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壁に向かって



 クティは廃止された地下鉄の線路の上を走りながら視界に映るマップの一点を見つめた。


 その見つめた先には赤い点が点滅を繰り返しながら移動していた。


 赤い点は中央政府の反対側へと進んでいった為ロイドの閉ざされた記憶の蓋は開くのが遅れてしまう。


 それでもクティは悩む事なくドクの方が優先順位が高いと結論づけ地下の線路の上を走り抜けていった。


 「ねぇエーティ、これ多分壁の外目指してないかな、荒野に出られると厄介なんだけど…」


 『荒野の脅威は以前よりも大幅に増していますから、そうそう荒野へと出る事はないと思われます』


 「そっか…というかやっぱりドクが攫われたのってオートマトン関係?」


 『おそらくそうでしょう、それ以外にドクを攫う理由もないですし、そもそも彼らはATシリーズの事をかぎまわっていましたから』


 「そういえばそうね、医療センターの彼らが言ってたしね、私がATだと知ったらあの軍はこの身体を何としてでも奪いに来そうね」


 『あまり人間離れした行動は彼らの前でしないでくださいよ?』


 「それくらいわかってるわよ…てなにあれ」


 ふと前方にマップから意識を戻したクティは走る速度を落として消音器内蔵型の拳銃を引き抜いた。


 ちなみに武装に関してだがAT05G3が仮死状態へと偽装する前に愛銃は部屋の物陰へと放り投げて置いた為今手元にある。


 そして武器はもう一つ、ドクがいたであろう部屋に落ちていた消音器内蔵型の拳銃のみとなっていた。


 クティが身に付けていたSMGE35やドクの持っていたアサルトライフルやエネルギー駆動の拳銃は彼らが持っていったのか部屋には残されてなかった。


 とはいえ今ある武器のどちらもそれぞれ少ない弾数しか残されておらず愛銃がマガジン内の十三発のみとなっている。

 ドクの消音器内蔵型の拳銃も五発のみとなっていて無駄に消費できない。


 ロイドは慎重にゆっくりと辺りに危険が無いか調べながら前方の箱型の大きな道を塞いでいるモノへと近づいていった。


 『どうやら廃棄された列車のようです、ずいぶんと劣化していますから気をつけてください』


 







 「よいしょっと、うん?…黒いシミ…それに爆発痕…レールを外れて塞いでいる列車…」


 全面の割れたガラス窓の縁に手をかけ列車内へとよじ登ったクティは辺りを見回してつぶやいた。


 『トラップを仕掛けるには最適な状況ですね』


 AT05G3の言葉に頷き警戒をさらに高めて進んでいくとやはりというべきか、肉眼では視認出来ないセンサーをクティは見つけた。


 AT05G3の高精度な目により引っ掛からなかったものの人間だったら絶対引っかかっていたとクティは冷や汗をかいた。


 すかさずAT05G3がハッキングにより無力化させ危険が無くなった。


 クティはいつか使えるかもと罠を回収してみるとどうやら罠は殺傷能力はないものだったようでただ通過した者を察知し情報を送る機能しかなかった。


 『どうやらこの先にあるモノも同じモノのようです、無力化しましたが他の罠が残っている可能性がありますので注意してください』


 AT05G3からの言葉にクティは頷くと列車の中を先へ先へと進んでいった。




 そして列車を出る頃にはクティのバックにはさまざまな物資が詰め込まれていた。


 クティはニコニコと笑顔を浮かべて今にも鼻歌を歌い出してもおかしく無いくらいとても上機嫌だった。


 原始的なグレーネードとワイヤーを使ったブービートラップからは頑丈なワイヤーやグレネードを。

 各種センサーの類いの罠からは少ないながらも自身の身体の破損した基盤パーツの代用パーツを。

 そして登録された者以外の人物を察知して自ら近づいて爆発する多脚小型ロボット。

 

 他にも細々とした後々使えそうなものが大量に手に入った為クティは顔のにやけが取れなかった。


 『可愛いっ…』


 バックを前に持ってきて抱きしめながら笑顔で歩くクティの姿にAT05G3は感極まり可愛いと声が漏れてしまった。


 「うぇ!?」


 ふとどんな様子なのかなと地形スキャン機能の応用でクティを見てしまったおかげでAT05G3はまた天使に会えたと感動した。


 そしてAT05G3はクティの可愛い動作を一つたりとも逃さないためにこれからは地形スキャン機能の応用と録画は常にしておこうと決意した。


 「か、可愛いって…」


 その一方でクティはクティで可愛いと言われてなんだかむず痒くなり照れ始めた。


 『あぁ…照れる姿も可愛いですね…これは是非動画として納めなければ…こんな時にあの義眼があれば完璧な画を収められるのですが…』


 心底悔しそうに今はドクのポケットにある義眼を欲するAT05G3をみたクティは少し引いて照れていて緩んだ顔はゴミを見るかのような顔に変わった。

 その行動がさらに裏目に出てしまうとはクティはクティは思ってもいなかった。


 『あぁ蔑む目も最高です…ジェイクの言っていた事がわかってきた気がします』


 AT05G3の脳裏にはワイズエッジホテルの仲間の中で随一のドMなジェイクの姿が映っていた。


 彼のいつも言っていたあのゴミを見るかのような視線が最高なんだよ!と言う言葉にAT05G3は当時は理解出来なかったものの今なら理解出来てた。


 「うぅ…エーティがジェイクみたいに…ドク助けて!」


 『あぁ最高です!』


 エーティの電子頭脳は少し普通とはずれているとは言え、ロイドの記憶が少し混ざった影響により進化の道を辿っていた。


 

 







 列車を通り抜けて数分後、また先程と同じようにクティはマップを見ながら走っていた。



 『クティ許してください…もう少ししかしませんから…無視だけはしないでください…っ』


 そしてクティはマップの赤い点が地上の巨大な壁の少し手前あたりまで到達し、地下通路の壁の中としか思えない場所へと吸い込まれていくのを目にして立ち止まった。




 「新しく掘られた通路かな…」


 『無視しないでください、無視し続けるならこちらにも手があります』


 「…っ……それとも関係者以外に知られていない通路かな?マップの情報が騒ぎ直前までのしか無いのがつらいわね」


 『クティの涎の垂れただらしない可愛い寝顔を全世界に拡散させます』



 『やめて!?いつそんなの撮ったのよ!?』


 とうとう無視できなくなったクティは頬を恥ずかしさで染めながらAT05G3へと直接ナノチップを使った通信で声を荒げたのだった。

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