正面衝突
今週は水木金土の夜1時から3時に投稿予定です。
「で、君たちは結局誰なんだい?僕の事を知ってるようだけど僕の記憶では一度もあった事はなさそうでね、それと一体何をしているのかな…」
クティがAT05G3の魔の手から逃れようと羞恥心をかけた鬼ごっこをしているとジェイクがようやく正気に戻ったのかアサルトライフルを杖代わりに立ち上がっていた。
逃げるクティ、手をワキワキと動かしながら追いかける巨体のAT05G3、唖然とするジェイクというなんとも異常な光景が繰り広げられていた。
「今はそれどうでもいいからジェイク!この変態を止めて!」
「ふふふ…逃げないでくださいよクティ!ちょっと抱きしめるだけですから!あわよくばキスしたいとか服を剥きたいとか最終的には…ふへへ…そんな事は考えていませんから!」
「考えてるじゃん!考えてるじゃんそれ!?ぎゃーー!」
AT05G3は初めてクティと身体同士のスキンシップが出来るからと枷が外れてしまっていた。
「クティ、この施設内では念のため盗聴の恐れを考えてオートマトンだという事ははぐらかしてくださいね」
「おっけー、でもどうジェイクに説明すれば…」
「それは私に任せてください!」
「不安しかないよ…」
鬼ごっこはAT05G3の勝利となり捕獲されたクティとAT05G3はこそこそと話し合いを始めた為ジェイクは本当にコイツらは誰なんだと頭を抱えた。
アホみたいな二人に見覚えは無いしそもそも片方は少し前に胸糞悪い実験で完成した理性の無いオートマトンだったはずなのだ。
それにもう片方の片腕隻眼で更に年若い少女なんて言う身体的不利な状況にも関わらず十人以上の兵士を圧倒した腕前なんて物はそうそうお目にかかれない物だった。
撃ち放った銃弾は一発も外さず、的確な判断で迅速に敵を処理する姿はまるで最新の殺戮人形のようだった。
思い出せば思い出すほどぼんやりとした意識の中見たあの殺戮に背筋が凍るものを感じるのだ。
「そうですね…貴方が私の何かと、うん、そうですね」
そして恐怖からか自然とジェイクは支えとして持っていたアサルトライフルを胸の前へと持ってきてグリップを強く握り込んだ。
ジェイクは身構えた、もしかしたらこの後気まぐれに殺されるのかもとふと思い立ちアサルトライフルの残弾は大丈夫だったかなと、もし何かあったら対処出来るのかと冷や汗が止まらなかった。
しかし
「そうですね…私達が誰かと言えば…あなたの弟子です!やっと会えました!!」
「師匠!?いや本当にだれだよ!?勘違いしてねぇか!?」
予想の遥か斜め上からの返答にジェイクはつい大声でツッコミを入れてしまった。
まずったかとすぐに我に返ったジェイクの前へとAT05G3はゆっくりと近づいていきジェイクの目の前まで来ると跪いた。
「いえ、勘違いしていませんよ、ドMの王にして変態の頂点に君臨する変態オブザ変態、お聞きした事を今更になって理解した私めをどうかお許しくださいませ…」
「バカじゃん!バカじゃん!?私は違うからね!?」
クティがAT05G3の頭をアサルトライフルの銃口付近を強く握りしめて力一杯AT05G3の頭へとフルスイングした音が響き渡った。
倒れ込むAT05G3、口をあんぐりと開けて驚くジェイク、変態と同列として紹介され羞恥に顔を赤くするクティ、やっぱり今日もAT05G3の変態へ転身する速度は最高速度を叩き出していた。
それから数分後、クティ達はジェイクへと接触によるナノチップを使った有線通信にて事情を説明し、ドクのポケットの義眼の追跡を再開していた。
「まさかの事実で空いた口が塞がらないよ、貴方に少女化願望があったとはね」
「ないから!これは仕方なくなの!それと知りたくも無い新しい扉なんて聞きたく無い!変態!」
「あぁ最高な罵倒だよ…心が浄化されるね…」
「そうですね…クティの罵倒は万能薬ですからね…」
絶好調な二人にクティはげんなりとして視界に表示されているマップへと意識を向けた。
変態が二人に増えたのだ、ドクを助ければ三人になるのを思い出し割と本気で一瞬助け出すのをやめようかと考え出した。
しかし大事な仲間なのだ、数いる仲間の中からピンポイントで変態達としか再開出来ないのは絶対何か呪われていると独りごちた。
「で、いい加減これまずいんじゃ無いかなって」
「そうですね、ドクのいると思われる部屋、地形スキャンと案内図によると倉庫となっていますからね、これは聞き込みが必要となってきそうな予感です」
「こんなにアラーム鳴ってて銃弾が飛んできてるのに?捕虜なんて取る暇無いと思うけど」
「それが問題ですね」
「ちょ!そろそろ弾つきそうなんだけど!?」
呑気にクティとAT05G3が会話をしているものの割とピンチな状況になっていた。
前方にはなにやら遮蔽物が作られて機銃が火を吹きわらわらと兵士が倒しても倒しても襲ってくるのだ。
今の所AT05G3の乗っ取ったオートマトンが持っていたエネルギー駆動の軽機関銃と奪った装備や回収した罠で応戦出来ているものの割とピンチになっていた。
「そういえばジェイク、なんでここの兵士やってたの?」
「今そんな事話してる余裕が無いのが見てわかんないかな!?うはっ!」
頭のすぐ上を銃弾が通過していったジェイクは大慌てで撃つのをやめて物陰に隠れクティの頬を掴み横に引っ張った。
「いひゃいいひゃい、だっえきいなるじゃん!がんばれがんばれ変態のジェイク!」
「名前の前に変態ってつければ喜ぶってわけじゃないからね!?あぁもう後で話すから今は応戦してよ!?」
「残念なことにあと残ってる銃弾はこれが十三発と…あとはこれしかないのよ」
腰に刺した愛銃と消音器付き拳銃を指差してお手上げと言わんばかりに困った笑顔をクティは浮かべた。




