ドクのつて
クティはドクと病院のゾンビを蹴散らし盛大に脱出した後ドクの言う近道があるとの言葉を受けて地下へとまた戻ってきていた。
ちなみに今回は下水である、クティは下水が多少臭かったので鼻の機能をAT05G3に頼み一時的に停止してもらっていた。
「で、どうするの?このままじゃ入れない
よ?」
「簡単な事さね、変更されてなけりゃ問題ないさね、ほいっと」
そう言いながらドクが目の前の南京錠の数字を変更すると地下の空間に鍵の開いた音が響いた。
「おー、でもなんで知ってるの?」
「あたしは闇医者ってやつなのは以前言ったろ?たまには非合法な事をする、でその後足がつかないように監視の無い通路はいくつか用意してあるさね、これはその一つさね」
「それは…すごいね、まぁこんな世の中で安全に移動出来るなら…うん、とりあえずすすも」
「はいよ、真面目だねぇ」
扉を開けながらドクは得意げに話したものの元治安維持隊にいたクティからすれば笑えない冗談だった。
今は特に問題はないがもしこの騒動が解決したら地下の通路の事をなんとかしなければとクティは意気込んだ。
それから数分後、ひたすら真っ直ぐ進むだけでクティは飽きてきていた。
「ねぇドク、割と長い付き合いだけれど医者になる前は何してたの?」
「そうさね…研究者だったね」
「へぇ、以外、どんな研究してたのさ」
「あー…そうさね…まぁオートマトン関係を少しって感じさね、あんまり思い出したくないからこの話は終わりさ、そろそろ次の扉があるはずさね」
「ふーん…どんな事してたのかな…ドクだから変な場所の製作をしてるかも…」
オートマトンと言えばこの身体もオートマトンである為もしかしたらこの身体の製作にドクが関わってるかもしれないとちょっとワクワクしたクティだった。
『クティ、誰だって触れられたくない過去というものは存在するものですよ?』
「わかってるよエーティ、それとその言い方だとエーティにも触れられたくない過去はあるみたいに聞こえるけど、あるの?」
『私は…』
AT05G3が言葉を詰まらせたと同時にドクが突然立ち止まった為クティはドクの背中へとぶつかってしまった。
「ドクどうしたの?」
「しっ!喋るんじゃないよ!何か聞こえてくる!」
ドクの真剣な表情と物音を立てまいとしている動作やほとんど聞き取れないほどの小声から何か異常が起きている事をクティは察知した。
そのまま音を立てずにクティは腰のホルスターへと手を伸ばす。
『クティ、前方十メートル扉の向こう側から何者かの息遣いを感知しました、熱源はありません』
『ありがとうエーティ』
ジリジリと少しずつ扉へと近づいていったクティは同じく近づいていたドクに目線で鍵を開ける事を促す。
意味を汲んだドクが鍵をなるべく音を立てないように慎重に開けるとほんの少しだけ音が通路に響いた。
ドクが銃口を扉へと向け、クティは扉を少し開けると扉の隙間から覗いたクティと目が合う者がいた。
素早く扉を開け切りしゃがんだクティの上を銃弾が通り過ぎていくと目の前のゾンビの頭に着弾しゾンビを一発で撃ち殺した。
クティはドクの方を振り返った。
「ナイスだよド「まだだクティ!次が来る!」
ドクの声に慌ててホルスターから拳銃を取り出したクティは振り向きざまに二発撃ち込んでドクの位置まで後退した。
そしてクティの目に大量のゾンビが暗闇の奥から次々と飛び出してくる光景が映し出されクティは顔を青くさせた。
「ドク!下がって!物量で押し潰される!」
「言われなくとも下がるさね!」
来た道を戻るドクを尻目にクティは拳銃の残りの弾丸をそれぞれゾンビの頭へと全弾撃ち込んで拳銃をホルスターに仕舞い込んだ。
SMGE35に持ち替えたクティはジリジリと下がりながら銃身が限界に達する直前まで撃ち込むとドクを追って元きた道を戻り始めた。
「なんでこんなにいるの!?意味わかんない!って今度はなに!?」
『ドクの危険度はあまり高くはありません、安心してください』
つい叫んだクティの声は前方から響いてきたドクのもつアサルトライフルの銃声に半ばかき消された。
前方の状況をスキャンしたAT05G3からの報告を聞きながら片手で拳銃をリロードをする。
ちらりと後ろを振り返ると先程よりも通路にみっちりと走ってきているゾンビが目に見えた。
このまま進んで後ろの大群を引き連れていったら危険が高まると判断したクティは冷めてきていた銃身を確認して再度SMGE35の掃射を行った。
「キリがないよ!一体どこから出てきてるのさ!?」
『スキャン結果によるとあと八百ほど後ろに迫ってきています』
「この狭い通路に!?馬鹿じゃないの!?」
SMGE35は連続射撃により精度が落ちてしまっていたせいで狙ってももう照準の真ん中に行かなくなっていた。
その為クティは狙わずにエネルギー弾をとにかくばら撒き、悪態をつきながらなんとか捌いていく。
バレルが赤く熱し上げられ限界を迎えたのを確認したクティは隣に流れる排水溝の汚水へと銃口を差し込み強制的にまた撃てる状態へと持っていき再度エネルギー弾をばら撒き始めた。
エネルギー弾はある程度形が変形する為精度を度外視すれば水に突っ込んで強制的に冷却する事も出来るもののそれも長く続ければ撃出なくなってしまうことに変わりはなかった。
後でこれを切り抜けたらバレルの交換どころか全部を分解してメンテナンスしなきゃと細部につき始めている汚れを横目にクティは地下の道を走り抜けていった。
それから数分後ドクに追いついたクティは時折前方からやってくるゾンビを処理しながら最初のドアまでたどり着いた。
ドアを閉めてゾンビの大群を閉じ込めたクティは格子状になっているドアの箇所から向こう側を覗き首を傾げた。
「ねぇドク、聞き間違えじゃなければこのゾンビ呼吸してるよ?」
「どれ」
クティの横に来たドクも格子状になった箇所から覗き込み音を聴くとたしかに呼吸音が聞こえたのか驚いた顔をしていた。
「こりゃ、いったいどう言うことだい?何かの変異種かい?」
普段よくいるゾンビは呼吸なんてしていなかったはずなのだからドクとクティはしばらく呆然としていた。




