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言葉で表せない強さ


 「やっぱり一足遅かったみたい」


 ゾンビの大群をその巨大な大剣にて薙ぎ払いながらエイミーはボソリと呟いた。

 その声音は残念とは微塵も思ってなさそうなほど嬉しさが全面に出て来ており壊滅してしまえばいいのにという常日頃から思っていた望みを隠す事なく上機嫌だった。


 「どの口がいいやがるんだか、まぁとりあえずゾンビの奴等施設の中心に集まっているみたいだからまだ生きてる人がいるのかもな、でも俺は救出は頼まれてない」


 「奇遇ですね、私も頼まれていません、もう少しゆっくりと行きません?具体的には周辺の私達以外の人間が死ぬまでとか」


 「それはどうかと思うが…少ししたら休憩したいかもしれない」


 「それでいこ」


 ゾンビがコミュニティ中心のビルに吸い込まれるように流れていく為ゾンビの背後からなんの苦もなくあっさりと斬り伏せながらエイミーはここまで乗りつけて来たボロへ視線を向けるとため息を吐いた。

 視線の先には遅れる原因となった塗装の禿げたいまにも壊れそうなバイクが煙をあげていた。


 エイミー達は監視班なんて名前が付いた部隊だが人数が少なく戦力もぶっちゃければエイミー1人な為与えられた物資はかなり少なかった。

 更に監視という任務な為移動手段なんてものは用意されていなかった為バイクはガロスが資材を近辺から集めて修復したものだった。


 そのバイクもエイミーの武装の重さにとうとうここまでくる道中で不調が目立つようになり目的地であるコミュニティに付いてそうそう煙を吐き出した。

 慌てて2人が降り離れた場所まで行くと軽い爆破を起こし使い物にならなくなってしまった。


 「まぁ半人間はクソ重てぇからな、元々ボロだったから仕方ねぇさ」


 「女性に向かって重たいは禁句ですよ?手が滑ってゾンビが数体そちらに向かっちゃうかも」


 「お、おいわかったからやめろって!危ねぇだろうが」


 三匹のゾンビの頭をサプレッサー内蔵の拳銃で撃ち抜きガロスは慌てて謝るとエイミーは少し笑ってまたゾンビを一体も残さないように殲滅し始めた。




 それからしばらく殲滅を進める事数時間、さすがにずっとゾンビがビルに張り付いてることもなく人間を察知した数百のゾンビがエイミー達を包囲し始めていた。

 

 さすがにエイミーの大剣頼りではどうしようもないと判断したガロスもパワードスーツの力任せに装飾も何もないシンプルな片手剣とサプレッサー内蔵ハンドガンを使い戦いに加わっていた。


 「切りがねぇな、まだ行けるが…さすがにジリ貧だなこりゃ」


 ため息と共に最後の弾倉が宙を舞い新しい弾倉へと交換しながら左手の片手剣でゾンビの首を吹き飛ばす。

 だいぶ切れ味が落ちているのか手に伝わって来た硬い感触に舌打ちをしたガロスはエイミーの大剣はどうかと視線を移して眉を顰めた。


 ガロスの目にはどこか何かゾンビ以外の別の敵からの攻撃を警戒しながら戦闘してるように映ったのだ。

 そんなガロスの視線に気が付いたのかエイミーは苦笑いを浮かべて口を開く。

 

 「ねぇガロス、先程からこっちを見ている子がいるけど知り合い?たしか娘いたんでしょ?」


 「タチの悪い冗談はよせ、どこだ」


 「左後方の外壁が半分崩れている三階建てビルの屋上、だいぶ若い少女ね、生体反応を調べたら見つけた、多分こっちが気付いていることも知ってるから思いっきりみちゃいなよ」


 「あ、あぁ」


 こんな場所になんでと思いながら振り返り背後に迫っていたゾンビを切り捨て少女へと視線を移すとガロスは自身の身体が固まっていくのが理解できた。

 

 「あ、あれは…」


 白いドクターコートを風に揺らしどこまでもどこまでも沈んでいけそうなほど深い海を連想させる眼を持つ少しばかり幼さを残した美しい少女だった。

 そこまでならガロスもわざわざゾンビを切る手を止める事はない。

 なら何故とめたのかと言えば、その少女が歯をこれでもかと食いしばり、世界全ての悲しみと絶望を詰め込んだかのような悲壮な表情を浮かばせていたからだった。

 

 「わからない、でも多分あの人がこの大群を移動させたんだと思う」


 「んな荒唐無稽な話どう信じろと!?あんなんただの子供にしか見えねぇ…」


 「ガロス、以前の仲間が言ってたの、どんな事があっても諦めちゃダメって」


 「それが一体…」


 あの少女とどう関係があるのかと疑問を浮かべたガロスへとエイミーはゾンビを数体まとめて斬り伏せ静かに話しかける。


 「あの人は諦めてないんだと思う、どれだけ大切な物を失ってもどれだけ自分が傷ついてもやり遂げてここまで来たんだと思うの」


 

 エイミーはワイズエッジホテルのみんなの顔を、瞳を思い出していた。

 エイミーは無力なのを理解していたからこそ色んな人の助けになれるように作業を手伝って沢山の関わりを仲間の誰よりも大事にしていた。

 そこで気が付いたのだ、誰だって表面は取り繕っていても目には影があるという事に。


 その影は仲間を纏める立場にいたロイドやジェイク、クリスといった人達がより強く浮かんでいた。


 そして総じてその眼の曇りが多いほど修羅場を潜って自分の心の傷を無視してひたすら目標に向かって突き進んで行く人達ばかりだった。


 戦闘能力が高い、頭が回る、それ以外の他の誰も持っていないだろう強さをそれぞれが持っていたのだ。


 だからこそ、疑問の表情を浮かべながらゾンビを撃ち殺したガロスにエイミーは真剣な目を向けて告げる。




 「あの目をした仲間をこれでもかと目に焼き付けてきた私が保証する、あの人と矛を交えるのなら死を覚悟したほうがいいわ…」




 エイミーはゾンビを切り捨てながらもその少女から目を離すことは出来なかった。

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