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袋小路

いつもより少し遅めの投稿すみません。


 どこからともなく空気の漏れる音が聞こえて来たのは遠くから聞こえて来たドクの叫びに反応して全速力で入り口へと戻ろうとクティが走り出して数秒後だった。


 『ここまで通った通路とは反対方向、ここの外の地下通路から推定十人の足音が聞こえて来ます!』


 AT05G3の切羽詰まった声からもたらされた情報に足の回転をクティはさらにあげた。


 もはや人間に擬態する気の無いほどのスピードを出しながら、クティはセーフハウス内を走り抜けた。


 広い玄関の様な場所まで戻ってきたクティはドクの姿が無いことに焦り出した。


 『ドクは!ドクはまだ中に!?』


 クティがドクが調べに行ったエリアへと視線を向けるとそこは濃い霧に包まれていた為クティは霧の中へと突入しようとした。


 『クティ!ダメです!対人用の成分の他にエネルギーを霧散させる性質が含まれています!動きが鈍くなり格闘戦が不可能な程です!エネルギー銃も使い物にならないです!実弾が尽きた時が詰みです!』



 クティは言われた言葉をちゃんと理解していたものの扉から外へは出ようとせずに強い意志を秘めた目で霧の奥を睨み続けていた。


 そして決心がついたのか愛銃をホルスターから抜き手に馴染ませる様に握り直した。


 



 『そんなの関係ないわ!ドクが待ってるのよ!?』



 クティはAT05G3の言葉を聞かずに霧の中へと突入した。


 クティはドクを今助けに行かなければ次いつまた出会えるかなんてのはわからなかったしもう一生出会えない可能性の方が高いと充分に理解していた。


 この世の中もう一度離れ離れになった仲間とはもう会える可能性は限りなく低いのだ。


 シティはゾンビや野盗が彷徨い、時折いる変異したゾンビや大群なんて脅威まである。


 捕まったドクが何をされるかわからない上に、もし逃げれたところで疲労した身体でシティへと繰り出してもすぐ死んでしまう事は容易に想像できた。

 


 霧の中へと突入してしまったクティの生存率を少しでも上げる為にAT05G3は床の埃の上に残った足跡からドクがどこへ行ったのかナビゲートを開始し始めた。


 『突き当たりの通路を左です!急いで!身体用のバッテリー残量の減りが思ったよりも早いです!残り稼働時間七分と少しです!』


 AT05G3の焦った声に視界の隅に表示されたバッテリー残量をクティが見ると残り七十三%の表記は十秒に一%という驚きの速さで減り始めていた。

 最新のオートマトンであればここ数年で開発されたこのガスに対応していたものの、一世代前の対策されていないAT05G3にはガスの影響が顕著に出て来てしまっていたのだ。


 サブの低出力のバッテリーを含めてもせいぜい追加で十分程しか行動できない為クティの脳裏にドクと共に倒れる未来が一瞬浮かんだ。


 そんな事になってたまるかとクティは意気込み更に速度を上げた。

 


 


 それから数分後、だいぶドクとの距離が縮み、AT05G3のスキャンにドクのシルエットがようやく浮かび上がった。


 「ドク!いたら返事して!返事し…!?」


 声を荒げたクティの前方から実弾の銃声が数発聞こえてた。


 突き当たりの角を曲がるとドクが壁に寄りかかりながらアサルトライフルを次々と襲いかかるゾンビ達へと乱射している光景が目に入ってきてた。


 クティも愛銃すぐ撃てるように構えドクの近くまで駆け寄るとドクへと襲いかかって来ているゾンビを撃ち殺し始めた。


 「大丈夫ドク!?このゾンビどこから!急いでここを離れないと!」


 「はぁ…はぁ…ゴホッ…クティ、かい?…ガスが出始めて……ロックのかかったドアが開いて…それから…ゴフッガハッ…」


 「話さなくていいから!」


 一人で歩けないドクをクティは自身へと寄り掛からせると襲いかかるゾンビを三体愛銃で撃ち殺しながら入り口へと後退していった。


 そしてもう一体倒した所で愛銃はホールドオープンして弾切れを伝えて来た。

 ついでとばかりに視界の隅に点滅する残り電力十%の警告にクティは舌打ちをせざるを得なかった。


 更に今しがた通って来た通路の奥から複数人の足跡が聞こえて来た物だからクティは慌てて扉の開いていた部屋へとドクを連れて飛び込むとドアを閉めた。


 室内の机やらソファを持ち上げバリケード代わりにドアの前へと設置した。

 そして冷蔵庫を倒して銃弾を防げる物陰を作ったクティは一息ついた。


 『クティ、サブの低出力バッテリーへと変更します』


 AT05G3の言葉と共に身体が一気に重くなったのを感じたクティはよろけてバリケードへと寄りかかった。


 『こんなに…力が出なかったってけかな…それよりドク!』


 ドクは大丈夫だったかと、噛まれていないかと確認しようとしてドクが気絶してしまっていることに気がついた。


 ドクは良かったことにどこも噛まれておらず怪我も特になかった。


 そして片方は廊下へと落としたらしいものの、片方の銃は気絶する最後まで握っていたらしく倒れたドクの側に転がっていた。





 『エーティ…ガスはまだ消えてない?』


 『消えていません、むしろ濃くなるばかりです、エネルギーを霧散させる効果は身体の損傷した部位の穴から入り込んでいます、その大部分である目の穴を塞げば多少はマシになるでしょう』


 クティは医療センターで出会った軍人からガスマスクらしきものを奪っていたのを思い出して自身の荷物を漁り始めた。


 記憶は正しく、かばんの奥から出てきた顔を覆うタイプのガスマスクを着用した。


 それと同時にドアの蝶番が撃ち抜かれ破壊された音が響きドアが蹴り破られた為慌てて倒した金属製の冷蔵庫の裏にドクと共に身を隠した。


 愛銃をリロードした為一度に撃てる弾は二十発。

 ドクのアサルトライフルを手繰り寄せると弾倉はからでドクの懐を漁ると予備マガジンが一つ出てきた為取り付けて三十発。


 AT05G3が敵をスキャンすると最初の頃より次々と外の軍人の人数は膨れ上がり三十人は存在していることが判明した。


 残り行動できる時間はガスマスクのおかげで伸びたものの残り三分もなかった。


 『ちょっと、きついね』


 『えぇ、私の言うことを聞いてドクの事を気にせず一人脱出していればこんな事にはなりませんでしたが』

 


 即席で作ったバリケードは押しのけられドアがこちら側へと倒れてきているのをクティの視界にはゆっくりと鮮明に捉えられていた。

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