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慕われる消耗品


 『で、やっぱりメリア、今騒ぎを起こしているのは君の仲間らしいね』


 苦々しげな表情を浮かべたアメリーのコピーはなげやりに言葉を吐き捨てた。


 「絶対助けに来るってのはわかってたさね、どうだい今の気持ちは」


 『まさか心肺停止しているのにも関わらず復活してくるとはね、あの娘には驚かされたよ…と言うより今も驚かされてる、どうやってここを突き止めたのやら』


 「どうだいアタシのクティは、なかなかガッツのある子だろう?仲間思いで可愛くて、この手で果てるまで嬌声を鳴かせたくなるね」



 そして何か気が付いたのかアメリーのコピーは苦々しげな顔を引っ込めなにかを思案をし始めた。





 そうしてしばらく兵士が出入りしアメリーのコピーへと何か伝言をしていた状態が続くと、ようやく顔を上げ口を開いた。


 『あぁ、そうか、羨ましいね…』


 アメリーは少し悲しげな表情をしてボソリとほとんど聞こえない声で呟いた。

 アメリーの人間だった頃の感情パターンが訴えているのだ、とても同じ機械の意思を持つクティと呼ばれたオートマトンが羨ましくてしょうがないと。


 そして運良くマイクに拾われたその言葉にメリアは首を傾げた。



 『そこまでメリアがオートマトンに執着するなんてね、それにどうやら他の人からも慕われているらしいじゃないか、少し羨ましい物だよ』


 「へぇ…遠隔操作されたオートマトンとは考えられないさね?」


 なんとしてでも誤魔化さなければと苦しい言い訳をメリアはするもののアメリーは首を振って否定した。


 『移動距離や経過時間から考えるにあまり考えられないね、それはメリア、君も開発者なら理解しているはずだけれども?』


 メリアは苦々しげな表情を浮かべ静かに一度頷いた。


 「そうさね…上に報告するつもりだろう?アンタがトップな筈がないからね」


 『どこに消耗品で更にコピー品に長を務めさせる組織がいると?笑えない冗談だね』


 そんなアホみたいな事はありえない。

 アメリーは手をひらひらと遊ばせ苦笑いを浮かべた。


 人間の感情を客観的にAIと言う視点から観察し出したのだ。

 彼ら人間と言うのは人間の行動をベースにしたAIを積んだ多目的作業用人形や自立思考回路を持ち着実に経験を積んでいけるオートマトンに劣っている事を自覚していると。


 だからこそほとんどの人物は人間としてのプライドや、危険性を考慮してコミュニティの長なんて物はやらせはしないのだ。


 アメリーのコピーの立場が軍の階級にすら含まれずに軍需物資として登録されているあたりから簡単にうかがえた。



 アメリーのコピーが意識をメリアへと戻すとメリアは拘束されていた手足をさすりながらこちらを睨みつけていた。


 心当たりの無かったアメリーのコピーはどうしたものかと近くにいた研究員へと視線を合わせるも彼はお手上げだと手を肩あたりまで上げて何も答えてくれなかった。


 『睨んでどうしたんだいったい』


 「そうさね…何やらお前さんらはオートマトンを集めているようじゃないか、戦力としてだか他の理由だか知らないけれどもクティへ何かしたらタダじゃおかないさね」


 『いや、するわけがないよ、私からすればあのオートマトンが存在しているだけで…うん、非常に満足なんだ』


 「捕獲する気はないさね?」


 『うん、それにこれは上には報告はしない』


 「それはまたなんでだい?」




 『いやもう用が済んだからね、それにメリア、君も必要ないのさ、全部自己解決したよ、それと…ちょっと待ってくれよ?えーとたしかこうすれば…』


 「っ!?…いいのかいこれは?」


 何やら上機嫌になったアメリーが手元のタブレットを操作し始めて数秒後、メリアの足や手に付いていた枷は音を立てて床へと落下した為メリアは驚愕に顔を染めた。

 


 『報告すれば、私個人の夢の達成への道からひどく外れてしまうからね、私はAIで成長をする事はない、けれども人間の頃の夢を途絶えさせるわけにはいかないのさ』



 「アンタの夢なんてろくでもなさそうだね、それにどうせ聞いても話してくれなさそうだ」


 「誰であろうとも言えないね」


 「セーフハウス近くの巨木を育てている理由も、教えてくれないさね?」


 『そうだね…それは教えなくても探せば分かると思うね』


 「それはいったいどう言う事さね」


 『そろそろお迎えが来たようだよ』


 手に持ったデバイスの画面をアメリーのコピーから向けられたメリアはその画面に表示された真っ赤な画面を見て状況を理解した。


 「…クティさね、本当に出来た子さね」


 そして呟いたメリアの耳に全てのドアがハッキングにより空いていく音が施設内に響き渡ってきて閉じ込められていた部屋からメリアは部屋外へと歩き出した。


 『次会った時は是非クティとやらを紹介してくれよ、じっくり話がしたいからね…それとそのドアを潜って突き当たりを右へ行けば会える筈だ、またね』


 メリアは視界の隅で手を控えめに振るアメリーのコピーが映ったものの返事を返す事なくそのまま部屋をゆっくりと出ていった。

 


 


『あぁそれと君達ここでの会話は無かったことにしてもらうけれどもいいかな?』


 『我々は警備をしていただけですからね、それに報告義務はありません』


 『うんうん、もしかしたら誰かが通話データを消していっちゃうかもしれませんからね、なにせ今現在ハッキングされていますからね』


 その会話は部屋を出たメリアまで届きメリアは薄く笑みを浮かべて


 「安心しな、クティ程じゃないにせよアンタも充分慕われているよ…」


 と笑い声の微かに響く廊下へとその呟きは消えていった。

この作品でのちょっとした設定というかメモ


オートマトンの擬似人格を積んだ電子頭脳はいわゆる色々な体験した出来事を糧にほとんどゼロの状態から成長していき、理論上永遠と成長が可能となっています。


それと違いAI、例えるとアメリーのコピーやATαなどのAIは成長はせず、決められた行動をインプットされた情報の範囲内で行動して考えることの出来る存在で成長する事はありません。



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