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偽装の代償

いつもより少し遅めの投稿です、すみません。


 「これは…貨物駅かな」


 『だとしてもなぜこのようなものがここにあるんでしょうか』


 クティ達は最近作られた物では無く少なくとも数十年はたっていそうな老化具合の貨物駅と思われる施設のホームを見つけた。


 ここへ来るまでだいぶ下り坂が続いた為どこかでまた登り始めると思っていたクティは線路がそこで途切れている事に少し汗をかいた。


 これ登る時大変なんじゃないのかな、と。


 エレベーターか荷物運搬用のゴンドラがあるはずと望みをかけクティは改めて辺りを見回した。



 「ずいぶんと使い込まれた形跡があるのに地図には載ってないね」


 『多分ドクの通路の様に秘密裏作られた物か、戦争初期に軍需品の輸送に使われていたとかですと記載されてない可能性もあります。基本的にそのマップは民間から寄せられたデータを元に作成していますからどうしても完全に正しいとも言えないのですよ』



 言われてクティは所々データが荒い箇所の理由に納得した。

 古いデータが混ざっていたりマップデータそれぞれ分担してつぎはぎに作っているのなら納得の精度だった。


 「そういえば政府主催でマップを作るにはあまりにも地下は入り込みすぎてて人材が足りなさすぎるって、誰かから聞いたことあったかも」


 『そうですね、正直言って何百年も前の地下の商店街が見つかったとかという事も聞くくらいですからね』


 「記録に残されてない地下都市とか少しわくわくするよ、この下にも未発見の街並みが残ってたりして」


 靴の底でトントンと足元を軽くクティは叩いて顔を綻ばせた。


 すかさずAT05G3がシャッターチャンスとばかりに写真を撮って自身のフォルダに大切に保管した。


 「エーティ?」


 『な、なんでしょう』


 まさか撮ったのがバレたかと焦り始めたAT05G3にクティの冷たい視線もとい冷たい感情が突き刺さった。


 「撮るなとは言わないけれどほどほどにしてちょうだい、それと寝顔はとらないでね、他はもう諦めるわ…」


 『ほんとですか!?なら今度中央政府近くの人口ビーチへ行きましょう!薄手の服に水がかかって下着が透けているのが最高とジェイクに言われた事があるの』


 「いかないから!ジェイクは後でしばいておか…だめだ喜んじゃう…」


 ドMがどれだけ厄介かと再確認させられたクティは頭が痛くなってきた。


 無視すれば興奮し罵れば興奮し叩いても興奮するジェイクの脅威に再開した時の事を考え戦慄したもののふとクティは名案を思いついてしまった。


 「逆の事をすれば嫌がるのかしら…」


 常に構って褒めて撫でれば嫌がるはずだと、なんていい事を思いついてしまったんだとクティは自然と笑顔が溢れてきた。


 『パシャッ』


 どこからかシャッター音が聞こえてきたがそれも気にならないくらい上機嫌だった。


 AT05G3だと完全なドMではなさそうな為喜びそうで使えないものの完全なるドMのジェイクになら効果は抜群だろうと簡単に予想できた。


 『パシャッ』


 いつのまにか足元もスキップをしており誰がみても上機嫌と言える様子だった。


 『パシャッパパパパパパシャッ』


 「ねぇエーティ何枚撮る気なの!?」


 AT05G3から何故かナノチップ経由で送られてくる旧世代のカメラのシャッター音の連打には流石に耐えきれなかったのかクティは声を荒らげた。

 


 『どうしましたクティ、そんなの保存できる最大枚数までに決まっています』


 「…っ!?もういいわよ!いくらでも撮りなさいよ!というかそれより今は私の写真を撮ってないでドクの追跡に力をいれてよ!」


 目の前には二つに分かれた道がありどちらへとドクが進んだのかクティには分からず立ち止まってしまった。



 『それくらいわかっていますよ、あの義眼は必ず取り戻さねばなりませんからね』


 「もうそれでいいわ…」



 マップへとクティが意識を戻すとドクが通ったルートに線が引かれマップの空白部分に道筋が現れ始め右へのルートだと判明した。



 「ありがとう」


 『いえいえ、これくらいパシャッ問題ないですよパシャッ』


 「ねぇその音って消せないの?何気にうるさいのだけど」


 先程から事あるごとにシャッター音が頭の中で鳴り響き音による脅威の判別が難しくなっていた。


 それに音だけでは無く写真を撮られているという羞恥心もありほとほと参っていた。



 『消せますよ、気分の問題です』


 「うるさいから消して」


 『わかりました、では盗撮モードへと変更します』


 「名前もう少しどうにかならなかったの!?」


 わざわざ盗撮なんて名前にしなくてもとクティは頭を抱えた。

 


 『ユーモアがあっていいでしょう?力作のネーミングです、それにクティのあんな事やこんな事を撮影するのでピッタリです』


 「そう…エーティが楽しいのならそれでいいわ…」




 それから数分後、マップに写るドクの場所を示す赤い点が上昇を始めたのを確認したAT05G3はクティへと声をかけた。


 『クティ、どうやらドクは地上へと進み始めたようですね』


 クティがマップに視線を向けるとある一点から垂直に上昇していく赤い点が確認出来てクティはげんなりとした。


 「これエレベーターだよね、使ったら絶対相手に追跡してるのがバレるよね…」


 『非常階段を探す他ありせんね、長さにしてそうですね…ざっと百二十階建てのビルを登り切る感じでしょうか』


 「体力が無限なのが救いなのかしら…」


 『何を言ってるんですか?ここから先は発見される恐れがあるため体力は少し体力のある十五歳の少女という設定で行きますよ、既にもう適用させるだけです』


 クティが息を呑む音が静まり返った地下の貨物駅に響いた。


 『はい、設定完了です、頑張ってくださいね』


 ちなみに発見される恐れがあるのは地下とは違い通路の入り口という危険のある可能性の地上に出てからだしそもそも体力を有限にする必要性もほとんど必要ない。


 ただAT05G3が疲れ果て人間擬態機能により汗だくになって服が透けているクティの事が見たいという邪念による理由が大半を占めている。


 ドキドキ波打ち際で下着透け!?♡作戦はダメだとクティに釘を刺された為変えの作戦を用意したのだ。


 これから起こる光景に夢を広げさせAT05G3は心が躍っていた。


 しかしそんな事を知らないし地下のここから発見される可能性もあるとAT05G3に言われそう思い込んだクティは絶望感に苛まれた顔をしていた。


 エレベーターの隣の扉を開けると地上まで続いているであろう螺旋階段が上へ上へと伸びていた。


 「その高さを…登るの…?」


 クティの絶望した呟きは見上げた暗闇へと消えていった。

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