ドクとアメリー
「で、どうするのさドク、このままじゃ通れないよ」
「ソレはもう使えないのかい?」
ドクはSMGE35を指差すとクティは首を振った。
「だめ、一回メンテナンスしなきゃ2度と撃てなくなっちゃう」
クティはSMGE35へと視線をうつすとバレルが汚れと歪みで廃棄品寸前になってしまっているのを確認した。
「メンテナンスに時間はどれぐらいかかるさね?」
「十分もあれば、バレル交換だけなら一分で」
「バレル交換だけに留めておきな、この扉いつまで持つのかわかったもんじゃないよ」
ドクは格子状の覗き窓からエネルギー駆動の拳銃で扉の向こう側のゾンビを倒しているもののドアが軋む嫌な音が聞こえてきていた。
しばらくしてバレルを交換し終えたクティがドアを見るとかなり歪んでおり限界が近づいてきているのがわかった。
「一旦地上に戻ろ、このままここにいてもしかたないよ」
「…わかってるさね、あぁわかってるさね」
何か思うところがあったのかドクは撃つ手を止めゾンビをじっと見つめていた。
地上へと続くハッチを固く閉じたクティは先程から何か悩んでいるドクの方へと振り返った。
「ねぇどうしたのドク、さっきから様子がおかしいよ」
「いや、些細な事さね、クティには」
「関係ないって言うつもり?ドクは大事な仲間なんだよ?相談くらいはしてくれてもいいじゃない」
「や、本当に関係ないさね」
「それでも!」
「関係ないさね」
「いいじゃんちょっとくらい!いいじゃんいいじゃん!」
クティは駄々をこねた、今のクティは30代後半男性ではなく10代の可愛らしい少女なのだ。
何も問題はない、無いったらないのだ。
AT05G3がため息を吐いたような気がしたがクティは聞こえなかったフリをした。
「はぁ…わかったよ」
クティの駄々こねに根負けしたのかドクはやれやれとため息をついた。
ドクは基本的に少女の頼み事は断れない口だった。
クティの駄々は効果バツグンだった。
「人間死んだらもう終わりさね、あたしだってそれくらいは理解してるけどその後は知らない、もしかしたら天国や地獄があるのかもしれないし完全に自意識の消滅が待っているかもしれない」
「うん」
「でもあのゾンビ共は息をしていた、身体は腐ってロクな考え持たずただ人肉に群がる化け物となっても、死ねてなかったのさ」
「ドクはそれが許せないって事?」
「許せないってわけじゃないさね、そもそも意識もなさそうだったし生きてるって表現も変さね、ただ不愉快なだけさね、問題は奴らがいた場所さね」
「あの地下道の事?ドクしか知らないとかじゃなかったっけ?」
「もう一人、もう一人だけいるんだよ、そしてソイツはどうしようもないクズさ」
ドクは顔にシワを作り今戻ってきた地下道のハッチを睨んだ。
ドクの目には溢れきれんばかりの憎悪が浮かんでいた。
「このまま地上を進んで中央政府に行く?それとも地下道を通って中央政府に行く?」
「決まってるさね、いくら危険だとしても地下道を通っていく、ヤツには問いただしたい事がたんまりあるさね」
「そうこなくっちゃ!」
クティとドクは再度突入する為に装備のチェックをしはじめた。
「ドク、アサルトライフルの残弾は?」
「マガジン三本、それぞれ三十発入りだから九十発さね、バラがあと四発残ってるさね、後はコレだけど…ちょっと難しそうさね、そっちは?」
ドクが二丁のエネルギー駆動の拳銃をポンポンと軽く叩いた。
ドクの胸付近に表示されているバッテリー残量は残り二十パーセントを切っていた。
それはドクの持つエネルギー駆動の拳銃のバッテリー残量で撃てても五十発くらいだと容易に予想できた。
全回復するにはおよそ半日程を要する為心許なさがすごかった。
「マガジンニ本とチャンバーに一発、マガジンに二十発入るから合計四十一発しかないよ」
『クティ、身体のバッテリーからこれ以上エネルギーを使用すると行動に支障をきたす事でしょう、エネルギー駆動の銃は今日は控えてください』
「あとエーティがもうコレ使わないでだって、限界が近いらしいよ?」
クティはクティでどこかの誰かさんが乱射したせいかかなり撃てる数は減ってしまっていた。
「少ないね、エーティが言うには奴らスキャン出来た範囲で八百だって?確実に実弾の銃だけじゃ無理さね、そもそも使い切るのは危なすぎるさね」
「うん…もっかい入るのは明日からかな…」
「口惜しいが安全を考えるのならそうさね、とりあえず宿に出来そうなあそこのビルへ向かうとするかね」
「やけにすんなりと諦めるね?」
「あたしはアンタみたいな脳みそが筋肉でしか出来てるような人じゃないからね」
「なにおう!私が脳筋とでもいいたいの!?」
「割と」
「ひどい!」
茶化しあいながらクティ達がビルへと入るとエントランスホールに生えた木が天井を押し退け突き破ってる光景が見えた。
「ねぇドク、これ変じゃない?」
「変さね、成長速度がおかしいね、数年じゃこんなにも成長なんてしないさね」
「あ…これ成長剤がかかっちゃったとか?それか誰かがかけたとか、ほら、小麦生産工場あったじゃん、あそこに沢山残ってた筈」
かつてワイズエッジホテルでコミュニティを作って暮らしていた時食料確保の場所として頼っていた工場の事をクティは思い出した。
とは言え家畜用で味もそこまで良くなかった為本当にピンチの時だけ小麦を受け取りに行っていたが。
それを食べるならちゃんと味付けされたドックフードやキャットフードの方が百倍美味しかった。
「だとしても一年以上はかかるさね、それに一ヶ月くらい前まで誰かいたみたいさね」
ドクが指差した場所をクティが見るとそこには埃の上に足跡があった。
もっともその足跡も薄く埃をかぶっておりしばらくここに来てないことが伺えた。
「足跡の大きさからして成人はしてそうだけどそれくらいしかわからないかな…」
「そんな事無いさね、こっちに来てみな」
足跡を辿って奥の部屋へと行っていたドクがクティを呼ぶと部屋に置かれていたソファに大量の黒く変色した血と服の切れ端が落ちていた。
「これは?」
「ホラこのタグ見てみな、名前が書かれているだろう?あたしの知り合いさね、それから予想するに白衣の端さね、よく病院とかで着るやつさ、そんでさっき言ってたクソ張本人さね」
クティが覗き込むとそこには[アメリー]と名前が縫い込まれていた。
いつも読んでいただきありがとうございます。
少しずつでも着実にブックマークが増えているのを見ると嬉しくなります。
感想、評価お待ちしております。
これからもよろしくお願いします!




