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セクハラオヤジ


 「ふー…いや久しぶりに笑い転げたな…」


 「それはなによりですよ」


 拗ねた様子のクティがどうにでもなれといった口調で返答した。


 「そう言えばよ、じょ…ロイドおめぇ」


 「クティ」


 嬢ちゃん呼びもロイド呼びもお気に召さなかったのか今の名前で呼べと自身の名前を再度名乗った。


 「ああわりい、クティおめぇもう一つ人格というか…あるんじゃねぇか?」


 「あー…オートマトンよ、いいえ、ちがうわね、変態オートマトンね…それとなんでわかったの?」


 変態と言い直しつつ何かAT05G3がヘマを犯したのかと首を傾げるクティ。


 「へ、変態か…いや今の動作とか見てると昨晩とは断然違うからな、まるで別人だぞ?ちなみに今の方が少女っぽい」


 「え…そうなの!?」


 「あぁ、元はともかく男言葉に憧れて無理して使ってる幼な子って感じだ、昨晩のあれは殺戮人形だな」


 「そ、そんな…」


 『殺戮人形…否定は出来ませんが些か言い方が…棘をかんじますね…』


 クティは少女型オートマトンより元男の自分が女の子ぽいと言われて衝撃を受けた。

 AT05G3も殺戮人形と言われて自身は愛くるしさもあるはずなのにとクティを汚された気がして少し落ち込んだ。


 「どこが!具体的にどこがそうなの!?」


 衝撃からなんとか立ち上がったクティは俺は男だったはずだと頭の中を混乱させながら珈琲屋へと声を荒げながら掴みかかった。


 「い、いや、なんていうか幼さを感じるのか?こうふわっとした感じに少女というか子供というか…そう思ったくらいだ」


 『そうですそうです!クティはもう雰囲気が少女なのですよ!具体的には脳みそ単純で気持ちがすぐ表情に出て何に対しても首を突っ込む…あれ、これだとただのバカみたいな…可愛ければ問題ないですね!』


 ただでさえAT05G3より少女だと言われて驚愕し、気落ちしていたクティは、追い討ちとばかりに共感者を得て興奮したAT05G3から怒涛の通信が垂れ流されてきて顔を歪ませた。


 「あのね、最近の悩みはなんとかして変態を頭の中から追い出したいの」


 「そこまでなのか?」


 「うん…例えるなら知り合いがストーカーになったみたいな、そんな感じ」


 「それは、ゾンビにならない特権を得たかわりのデバフってわけだ…まぁ頑張れや」


 俺にはどうする事も出来ないと珈琲屋は判断しすぐさま身を引いた、関わってとばっちりをくらうのはゴメンだからだった。




 そして放置しても関わっても変態なAT05G3である、先程の殺戮人形のくだりはもうどこかへ消えて頭の中はクティ一色に染まってきていた。


 『変態…っふぅ…久しぶりの罵倒ありがとうございます…次またお触りできる時は来ないのでしょうか…収まりきらないこの感情に身を任せてクティの恥ずかしい写真集を世の中にばらま』


 『やめて!?そんなのいつ撮ったのさ!?』


 言い返した途端に視界いっぱいに埋め尽くされた自身の大量の画像が表示されクティは少し恐怖し身体を震わせた。


 汗で服がスケスケなクティ、雨でピッタリと肌に服が張り付いたクティ、リリアと抱き合って寝ているクティ、体力の限界を迎えて少し色っぽいクティ、その他にもいつ撮ったんだと言わんばかりの盗撮の数々が視界を埋め尽くしていた。


 「どうした?」


 「ううん…盗撮なのかな、一応許可しちゃった私が悪いけど今私の視界いっぱいに自分の画像が…」


 「うへぇ、数年前なら犯罪者だな、いや許可ありならいいのか?」


  『うぇっへっへ…このアングル最高ですね…』


 「多分アウトかな…治安維持部隊に突き出したらデータ確認後即お縄ですよまったくこのセクハラオヤジが」


 汚い笑い声をあげながらクティのスカート下からスパッツを盗撮するAT05G3へと冷たい視線もとい意識を送った。


 「オヤジって事は男性型か?」


 「ううん、オヤジは暗喩、正確に言うならばまるでセクハラオヤジみたいな少女型オートマトンね…」


 「厄介な仲間だな…でも大切なんだろう?話してる時笑顔が抑えられてないからすぐわかる」


 「いや…なんか他者から言われるとやっぱ恥ずかしいよ?あ、それと大切かどうかなんて以上に一番信頼置いてる…っと?」


 そして笑顔を浮かべたクティは物陰からボールが飛び込んできたのが視界の隅に映った。

 クティは金網を超えてボールが眼下に見えるシティへと行く前にバウンドしているボールをキャッチした。


 「おねーさん!こっちこっち!ボールぱす!」


 「違う!こっちのボールだよ!線超えてる!」


 クティがコーヒーショップの角から表の駐車場エリアを覗くとそこには子供達がドッジボールで遊んでおりどうやらどっちのボールかと争っているようだった。

 そしてコートと思わしき白線が引かれた場所の中央の線を目測で伸ばして行く。

 すると今立っている位置がちょうど真ん中になっている事に気がついたクティはどうしたものかとボールを抱えた。


 「およそ数センチですがあちら側のボールのようですよ?」


 そんなクティへと一緒に参加していたマイヤーは相手チームを指差す。

 信頼されているのか、同じチームの子供達は多少の文句を漏らしたもののすんなりと元の場所へと戻っていった。


 ありがとうと感謝の言葉をマイヤーへと返しながらボールを投げるとマイヤーの口元を見る限りどういたしましてと言っていたが子供達がまた騒ぎ始めた為聞き取る事は出来なかった。


 そのままぼんやりと子供達と遊ぶマイヤーをぼんやりと眺めていると珈琲屋が隣に来て口を開いた。


 「怪我人も充分回復してる、喜んで先程言っていた工場へと向かう事にするさ」


 「うん、あそこはもう今の私たちだけじゃ使いきれないからさ、メンテナンスもしっかりやればしばらくは安泰だと思う」


 「誠に感謝する、この恩は死ぬまで忘れんよ」


 「かしこまらなくていいって、それに防衛戦力が必要なら言って?信頼できるツテがあるから」


 「ありがとうな…」


 視線の先では未だに子供達によるドッジボールが世界が変わってからほぼ見かけることのない賑わいを見せていた。

 

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