アメリーの残滓
「おはよエーティ」
『おはようございますクティ』
目覚めたクティは差し込む朝日に目を細めながら外の様子を伺うと昨日の雷雨が嘘の様に思えるほど空は晴れ渡っていた。
「やっと起きたさねねぼすけさんよ、こっちはもう準備万端さね」
「あ、ドクもおはよう、よく眠れた?」
「そうさね、よく眠れたよ」
「よかった、じゃ行こっか」
クティはオートマトンの為排泄する必要が無い為顔を洗ったりと朝の準備も特に必要なく、すぐにバリケードを有り余る力で崩し始めた。
ちなみにクティは髪の毛はボサボサで服はシワシワになっておりAT05G3はため息を吐く。
そんなクティにドクは耐えきれなかったのか声をかけた。
「クティちょっとまちな、バッテリーの確認くらいしたらどうさね、それに寝癖がついてるよ」
「あぁそう言えばそうね、エーティバッテリー残量は?」
『七十六%まで再充電されています』
「もっと多いのかと思ってた、さてはグエスが古いバッテリーを渡したに違いないわ」
グエスへの悪態をつくクティを見て夜間バッテリーを使用していたせいだと理解しているAT05G3はそっとグエスへと謝った。
「それくらいあれば問題無いさね、ほらこっちに来な髪の毛整えてあげるさね」
「そのままでいいじゃない、めんどくさいわ」
クティは早くゾンビを倒したくて仕方がなかった、ゾンビに自身がなる事はもう無いのだ。
そのせいもあってかバトルジャンキー気味になりかけてしまっていた。
駄々っ子で戦闘狂でお子ちゃまな判断をする残念系美少女なクティにAT05G3は頭を抱えた。
どうしてこう育ってしまったのだろうと。
そしてめんどくさいと言ったクティをドクは睨んだ。
それはもう今までで一番怖い顔で。
「ダメさね、髪は女の命って言うほど大事さね、あんたは今女なんだからそれくらいしっかりするさね」
「えー…」
『整えないとダメですよ?』
AT05G3からも言われてクティはしぶしぶバリケードを崩す手を止めた。
「エーティも言うなら…」
『それにせっかく可愛いんですから、もったいないです』
「かわっ!?」
何故かクティはエーティに可愛いと言われてとても嬉しかった。
可愛いと言われて嬉しくなった事実に恥ずかしくなりそっぽを向いたクティにドクのからかいが飛んできた。
「おや、もうロイドの面影なんて見つからないね」
「うるさい!…それと、やっぱり頼める?」
「いいよ、こっちきな」
頭の中で嬉しさや恥ずかしさがごちゃ混ぜになったクティはおずおずとドクの前へと近づいていくとドクがクシを取り出し髪の毛をとかしはじめた。
髪の毛をとかしてもらいながら手持ち無沙汰になったクティはドクへと気になっていた事を聞いてみることにした。
「ねぇドク、もしアメリーが生きてたらどうするの?」
「や、もう生きて無いさね、アメリーが生きてたと確認出来る情報から一年は経ってるさね」
「へぇ…いつのまに」
ドクは昨日の夜の出来事を思い出した。
あのATαが言っていたアメリーが登録された日はもう一年は前の日付だったのだ。
ATαが言っていた記憶の登録とはアメリーが開発したオートマトン初期に使われていた人間の行動パターンの登録の事を指す。
あれはアメリーの行動をひたすら行う人形でしかなかった。
感情は無くひたすら決められた行動を壊れるまで続ける、そんな人形だった。
アメリーの残滓とも言える悲しい悲しい人形だった。
その人形をドクは知っていた、だからこそわかる、ATαを起動する時もうアメリーはこの世からいなくなっているだろうと確信があった。
それは心半ばで立ち止まらなければいけない時、どうしてもそれを完遂しなければならない時のためにアメリーから地下道のセーフハウスに置いて置くと聞かされていたからだった。
「ねぇドク、アメリーの事嫌い…なんだよね」
「嫌いさね、やった事は許さないしもう今後とも許す気もないさね」
「そっか…でもドク」
「さ、終わりさね、支度してさっさと地下道に戻るさね!」
クティは自身の言葉を遮りバリケードを取り除き始めたドクをじっと見つめた。
昨日ドクが過去の話をする時、ドクはアメリーの事を話す時とても懐かしく恋しいような表情で語っていた。
でも今のドクはクティにはとても辛くて悲しそうに見えた。
まるで昨晩寝た後何かあったみたいだとクティは考えたもののスリープモードに移行していたクティでは検討もつかなかった。
「何をもたもたしてんだい!さっさといくよ!」
「ちょ!危ないから私が先に行くから!待ってよドク!」
気がつくとドクもいつもの雰囲気に戻っておりクティは慌ててドクの後を追いかけ始めた。
「なんかずいぶんとゾンビの数が少ないね」
「確かにね、どこへ行ったのかね」
「ていうかドク、その便利そうな拳銃は何さ、昨日まで持ってなかったよね?」
ドクが消音器一体型の拳銃でゾンビを次々と倒していくせいでクティはナイフでの処理の為倒せるゾンビが少なくなっていた。
その為クティはゾンビをドクに取られてご立腹だった。
「ビルで拾ったのさね」
「嘘だ!武器なんてそうそう落ちてないよ!」
「金庫に入ってたのさね」
本当はATαが持っていた物だがさらっとドクは嘘を付いた。
「鍵はどうしたのさ」
「ほら、そろそろセーフハウスに着くよ、黙りな」
「はぐらかした!はぐらかしたドク!昨晩何があったのさ!」
はぐらかされたクティは小声で叫ぶという高等技術でドクへ抗議した。
ナイフをぶんぶんと振り回してドクの周りを行ったり来たりと忙しなく身体でも表現した。
しかし視界に重厚なドアが映されてからはクティも流石に黙ってナイフをしまい愛銃を構えた。
そのドア古い潜水艦にあるような丸いサークル状の取ってを回して開けるドアだった。
所々錆びているものの何があっても通さないという意思を感じられる程の重厚なドアだった。
しかし。
そのドアは誰でもウェルカムとばかりに開け放されていたのだ。
「アメリー…」
ドクの寂しそうでいて悲しそうな声が扉の奥へと消えていった。
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こんな不定期更新の作者の書きたい事を書き殴ってるだけの私小説を読んでくださりありがとうございます。
これからも更新は不定期ですがどうか末長くよろしくお願いします。
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