生きているという事
お待たせしました、諸事情があり更新を一時停止しておりました。
更新お待ちにしていた方に多大なるご迷惑をおかけいたしまして申し訳ありません。
これからも不定期ですが週に2回くらいは頑張って投稿する予定です。
これからもどうかよろしくお願いします。
それからエイミーの人生は今までのワイズエッジホテルでの生活とは打って変わって大幅に変化した。
エイミーがホテルの仲間達に憧れていた力も手に入ったし以前感じていた自身の無力感も無くなって生活する上での不便も無くなった。
それでも、だとしても、そんな事は望んじゃいなかったのだ。
生活が不便でも、自身が力の無かったとしてもそこに確かに幸せと言うものは存在していて何よりもソレが大事だったのだ。
ワイズエッジホテルで拉致された後エイミーはそのまま猿轡をつけられて死体袋と思われる真っ黒な袋に入れられどこかわからない場所へと運ばれた。
そのまま逃げる事など出来ないままなすがままに何やらよくわからない機械拘束され薬で薄れされられた意識の中助けを求めた。
気がついた時にはもう何から何まで変わっていてどうしようもない状況に陥っていてエイミーは抗うのをやめるしかなかった。
「新たに3人が接触しコミニティー接触した事以外標的は依然変わりはないようです、それと以前からある傘下のコミュニティです、それにしても何故あそこは放っておくのでしょうか」
隣で同じくコミュニティの監視を長く共に行なっている相方のガロスに夜から朝にかけての監視結果をエイミーが報告するとガロスは短くなったタバコを放り捨て足で揉み消した。
「俺達にゃわからない事だよ、上の話ってのは基本的にそういうもんだ」
「そう、ですか…あ……」
目に仕込まれた義眼のズーム機能を使い接触した人物を観察していたエイミーはたわいもない会話に返事をしてある事に気がつき目を見開いた。
「どうした?」
「い、いえ見間違えたようです」
「そうかい、やっぱり半分人間だとそう言う事もあるもんなんか」
そうかもしれませんねと急激に上がった心拍数に気がつかれないように平静を装いながら返事を返すと義眼のズーム機能に加えて画質の最適化を行う。
最初は他人の空似かと思ったが最適化され画質が向上されたその視界には懐かしいジェイクの顔が写されていた。
「ねぇガロス」
「改まってどうした半人間」
「その言い方はやめてと…って言っても聞かないのでしょう?さすがにもう諦めるよ」
何度言っても配属された時から絶対に変えることのない呼び方にいい加減ガロスならそこまでもう気分を悪くする事もないからいいかなと名前呼びをさせるのを諦めため息を吐いた。
「諦めも肝心だからな、んで要件は?」
「死んだと思ってた人が生きてた、それも命の恩人で好意を少なからず抱いていたかもしれない人、そんな時に直面したらどうする?」
エイミーはジェイクの事はよく知っていた、まず下っ端の戦闘能力がない人でもその人の良いところを見つけてくれそれにあった仕事を探してきてくれたり。
それになんといっても仲間思いで優しく、誰か困っていたら目敏く見つけてすぐに助けてくれたり。
それでもでもかなり変な人で罵ってもらったりすると元気が湧いてくるってよくちょくちょく言って、最後に話した時も同じ事を言ってた気がしてエイミーは心が少し寂しくなった気がした。
でも、それでも一番魅力的だったのは他の誰よりも自分と言うものを持っていていつも自由だった。
エイミーは先程好きだったかも知れないとガロスに言ったのは紛れもない事実であると共に今の自分の不自由さに対して憧れの感情からくるものだとも理解していたからだった。
それにエイミーは自分ではジェイクと共になるなんて事は全然予想もつかなかった、何故なら歳の差も激しいのもそうだが今の自分では釣り合わないと感じてしまったから。
さらに言えばその僅かな恋心だって助けられた事による吊橋効果によるものだって理解出来ているのだから。
「すぐに好きだと伝えて許されるのなら結婚まで持ち込みたいね、こんな世の中じゃそんなロマンチックな出来事起きることなんて絶対無いだろうが、なんだ?物書きでもしてみるのか?」
「へぇ、ガロスらしい、物書きかぁ…それもいいかもしれないけれどしないかな」
「まぁ、そもそも上が半人間に娯楽を許してくれるとは思えないな…」
ガロスが視線をそのままコミュニティに向けたまま呟いたその言葉はエイミーの心に深く深く刺さった。
原因である両腕と両足、それに胸元へと視線を移しため息を小さくつく。
エイミーの身体は胴体の一部を除いて全てが金属で構成されていた。
捕らえられて直ぐに元の人間の身体の部位は取り払われ代わりに義手義足を付けられた為で胸元の物は命令に反発すると心臓に毒が送られる装置だった。
「行動を縛られているからね、そうでもしないと私みたいな無理矢理捕らえられた人は反発するに決まってる」
「まぁ、それだけ人材不足なんだろうな」
「個人的には今すぐ皆殺しとまではいかないけど嫌いな人だけでも…」
「それはまぁわからんでも…ってうお!?敵か!?」
いつも通りどうせ攻めてくる奴なんてゾンビくらいだろうと思ってぼんやりと景色を眺めながら会話していた二人は突如近くの壁から響いた着弾音に慌てて銃を構えた。
「コミュニティの方からだ!敵は何人だ!」
「っ…すぐ見る!」
かつて狙撃者をサポートする観測者をやっていたガロスが大まかな方向を瞬時に察して方向を伝えてきた為慌ててエイミーは狙撃銃をいつでも構えられるよう手に持った。
そしてスコープは覗かずに先程ジェイクがいた場所を義眼を使い注視するとどうやら側にいた少女が撃った事が理解出来た。
「どうやら着弾は偶然のようです、大人が子供に銃の手解きをしているようです」
「んだよ慌てさせんなっての、どれ」
エイミーが狙撃銃を渡すとガロスは倍率の低い粗悪品の望遠鏡を置く。
そして狙撃銃のスコープの倍率を最大にして二人の姿を少しの間視界に抑えると目を離した。
「子供のほう銃の制御が出来なくて銃口が上向いちゃってら、やめてくれよ銃撃戦なんてしたくないんだからな」
「一応、少し見張っておきます」
「はいよ、俺はちょっと寝るわ…おやすみ」
次第に聞こえてきたガロスの寝息を聴きながらエイミーはしばらく姿が見えなくなるまでジェイクの事をじっと見つめていたのだった。
「貴方は自由で生きていて羨ましい…多分私はどこまでも自由とは程遠くて、もう多分死んじゃってるの…」
助けてとは言えなかった、その最後の言葉は深く心の底に押し込めた、仲間の為ならジェイクは無理をすると知っているから。
それにこの機械だらけの醜い身体なんて見せたくなかったからこれで良いのだとエイミーは機械の体をそっと撫でた。
それでも、どれだけ辛くても、懐かしい顔が少しでも見れた事にエイミーの心は悲しくも少しだけ幸せを感じていたのだった。




