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失われた意思


 珈琲屋と今は名乗っている男が荒れたシティを中央政府近くの研究施設のあるビルの屋上から眺めていた。

 コーヒーショップの店長の前は外輪部隊にて狙撃の任務をこなしていおりそのツテで騒ぎが起き始めた頃、手を貸してくれと古巣に頼まれたのだ。

 珈琲屋は背中に背負った狙撃銃を手に取り上部に取り付けられたスコープを覗いた。


 狙撃銃は弾道の落下や風の影響を受けないエネルギー式の物ではなく今時珍しい実弾のものを珈琲屋は好んでいた。


 「世界規模のようですね、この事態は、娘さんは無事なんですか?」


 「ルーダ…お前本気で言ってるのか?無事に決まっている、俺の娘だからな」


 「それもそうですね」


 確かにこんな事態物ともしないだろうと珈琲屋の娘を知っているルーダと呼ばれた男は肩をすくめた。


 「おすすめのポイントは?」


 「南西の大通りに武装しなんとか生き残った住民と治安維持部隊のグループがあります、今およそ1000近くの死人達がそちらへ集まっています、距離は役800メートル」


 双眼鏡を使い狙撃できるポイントを珈琲屋へと伝えたルーダへと珈琲屋はため息をついた。


 「助けられないとわかっててそれ言うかい、あの死人の量じゃ無理だ…でも、まぁやってはみるさ」


 スコープに映った死の暴徒の大群に舌打ちをしながら弾倉を別の貫通力の高い特別な物に取り替えると狙いを定めた。


 直後発砲音と共に弾丸が銃口から飛び出しスコープに映っていた1人の軍のヘルメットを被った死人の頭をヘルメットごと吹き飛ばした。


 そしてその後も次々に打ち出された弾丸は一度も外れることなく手持ちの火器では撃ち抜くことの困難なヘルメットを被った死人を撃ち殺していった。



 「さすがですね、そろそろ俺も参戦しなくては」


 珈琲屋へと関心の目をむけたルーダは珈琲屋が撃っている間複数人で組み立てていたデカブツを軽く叩いて据え置かれたサイトを覗き込んだ。


 「ソイツを貸してもらえたって事は大分緊急事態なんだろうな…」


 ルーダを見向きもせずに狙撃に集中しながら珈琲屋はボヤいた。


 ルーダの構える、というより座るゴテゴテとした細長い物は小型の自動車程度のやや細長い直方体をしていた。

 最近開発された物でシティの外壁への設置が予定されていたエネルギーのビームで薙ぎ払うタイプの兵器だった。

 未だ試作段階でバッテリーは凄まじい勢いで消費していく為長くは使えないがスコープ越しに珈琲屋が見ている大群をいくらか減らす事は出来るだろうとルーダはこのビルの職員をこき使い設置をしたのだ。


 「そろそろ行きます、撃つと視界が光一面になり標的が見えないのでスポッターは頼みます」


 「はいよ、ちょうど徹甲弾が尽きた所だ」


 「それはなんともジャストタイミングでも少しまってクシャミが…くしっ…行きます」


 ルーダの少し気の抜けた適当な掛け声と共に轟音がビルの屋上に響き直後眩い光に包まれた。


 『右だ!ズレてる!』


 多少離れたとはいえ伝わってくる熱に耐えながら珈琲屋はスコープに映る着弾点を通信機でルーダへと送る。


 『行きすぎだ!生存者に当たっちまう!!左下へ2度修正しろ!』


 『無茶言わないでくださいよ!?手動操作しかない試作品でそんな精密な動作が出来るとでも!?』


 『じゃあもう左下に少しづつ動かしながら薙ぎ払え!それでいい!』


 『ビルを薙ぎ倒す事になりますが!?』


 ビルに生存者が居るかもしれない可能性を捨てきれなかったルーダは焦りを浮かべながらそうしたく無いと願った。

 だとしても、どれだけ願ってもルーダもそうするしか無い事を理解してしまっていた為悔しさに顔を歪めた。


 『そうした方が生存者が多くなるならするしかねぇだろ!?それにあのグループが全滅したらもう近くにまとまったグループねぇだろうが!』


 『あぁもうわかりましたよ!』


 半ばやけくそに曲げられた軌道により大群の最も集まっていた場所をビルごと薙ぎ払われ一瞬で最初の半数以下まで死人の数は激減した。


 一瞬遅れて大量の巻き込まれたビルが倒壊していく轟音が届いてきた為ビルの屋上に来ていた生存者達に動揺が走った。


 その動揺も冷めきらぬうちにデカブツはエネルギーが切れたのか機能を停止して放熱を開始した。

 舞い上がる煮えたぎるほど熱い蒸気が屋上の半分程を埋め尽くし近くにいた者たちへと牙を向いたのだ。



 『ルーダ!ルーダ!!クソ!ルーーダー!』



 それは間近にいたルーダも同じで、珈琲屋がいくら通信機越しに問いかけても返事が返ってくる事はなかった…






 「クソが!イカれたこのポンコツを作った学者共まで死んじまったら俺は誰に怒りをぶつければいいんだ!?」


 先程スコープ越しに見えたグループの周りの死人をひたすら余った銃弾で狙撃を繰り返して鬱憤を晴らそうにも戦友を失った時の理不尽さと辛さは全く晴れる事はなかった。


 そして戦友ルーダが用意してくれていた通常弾は撃ち切り残りは徹甲弾が残り数発となった時だった。





 グループへとどうしてか襲いかかる1人のオートマトンがスコープに映ったのは。





 

 そのオートマトンは珈琲屋にはどれだけ距離が離れていても誰だかすぐにわかった。


 外輪部隊で珈琲屋が娘の様に思っていた、そのオートマトンも珈琲屋の事を父親のように慕っていた。


 婚期を逃した珈琲屋にとってそのオートマトンは人生で最初で最後の娘だったのだ。

 

 


 その娘が、スコープの先で狂ってしまっていた。





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