壊れかけの機械の心
「やっぱりそういう事だよね…」
ハイウェイにて望遠機能を使っていたクティの目には数百メートル先にいる人々が映されていた。
「インパクトがだいぶ強いとはいえよく見れば大した事がない事が伺えます、あの装甲もパワードスーツではなくただの廃材から作り出された防具のようです」
「コレじゃ撃ち抜けない...装甲の隙間か…近づいて無理矢理装甲剥いでからじゃないと」
クティは装甲を身体に纏った数人の男への視線そのままに愛銃のグリップをそっと手で触れた。
クティの持つ銃器はその愛銃しか持ち合わせていないのだからして。
そして彼らの廃材とはいえど薄くはない鉄材を溶接し関節部にはどこかからか調達してきたのか防弾布のような素材があてがわれていた。
中にはどこから持ってきたのかわからない古の時代にて存在していた騎士鎧を装備している者もいた。
そちらも角度が悪ければ拳銃の弾など弾かれてしまうだろうし、ヘッドショットを狙おうにもフルフェイスの兜までしている。
「騎士剣まで帯刀してる人までいて笑えますね、実態は野盗でしかないのに…そろそろ行きましょう、追いつかれそうです」
クティと同じく望遠機能を使い彼らを分析していたAT05G3は皮肉げにそう言って実弾の大型マシンガンを肩に担いで高架下へと飛び降りていった。
「離さず追いつかれず、調整が難しいですね…」
そう言ってAT05G3と同じように高架下へと飛び降りたクティは数回地面を転がり着地し、ビルの隙間から轟く音に先行したAT05G3を追いかける足を早めたのだった。
2人は三日間殆ど休みなく、ただひたすらにシティを走り抜けていた。
何故そんな事をしているのかと言うと理由は数日前にあった。
最初はそのまま何も考えずに正面から突撃する予定だった。
だがクティ達は彼らギャングのキャンプに近づきながら望遠機能を使い逐一観察していた時ある集団がキャンプへと出入りしているのを見かけたのだ。
統一された衣装を纏い高性能な最新の武器を持ちキャンプへと到着した車両から次々と降りてきたその姿をクティ達は何回も見てきた。
最初は医療センターで。
次にドクとアメリーのセーフルームで。
そしてアメリーのコピーのいた外壁の古い基地で。
何人も殺して何人も無力化してきた、どこともしれないその殆どが謎に包まれた軍がそこにいた。
だがクティ達が反応したのはそこではなく…他でもない彼ら軍を出迎えたその人物が外因だった。
その男は、かつてクティ達と最悪な形で出会った事がある男だった。
壊れていたデータからなんとか復旧させたデータに存在していた。
その男が下品な笑みを浮かべ手を擦り軍を出迎えていたのだった。
最初に気がついたのはロブスと言うそのギャングでも随一の狙撃の腕を持つ男だった。
ロブスはいつものように昼ごろに起きてエネルギー式のスナイパーライフルを片手に高台からゾンビを、そしてたまにいる逃げ出した生存者を狩ろうと安全エリアの中で一番高いビルの屋上へとやってきた時だった。
最初は地面が波を打っているのかと錯覚した。
それを不思議に思ってスコープを除いた途端ロブスはこの崩壊した世界になってから一番の衝撃を受け…口笛を一際大きく鳴らした。
そしてロブスの背後の屋上へと上がる階段の扉が勢いよく開かれ数人の武装した人がなだれ込んできた。
目のいいやつが1人すぐに気がつき血相を変えて緊急事態を各員に伝えに階段を駆け降りて行き残された人達も慌てて近くに備えている双眼鏡を手にしその光景を目の当たりにして。
先に降りたやつが説明をしたのか一気に付近が騒がしくなった。
「ありったけの弾薬を持ってこい!今のうちに狙撃で少しでも数を減らすんだ!正面ゲートよりサブゲートを死守しろ!敵は北東の第三ゲートだ!」
他のコミュニティからの盗聴なんてものはどうでもいいくらいの緊急事態に腰から無線を取り出すとオープン通信に変更し、ロブスは声を荒げた。
伝え終わったロブスは荒々しくその持っていた反動も銃声もない代わりにダメージの低く貫通力の乏しいエネルギー式ライフルを捨てた。
そして壁に立てかけてあった実弾のセミオートライフルを手に取ると用意された弾薬が無くなるまで引き金を引き続けるのだった。
一直線に、ただひたすら一直線にゾンビの大群がロブス達の組織へと走り寄ってきていた。
慌てるギャング達とは裏腹にクティ達はゾンビの侵攻を少し離れたビルの屋上からじっと眺めていた。
「私の意思で、私の我儘で、私のちっぽけなプライドのせいで…大勢が死ぬ、彼らに捕らえられた人だってあの中にいるのを理解した上で実行したのだから私なんて」
「それ以上は言わないでください、それが貴方の決めた事ならば私はその目標を達成する為にいかなる犠牲も問わないと、貴方を胸の内に抱えた時に決意しました」
とんだクズだ、と言おうとしたクティの言葉を遮りAT05G3は静かにそう告げた。
「それに彼らギャングにはコレだけでは生温い、そう思いませんかクティ?」
「そうだね…」
クティは力なく弱々しく頷いた。
既に別人であるとすぐさま断言出来る程に心が変化したクティはロイドと言う他人の為ただひたすら前に走ることしか出来ないことに、心が少しずつ荒れて淀んできていた。
仲間の前だからだろうか、AT05G3はクティがから元気でやりくりしていたのをジェイク達との別れの時にふと気がついた。
その時にはすでに最悪の手段としてリリアの自由を奪う事を考えていたのかも知れない。
後にジェイク達と分かれた後それを聞かされた時はAT05G3は驚き戸惑った。
仲間思いのクティが、ロイドがと。
でもその時既にそんな疑問なんて吹き飛ぶほど心が壊れ始めていたのをAT05G3は理解してしまった。
それは何かあれば一気に砕け散ってしまいそうなほどもろく見えて。
自分では時間をかけなければどうする事も出来ないことを悔やんだ。
「悔しくて、悲しくて、怖くて…どうしても辛いの…」
だからそんな壊れ物のような状態のクティがものすごく小さくそう呟いた為どう声をかけたらいいのかわからなくなって。
AT05G3は聞こえなかったフリをしながら口をきつく結び予備のマガジンへと弾を込めるのだった。
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