身バレ
「それでどうしたんだですか?」
「ストレートにそれ聞くか?普通」
スポットされた2人の話までし終え口をつぐんだ珈琲屋へとなかなか続きを話し始めない事に痺れを切らしクティはジュースを一口飲み早くしろとせかした。
「いや、まぁ結論から言うと撃ったんだがな…」
「おぉどっちも!」
「そうだ!つかなんで嬢ちゃんはそんなワクワクしてるんだよ!?」
「お酒が回ってきてるのです、そのせいで気分が高まってきて」
立ち上がったクティはジュースを片手にその場でくるくると回転し始めた。
ドクターコートをひらめかせたクティをAT05G3が激写し珈琲屋はつい先程までの悲壮さはもう顔には無く呆れた表情をしていた。
「それ酒じゃないからな、ただの備蓄品によくある味付きの水だ、ジュースとも言う、つかそもそもオートマトンだろ嬢ちゃん」
「そうです、でも酔いたい気分の時だってあるでしょう?」
「例えば?」
「そう、例えば娘が実は私の事を本当の母親では無いと知っていた時とかには特に、まぁそれでも慕ってくれてるのならいいのですけれどもね?ングッングっ…プハァー!」
クティは不満顔を浮かばせた後、私は気にしてませんよと言いたげな表情を浮かべジュースをラッパ飲みした。
完全に拗ねていた、大好きな娘のリリアにとって自分が一番じゃ無いかもしれないという考えが頭の中に渦巻き不満たらたらだった。
「荒れてんなぁ…」
「荒れてない!くそぅ…珈琲屋がどーてーでオートマトンを溺愛する変態だってことしか理解できなかったもんね!みんなに伝えてくる!」
「おいまて!誤解を招く様な言い方はよせ!?って力強いな!?」
クティは珈琲屋を励ますという当初の予定を忘れて偏見の混じった話を憂さ晴らしの意味を込めて言いふらしてやろうと走り出そうとしたが珈琲屋に首根っこを掴まれた。
珈琲屋に止められていなかったら少女を超えてクソガキへとジョブチェンジを果たすところだった為それを望まないAT05G3は慌ててクティの力を数段階下げた。
『クティ?元気なのはいい事ですが人様に迷惑をかけては行けませんよ?』
『だって!だって!』
『だっても何もありません、それと隠し持っていたお酒とジュースについてまた後で話しましょう?』
『うぅ…』
30間近のオッサンとは思えない叱られた子供のような会話をAT05G3と繰り広げたクティは力なく項垂れた。
ドクを救出する際、クティは少しでも美味しいものをとAT05G3が身体からいなくなっていた為好機と見て密かに身体に忍ばせたのだった。
脳みそが年齢退行していたクティは普通にその秘蔵の品をAT05G3のみている前で出して楽しんでいた事に言われてようやく気がついたのだった。
「で、珈琲屋さんは何を悩んでその話を私にしたんですか?」
落ち込んでたクティはジュースを飲み干しクッキーをひとかじりして落ち着いたのか真面目な表情を珈琲屋へと向けた。
「何を悩んで、か…悩むってより後悔だな、あの時化け物と同じように狂ったカシュリーを撃ち抜いた時スコープ越しに一瞬笑みを浮かべたんだ、それがずっと…」
項垂れた珈琲屋が数刻前、銃を突きつけてきた威圧感の凄まじい人物とは同一人物とはクティには思えなかった。
後悔と懺悔、悔しさに自身の無力さを大きく感じてしまっている1人の人間がいた。
この世界では少なくない、どこにだってある光景だった。
でもクティは娘と言う大事な存在を知ったばかりであって、もしリリアがと想像しただけで心が痛んだ。
「ねぇ、これはさ私の、ううん、オレの体験談からの勝手な推測なんだけど」
「体験談…?」
「幻覚とか幻聴なのかもしれない、全てが想像上のものでしかないのかもしれないの、でも生きてる」
最愛の諜報員の彼女を朧げに心に浮かべながらクティは中央政府をじっと見つめた。
「だから行かなきゃいけない、絶対に成し遂げなきゃいけないって、確実に後悔する…でも、それでも今は後悔するよりもできる事をしなきゃって、そう思ってる」
「強いな、嬢ちゃんは…」
「弱いよ、すごく弱い、でもロイドとしての役割がまだ残ってる、だからそれだけは成し遂げないとってがむしゃらになってるだけ」
「なるほどな…」
しばらく珈琲屋とクティは何も言葉を発する事は無くどこからかゾンビのうめき声が聞こえてくる以外は静かなものだった。
「そう言えば、ロイドつったよな、懐かしい名前だ」
「え゛」
そして微妙な雰囲気になってしまった場をいい加減に戻そうと珈琲屋が先程の会話で記憶にある名前が出てきていた為クティへと話を投げかけた。
まさか自身の事を知ってるとは思えずクティは変な声をあげて硬直した。
「いやな、昔外壁地上付近の敵味方入り混じる乱戦で暴れている奴がいてな、目立ってたから覚えているんだ」
「地上…乱戦…はっ!?ま、まさかあんたあの手柄横取りしまくっていったクソ狙撃手なのね!?」
珈琲屋の言葉を聞いた瞬間かつて敵の戦闘人形(オートマトン以前に使われていた人形兵器)を狩っていた時に後ろから飛んでくる銃弾が狙っていた標的を打ち砕いていく光景がクティの脳裏に蘇った。
戦闘人形は倒した分だけ金が貰えるシステムだった為当時外輪部隊といえどそこまで実入りはよくなかったクティは獲物が目の前で倒されていくのは苦痛でしかなかったのだ。
そしてその因縁の相手がまさに目の前にいる事に身体が勝手に動いた。
ゴミ箱を蹴り素早く珈琲屋から距離を取ったクティは衝撃の事実に驚きに顔を染め、汚い言葉使いがつい漏れた。
ついでに前世情報も漏れた。
同じく驚愕に顔を染めた珈琲屋だったがじわじわとクティの言った言葉を理解し始めたのかにやけ始めクティへと近寄ってきて頭を撫で始めた。
『完全に知り合いにバレましたね、それもあまり親しくないむしろ喧嘩相手に』
『うるさいよ!?』
「嬢ちゃん…」
「なによ!?」
「趣味なのか…?」
「ちがいます!仕方なくです!」
「男が母親になったり、言葉使いまでかわっちまったり…人はどう変わるかわからないな…まぁ頑張って生きろよ…」
「ちがうんですってぇぇぇえ!!」
その日のゾンビの襲撃数はクティの叫びに反応していたのか前日より少しだけ多かったとか。




