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年若い少女


 「結局そのまま寝てないと、オートマトンだからといって自分の身体を蔑ろにする行為はやめた方がいいと思うよ?」


 「うん…」


 結局そのままぼんやりと屋外にて一睡もせずに夜を過ごしたクティへと目覚めのコーヒーを手にしたジェイクが近くへと座った。


 「ずいぶんと落ち込んでるね、あぁそうだ、この先元々戦闘がすごい上手いとも言えない僕はここでリタイアだと思う」


 「うん…」


 「だから僕は彼らの道案内としてこれから行動するつもりで…って聞いてるかい?」


 一向に顔を下に向けたまま上げず同じトーンで曖昧な返事を返すクティにジェイクは眉を顰めた。


 「うん…」


 「…んなの、アンタらしくない」


 再度曖昧な返答が返ってきたことにロイドはいつものひょうきんな口調は身を顰め棘の少しうかがえる口調へと自然と変化していた。

 そしてクティはジェイクの口調の変化を感じ取ったのか僅かに顔を上げた。


 「私…らしくない…」


 「あぁ、アンタらしくない、アンタは…隊長はもっと自信満々で僕らを導いてくれて、決して何があっても諦めない人のはずだった、でも今のアンタは見る影もないほど」


 「私は私だよ、ファクティというただのオートマトン、あの男の強さなんてもう…」


 「…っ!」


 ジェイクの言葉を遮りそう口にしたクティはまるで死人が喋っているとジェイクは錯覚した。

 それほどまでにクティの顔には絶望した表情が貼り付けられていた。


 クティの言ったあの男、おそらくロイドの事であろう事は容易に想像できたジェイクは唇をきつく結んだ。

 ジェイクだって薄々理解している、目の前にいるクティという存在はロイドではない事を。

 それだとしてもロイドから産まれたその存在はジェイクにとって頼りになる隊長だとクティと過ごした時を経てそう思っていた。


 でも、今目の前にいる存在はまるでただの絶望した年若い少女でしか無くてジェイクはどうする事も出来ない事を悟った。


 「ねぇジェイク、私はどうすればよかったのかな」


 「どう、すれば…」


 「彼女に、出会わなかったらよかったのかな、だとしたらこの胸の痛みはなかったのかもしれないよね…どれだけ欲しても待ってるのは悲しみでそれでも足掻かなきゃいけないのは辛くて…頑張っていたらいつの間にか道がもう無くて…」


 「クティ…」


 「知るのが怖いの、真実を受け止めるのが辛いの、彼女の死が悲しいの…別れを告げるのが寂しいの…」


 クティの目元にはうっすらと朝日に照らされる涙が浮かんでいた。

 そんなクティへとジェイクはジェイクなりの持論をぶつける。

 それしか今のジェイクには出来ないのだから。


 「アンタが隊長じゃないのは理解出来た、でもワイズエッジホテルの仲間のアンタには諦めて欲しくない、それがたとえどんな難題だろうがそれだけはダメなんだ」


 そして一呼吸挟んでジェイクは言い放つ。


 「だって僕達はそうやって生き残ってきたから、僕達なりのこの世界の最適解をみすみす手放すような真似はしないでほしい」


 なんとかはぐれた仲間と合流しようとしてほぼ永遠に確保出来る食料施設を見つけた者がいる。

 ゾンビに噛まれその箇所を麻酔なしで切断して生き延びた者がいる。

 ゾンビの大群に巻き込まれて生き延びた医療知識を持った者がいる。

 しんがりを務め生還不可能な絶体絶命から生き延びた者がいる。

 死してなおオートマトンへと身体を変え生き延びた者がいる。

 

 ジェイクの言った通り最後まで諦めなかった結果生き残ってきた者たちがいる。


 「僕達はそうやって生き延びてきた、決して最後まで諦めないと言う断固たる意志のもとに」


 「あきらめない…」


 「生き残るっていう目的の為に頑として諦めない、それが僕らだ、だからクティも目的を諦めるのだけはやめてくれ…死んでいった奴らが報われない…」


 諦めたなんていざ仲間の元へと行った時なんて顔を見せればいいのかと。

 そして当たって砕けろとは言わない、できる範囲でどれだけ近づけるかが大事だとジェイクはクティへと告げた。


 「そんなのわかってる、でも方法が無いのよ!?こんな壊れかけの身体に貧弱な武装じゃああの先へなんて行けるわけがない!もう諦めるしか…」


 「お、落ち着いてクティ」


 「あいつらが!あいつらが!!」


 そう叫びクティは愛銃を取り出しここから一番近い敵オートマトンの野営地へと銃弾を連続して放つ。

 距離もあり当たるはずもなく見当違いな方向へと銃弾が飛んでいくもののクティは気にもせず乱射を続けた。


 数秒後マガジン内の銃弾を全て撃ち切ったのか辺りにはトリガーを何度も引く小さな音が響いた。


 「諦めたくないわよ…でもどうすればいいのかわからないの…」


 クティは愛銃を力なく下げそう呟いたのだった。

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