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姉妹

お待たせしました。


 夕暮れに染まるハイウェイにて、少女がさらに小さい少女へと銃の取り扱い方をレクチャーすると言うかなり謎な空間が広がっていた。

 背の高い方は言わずもがな超絶美少女クティちゃんである、中身にオッサンは多分いない。

 そしてもう1人は誰かと言うと十歳の女の子で名前はリリアちゃん、ちなみにこの情報はAT05G3のスキャンによって判明した。

 リリアはベタベタとつけられた装甲が邪魔だと全て取り払っており、長い灰色の髪が風に揺れていた。


 「そう、握るのはグリップの出来るだけ上、もう片方の手はこう」


 「こう…かな…」


 「そうよ!偉いわね!じゃあ次はそうね…あそこにゾンビがいるでしょう?セイフティレバーを下げて撃ってみて、安心して、電子頭脳がサポートしてくれるわ」


 「う、うん」


 クティが15メートル程先にいるゾンビを指さすとリリアは真剣な表情を浮かべ銃を全面へと構えた。


 「うわわ…ままぁ…」


 そして数秒後一発の実弾の拳銃の軽い銃声が辺りに響き渡りついでにリリアの情けない声も響いた。


 リリアの撃った銃弾はゾンビには命中せずに道端にあった戦車の側面を反射して前方にて見張りをしていたジェイクの足元へと着弾していた。


 「うわぁ!?」

 

 「あちゃあ…ねぇジェイク、あなたたしか拳銃持ってたわよね?貸してちょうだい!私の愛銃癖が強すぎるわ!」


 「まったく危ないなぁ…もう少し人間の僕を労ってくれよ、というか癖が強いと言うより整備していないだけだろう?まぁはいこれ、弾少ないからあんまり練習に使わないでくれよ?」


 ジェイクが腰のホルスターから拳銃を取り出し投げ飛ばしたのをうまくクティはキャッチした。


 「最近気がついたのよ、罵らなければジェイクは興奮しない基本的にいいやつだって」


 「これはこれでお預けされている感じが好きなんだけどね、いざその時になれば溜まった感情が一気に爆破するから」


 変態発言に反射的にゴミを見るかのような表情を浮かべたクティはしまったと慌ててそっぽを向いた。

 クティの耳にジェイクが歓喜の声をあげるのが聞こえてきた為クティは盛大にため息をついたのだった。


 「ジェイクおじさんはどうしちゃったの?」


 「リリアは見なくていいのよ、あれは世界のゴミだからね、それと…これで試してみて」


 リリアは渡された銃とジェイクを交互に見て少し首を傾げた。


 「ジェイクおじさんはゴミ…」


 「はぁあん!!幼女からのゴミ認定いただきましたぁあ!」


 「ほんとジェイクあんたうるさいわ!」


 「あひん…」


 ジェイクの頭へとクティはそこそこ重いチョップをお見舞いした。

 流石に力を制限されているとはいえオートマトンのチョップは答えたらしくジェイクは崩れ落ちた。


 「えと、うつよ?」


 「どうぞ!目標は変わらずあのゾンビね!」


 「えぃっ」


 リリアの可愛い掛け声、鳴り響く銃声、どこにも当たらず空へと飛んでいく銃弾。



 『どうやらリリアの電子頭脳ですが射撃補正プログラムが完全に抜け落ちているようですね、ところでいつ私はクティと触れ合えるのでしょうか』


 身体の主導権をリリアに取られクティとのボディタッチができなくなったAT05G3は若干拗ねていた。


 『インストール可能かしら』


 『えぇ、非常に悔しいですが手を繋いでくれればクティの戦闘技能を簡易化した物を泥棒猫にインストール可能です』


 『じゃあそれお願い、あと元々あの身体はあの子の物だったからどっちかというと泥棒猫はエーティの方よ』


 『ぐぬぬっ私のエデンが…』


 「エデンってなんなのよ…それよりそろそろ今日は一旦休も、もう暗くなってきちゃったからさ」


 クティが空を仰ぐと夕焼けは地平線の彼方へとちょうど沈んだ所であり空はもう薄暗くなってしまっていた。


 『エーティ、良さげな宿はありそう?』


 『ありますよ、左斜め前方にキャンピングカーです、持ち主は車を捨ててどこかへ行ってしまったのかゾンビはいません』


 「ありがと、じゃリリア!あそこのキャンピングカーまで競走よ!私に勝てたら秘蔵のクッキーをあげるわ!」


 「クッキー!?」


 「あ!まちなさいよ!早いわね!?」


 クティが身体のメンテナンスハッチから一枚の少し欠けたクッキーを取り出したのを見たリリアはヨダレを垂らしながらキャンピングカーへと猛ダッシュしていった。

 慌ててクティも追いかけるも出遅れた事に加えてそもそもAT05G3により力を制限されていたためキャンピングカーに遅れてついた頃には息も絶え絶えになってしまっていた。



 そんな2人をジェイクは余計な体力を消費しないように歩いて追いかけながら肩に乗せていた義眼を横目に口を開いた。


 「なんか…2人を見てると親子ってより姉妹って感じがするよ、エーティもそう思わないかい?」


 『そうですね、私にも妹がいましたから懐かしいものです、今はどうしてるか』

 

 「妹と言うと…あぁ、確かエーティは長女だったっけ、前に誰かから聞いた事があったかも」


 『えぇそうです、多分ロイドから聞いたのでしょう?ちなみに同型モデルの生産は私を含めて5体存在していました、その内2体は特に仲の良かったのです、おそらくあの子の母親は彼女達の誰かでしょうね』


 簡易変装プログラムはエーティ達のシリーズにのみ搭載された独自のプログラムであった。

 AT05G3の後に作成されたオートマトン達にはその機能は不必要とされ搭載していなかった。

 さらにAT05G3の前のオートマトンにはそもそもそんな機能を付ける余裕などなくつまるところあの顔を作れるのはオートマトンAT05G3とその妹の5体のみだった。


 「そうだったのか…」


 『えぇ、あの顔を可能とするオートマトンは私達のみですから、一応例外もありますが可能性はほとんどない物です』


 「いやすまない、なんか悪い事聞いちゃったみたいだ」


 『問題ないですよ、懐かしい記憶を思い出せただけで満足ですから」


 「そうか…あぁそれと少し何というか、言っておきたい事があってな、今言うのは少しまずいと言うか」


 この話はおしまいとジェイクは話題を切り替えようとして伝え忘れている事があったのを思い出したのだ。


 『それは…』


 「クティが寝てればエーティは活動出来るだろ?後でちょっと時間をくれ」


 『わかりました』


 いつにもなく真面目な表情をしたジェイクにAT05G3は真剣な声音で返事を返すのだった。

 

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