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拡張されたセーフハウス


 扉をくぐったドクとクティは慎重に物音を立てないように奥へ奥へと進んでいった。


 「いったい…なにがあったのさね…」


 そして簡素な玄関を抜けて開けた場所へと到達した二人は驚き目を見開いた。


 二人の目にはまだ動いてる発電機により照らされた室内が鮮明に映し出されていた。


 至る所にある白骨化した死体は五十は軽く超えて、床や壁、はては天井まで血で黒ずんでいた。

 床には埃がたんまりと降り積り足を進める二人に合わせて舞い上がって来ていた。


 こんなにも凄惨な光景だと言うのに空気は少し埃っぽいだけで嫌な臭いなど全くしなかった。


 「ねぇドク、ここで何があったか調べないと」


 「そうさね、面倒な事になんだか知らないけどかなり広がってるさね」


 クティの提案をドクは了承しそれぞれ別れて探すことにした。




 なにせ二人揃って行動するにはこの地下のセーフハウスはかつての物よりも広くなり過ぎていた。

 誰が広げたのかとかどうやって広げたのかとか疑問は尽きないがとにかくこの惨状が起こった外因を、アメリーの行方をドクは知りたかった。


 










 綿が飛び出して埃を被ったぬいぐるみ、木製の積み木に充電の切れた携帯ゲーム機とドクが見回すと視界に入ってきた。


 心なしか白骨化した死体も子供の物が多い事にも気がついた。


 「子供達が過ごしていた部屋…かね、孤児院の頃を思い出すさね…ぬいぐるみを取り合ったさね、懐かしい思い出だ」




 しばらく事の惨状に関する物は無いかと探していたドクだったがふと子供達の部屋の奥の床にある風化した銃が目に入った。


 「これは…!?」


 慌てて近寄り手に持ってみると風化して汚れてもいるが見覚えのある実弾のアサルトライフルだった。


 ドクターコートをめくりどことの知れない軍から医療センターで奪った銃と見比べてみると同じ物だった。


 嫌な予感がしたドクはうつ伏せで倒れているチェストプレートを付けた白骨死体の埃を払うとそこには医療センターでいた軍と同じ服装が確認出来た。


 ドクの心臓は早鐘を打ち鳴らし始めドクの生存本能はここは危険だと全力で伝えて来ていた。


 もしかしたら罠かもしれないと頭によぎったがそれよりも確認したい事が出来たドクはその考えを一度捨てた。

 アメリーとあの軍が関わっている可能性が出て来たのだ、真偽を突き止める為ドクは近くの死体を入念に調べ始めた。


 「まだ…まだ決まった訳じゃないさね、似た服装だったって可能性も…」







 何個か目の部屋だろうか、ドクが部屋に入るとなんとも言えない違和感を感じた。


 ドクが入念に調べ始めてすぐその違和感の正体はわかった。


 頭蓋骨に開けられた穴や服装の切り傷がほかの部屋とは違い存在していた。

 銃撃やナイフでの損傷が見られた。


 折れた骨や砕かれた肋骨などの損傷も見られた。



 そしてそれぞれその白骨死体達は二種類の服装をしていた。


 片方は医療センターで見た軍の物、そしてもう片方は治安維持軍の物だった。


 「人間同士で殺し合っている…っ!?」


 呟いたドクは何か情報は無いかと机の上に覆い被さっている死体があるのを見てその下に何やら紙が置かれていたのを発見した。


 



 死体をどかしたドクの視界にある物が映った。


 それを目にしたドクは目を見開き部屋の出口へと走り始めた。


 それは通信中を示す緑のランプが点灯した長距離通信を可能とする通信機だった。





 「今すぐここを離れるんだよ!聞こえているかい!?罠だ!」


 間違ってもクティやロイド、エーティの名前は出してはいけないと判断したドクは走りながらクティへと名前を呼ばずに罠だと伝えた。


 地下に反響した大声はクティにも聞こえてクティはやっていた事をすぐさま放り投げ出口へと走り始めた。


 


 








 ドクと別れたクティはドクとは反対方向へと歩みを進めていた。


 食堂らしき場所へたどり着いたクティはエーティへと話しかけた。


 「ねぇエーティ、何が起こったか予想できる?」


 『そうですね、ここはどうやらコミュニティが出来ていたようですから紛れたゾンビによって壊滅したとかでしょうか?でもそれにしては…』


 「うん、なんで机に座った死体があるんだろうね、それにこれ頭を撃ち抜かれてる」


 食堂の机に集まって座っている白骨死体の頭を拾い上げるとそれには額に穴が空いていた。


 机の上にはなにだったかよくわからないツマミが干からびて黒ずんだ状態で残っており、トランプや乾いたジョッキ等もそのまま残っていた。

 

 それを見たクティは何か思うところがあったのか辺りを見回し始めた。


 


 『どうしました?何か気になる事でも?』


 「その…お酒って日持ちするじゃない?」


 『ダメです』


 あろう事か酒を探していたクティにAT05G3は呆れた。

 ここで何が起こったのか調べていたのではなかったのだは無いのかと。


 「少しだけよ!」


 『ダメです、そもそもクティ、貴女は今未成年の見た目ですので見た目的にアウトです』


 「私はそろそろ四十のおっさんよ!」


 『その見た目でそんな事言わないでください、そもそもこの身体も製造されてからまだ二十年も経過しておりません』


 「グヌヌ…じゃああれよ!ドクにプレゼントするだけだわ!少しくらい分けてもらうかもしれないけれど…やっぱり半分くらい…」


 『はぁ…もう好きにしてください、どうなっても知りませんからね?』



 AT05G3は知っていた、十五歳ほどの少女に擬態している状態であってお酒にはめっぽう弱い設定にしてあるのだ。


 一口だけならまだしも一杯飲めばもう泥酔状態だ、設定を変更しなければ懲りて飲まなくなるだろうがいちいち設定を変更するには全てを再設定しなければいけなかった。


 つまり面倒くさかった。


 それにクティも少女を演じると言っておきながら自身をそろそろ四十のおっさんと言う様な演じる気の無いクティにお仕置きをしておきたかった。


 それにあんなのではいつバレるかわかった物じゃ無い、今後の事も考えた結果設定を変える事はしなかった。


 思う存分二日酔いに苦しめとAT05G3はほくそ笑んだ。







 

 「ん?なにこれ」


 食堂の台所にはなかったので、食料貯蔵庫はどこだと扉を次々と開けて探し回っていたクティはある部屋で足を止めた。


 そこは何かの研究室らしく大量の書籍や何かの液体の入ったシリンダーやらよくわからない機械やらと実験道具と言える物がずらっと並んでいた。


 奥の机にノートがあった為手に取って開いてみた。


 「これ…誰かの日記?」


 『その様ですね、部屋は荒らされた形跡もありませんし何か有益な情報が手に入るといいのですが』


 


 「今……ここ…離れ……だよ!聞こえ…いる…い!?罠だ!」


 そうAT05G3が行ったその時遠くからドクの声が聞こえて来た。



 

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