ、そこまで強いもんなんか?俺には少しおっかない少女にしか見えねぇんだ」


 強そうは見えないんだがな、と付け足したガロスは何故か先程より上機嫌に見える少女をぼんやりと見つめた。


 「ただの感でしかないけど、あの人はなんだか人では無いような、そんな気もする」

 

 「そうかい、案外半人間と似たような奴なのかもな…それにしてもなんかあの顔どこか引っかかるんだよな」


 改めて戦闘に意識を割くことなくじっくりとその顔を眺めているとガロスは違和感を覚えた。


 どこかで見たことがあったような、と。


 記憶の中を探るもどうしてもガロスは思い出せない。


 「なかなか整った顔ですからもしかしたらムービー作品の子役さんだったりとか、かな」


 「いや、そういったモンは興味が無かったからな…それに最近じゃねぇ、多分結構前だから歳だってだいぶ変わってるだろうしな…」


 「てことはその娘さんとか…」


 「いや、どうだかな…っ!?」



 そこまでの話を強制的に途絶えさせるに値する光景がガロスの目に映されたのはその時だった。


 それは瞬きした刹那の事でガロスはそれが現実なのか理解出来なかった。


 それでも頬を撫でる熱風と体を照らす光は否応にもなく現実だと言う事を伝えてきて爆音により耳鳴りのする耳を押さえて呆然と見つめるしか無かった。




 細かい瓦礫が2人の元へと降り注ぎようやくぼんやりと耳が聞こえるようになってエイミーは慌ててガロスの元へと駆け寄ると怪我は無いのかと質問を投げかけた。


 「あ、あぁ無事だ…」


 「ほんと!?よかった…」


 エイミーの心の底からの安堵の声にガロスはどうしたもんかと頭に手を当てると先程までいた場所に少女がおらず辺りを見回す。

 すると数メートル横に気まずげに佇む姿を発見し慌てて腰の拳銃へと手を伸ばした。



 「悲しい世の中になったよね…私はそこまで危険そうに見える?」


 建造物が崩れ落ち、ゾンビのうめき声が辺りから聞こえてくる中でその少女のまるで鈴を転がすような声が綺麗に聞こえた。


 防弾チョッキを着込み、その上からドクターコートを羽織り裾をはためかせ戸惑いの表情を浮かべる可憐な顔立ちをしていて。

 その姿は何故なのかどこか恐ろしい空気がありガロスは目を離せなかった。


 まるで幻のような、人間とは違うと言ったエイミーの言葉をガロスは信じてしまいたかった。

 

 「ええと…エイミーよね?そこの人は誰かな?」


 そして名前を呼ばれようやく側まで少女が来ていた事に気が付いたエイミーは慌ててガロスから離れると腰からナイフを取り出し構えた。


 そして自分の名前を呼んだのが目の前にいる少女だと理解するとエイミーはもう平静を保つ事は出来なかった。



 「どこでその名前を!言え!」



 エイミーという名前を知っている生存者はワイズエッジホテルの生き残ったであろう仲間とすぐそばにいるガロスだけの筈だった。



 「半人間お前名前なんてどっかで会ってれば…」


 「正直に答えて、ホテルの仲間に何をした!」


 ガロスの声なんてもう大切な仲間の事しか考えられないエイミーには届かない。

 それだけあの時間と場所が大切だったのだ、目の前の少女の目はどこまでも暗闇が続いてるように感じる程曇っていて仲間に何かしたのではないのかとエイミーは焦っていた。


 「お、落ち着いて私は別に…」


 そしてそんなエイミーの張り詰めた空気に少女が慌てて両手を上げるとコートが捲れ上がった。

 そしてその内側には銃器を保持できるラックが縫い付けてあった。

 ドクのコートだと瞬時に見抜いたエイミーはナイフを片手に駆け出した。


 「何もしてないわけない!それにそのコートはどこで!?」


 「ドクから…ってうわぁ!?」


 人間のものではなくなった特製の四肢を操り高速の斬撃を少女へとエイミーは繰り出しながらその首を取ろうとナイフを振るうのだった。

 


 



 『2人に群がるゾンビを倒せば印象が良くスムーズに事が進むとあれ程言ったのに…』



 少女の中にいるサブ電子頭脳はボヤきため息を吐いたのだった。

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