別れの旅路
悪人のコミュニティへカチコミに行く。
そうと決まればと居ても立っても居られなくなったクティは残っていたコーヒーを一気飲みすると今後の予定をジェイクへと伝える為に立ち上がり。
『クティ、残念ながら今のままの武装や状態では呆気なく死ぬ可能性の方が高いので少し待ってください』
この今いるコミュニティを先程案内すると言っていたジェイクにサクッと別れを告げて娘と共に戦いを始める空気だと思いこんでいたクティは思わずこけそうになった。
「な、なんでさ、今の体の最高の性能を引き出せる自信あるよ!?」
『クッキー、それ以外にも色々溜め込んでいるそうじゃないですか…』
「あ、あれはちがうのよ!あれは必需品なの!手放すわけには…うぅ…」
何時ぞやか仕込んでいたクッキーやお酒にツマミを破損させないように常に無意識ののうちに力をセーブしているのをAT05G3は見逃さなかった。
もちろんそれらはクティの言う必需品なんて大したものではない。
オートマトンのクティにはそもそも必要の無いものであってそれの為に性能を落とすのは今後のことを見据えて不必要にAT05G3は感じたのだ。
しかしそれらがクティへと与える恩赦にはまぁ一定の効果があると理解しているAT05G3はそこまで鬼でもない。
『何も手放しなさいと言っている訳ではないんです、隠さずにリュックにでも入れればいいでしょう?』
「怒らないでね…怒らないでね!」
そう念を押したクティは捨てなくて済む安堵に顔を緩ませ次々と身体にあるメンテナンスハッチを開け取り出し始めた。
腹の整備ハッチからクッキーの入ったビンを取り出し。
太ももの整備ハッチから包装されていないジャーキーを取り出し。
脇腹の左右の収納用のハッチからお酒のビンをそれぞれ一本ずつ取り出し。
腕の整備ハッチから乾燥したイカのツマミを取り出し。
『なんで直に入れてるんですか!?匂いがついたらどうするんですか!』
そこまでなんとか見守っていたAT05G3はイカの干物でとうとう耐えられなくなり声を荒げた。
「イカは美味しいんだよ!直に入れたのは袋の状態だと入らなかったからに決まってるわ!もぐほぅぐ…」
ちなみにコンテナに入ってたおつまみのイカを隠す場所が見つからず半分は食べ半分は腕の内部パーツに寄り添う形で収納していたのをクティは半分忘れていた。
今ようやく何か入れたかもと開けて出てきたのでその残りを口へと運んだのだった。
『バカなんですか!?匂いの強いものをそのまま入れるなんて!あぁもう少し匂いがついてるじゃないですか!』
クティは見目麗しき少女型オートマトンである、だがそれ以前にオッサンな為こういったツマミは身体が変わろうとも大好物なのだ。
「んまい」
ゆっくりと何度も噛み締め味を楽しみ微笑みを浮かべるクティ。
こういった好物が変わらなかったことにクティは味の薄れたイカを飲み込みほっと胸を撫で下ろすのだった。
場所は変わり始めてここにきた時珈琲屋に銃を突きつけられたソファにクティはゆったりと座っていた。
クティの右隣にはリリアが寄りかかってきておりテーブルを挟んで向かい側にはジェイクとマイヤーが座ってクティが話す今後の予定を聞いていた。
「なるほど、僕としてはついていきたい、それぐらいの敵ならなんとかなる気もするけど…邪魔なんだよね」
「邪魔なんて…」
「いや、邪魔になる、今まではクティが力を抑えて戦闘してたから僕やドクのような人間が周りにいても問題なかった、でもこれからは違うんだろう?」
AT05G3はクティへの人間への擬態を解くと、そう言っていた。
旅を経て理解せざるを得なかったのは自身の意思で動いているオートマトンはATαなどの例外は除きほぼ無いと言う事で。
つまり自身の意思で行動しているオートマトンであるクティは非常に目立つと言う事だった。
それが知られれば厄介ごとなんてものはいくらでも舞い込んでくる。
それでも擬態をやめる決意をAT05G3がしたのはそうしなければクティが望みを叶えられない所まで来てしまったから。
それはクティでもAT05G3でも無い共に旅をしてきたジェイクだからこそ理解できる事だった。
「それに僕らは大丈夫だから、まぁ大丈夫なんて言っても何の根拠も理由も無いけど、クティに、ロイドに教わった事は沢山あるから君なしでもなんとかなる、安心して、君の願いの為に僕らは足枷になりたくない」
おちゃらけた変態発言もなりを顰めいつにもなく真剣なジェイクはクティへと優しく語りかけた。
思わずクティはこれからジェイクのいない旅を思い浮かべてしまい寂しくなり拳を握りしめた。
「ねぇジェイク、あなたは変態でバカでどうしようもなく変態で、それでも大切なもう数少ない仲間なの」
「そ、そこまで変態って言われると、いやなんでもないよ今はそういうんじゃないのは理解してるから冷たい目で睨まないで!」
「だから、だから…死ぬ事は許さないわ」
ここまで来れたのはジェイクはもちろんドクや新しく関わりを持った仲間たちのおかげたのは重々理解している。
だからそんな大恩ある彼らが死ぬのは許せなかったクティの声は少し震えていた。
もし死んでしまったと知らせを受けたらどれぐらいこの機械の心が苦しむかなんてのは想像に容易い。
でも、それでもクティは流れる涙を手で拭き取り顔をくしゃくしゃにしながら笑顔を浮かべるのだ。
別れが悲しげな顔なんてのは、死ぬ時に絶対に後悔すると知っているのだから。
ジェイクとリリアが出立の為の支度をするといい退出した後部屋にはクティとマイヤーのみが残されていた。
「マイヤー…聞いておかないといけないことがあるの」
「あら、それはなんでしょうか」
クティは少しだけ…少しだけ知ってしまったのだから。
どこかの地下で1人寂しく誰かがくしゃみをしたのだった。
ブックマーク、評価、感想本当に嬉しくて点にも登る気持ちです、ありがとうございます。
これにて「中央政府の真実」の章は終わりです。
また一週間ほど間を開けて次章が始まる予定です。
一応次章が最終章の予定ですがもしかしたら執筆している手が暴走してもう一章か番外編が続くかもしれません。
そこはまぁ暴走したんだなと暖かい目で見てあげてください。
これからもどうか拙い作品ですがよろしくお願いします。




