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01 プロローグ 『俺だけの正義』


 『神は見ていない、見た上で選んでいない』 ──俺のたどり着いた答えがこれだ


 よくライトノベルやアニメで表現されている異世界チートやハーレム物、それだけに限らず現代ファンタジーでもSF作品においても、大きな存在に選ばれし特別な者が力を得て大活躍する作品があるが、それは違うと感じている。

 何故ならば、神様から特殊な力を授かった者は、それほどに特別立派な人間だったか?と言う答えに行き着くからだ。これに尽きるのだ。


 たとえば百億の蟻が体育館に集められてそれが一つの世界だと定義してみよう。神様は百億の蟻の中からどうやって“オンリーワン”や“ナンバーワン”を見つけて祝福するのか?

 何をどうやって考えても蟻は蟻でしかない。女王蟻と労働蟻の差があったとしても、ブレ幅はあくまでもその程度。他の蟻と明らかに違うような個性的な特徴は何一つ無いのだ。

 そんな百億通りもある蟻の人生から、何を根拠に神はピックアップするのか。狭いブレ幅の中に集中する蟻の百億通りの大した事の無い人生に、キラリと光る一点モノがある訳ではないだろうに。


 それに、蟻は生きるために他種族を食い、種の繁栄のために他種族の肉を子に与える。「殺す」と言う概念が間違い無く存在している。

 道徳的な概念から言えば盗むな殺すなは当たり前で、それを行えば間違いなく悪である。だがこれは悪ではない、むしろ蟻視点から見れば一方的な正義だ。弱肉強食は生命サイクルの根幹であり、生き残るためにはどんな手段をも使う事が許される、立派な選択肢の一つだからだ。


 人間だって同じだ。生きるために殺し、そして食う。

 だから、だからこそ神様と定義された存在は、何をもって……何を理由に百億の存在の中からたった一つの単体をピックアップするのか、その根拠が全く理解出来ない。

 神に選ばれる人間の質よりも、むしろ神のセンスを疑ってしまうのだ。


 周囲から罵られて蔑まれて、孤独に生きたから祝福されるのか?

 幸せな人生を送るはずが、不慮の事故で亡くなってしまい、詫び石がてらに祝福されたのか?

 ならば、その判断基準がひどく曖昧でいい加減な事から、"人に授ける者"とは酷く適当なヤツなんだなと考えるしかない。

 そう、神様って存在は、遥かな高みにあるより良き世界を望んで創り続ける創造主ではなく、気まぐれや遊び感覚でひたすら生産し続けるだけの造物主に過ぎないのだと。そう割り切るしかないのだ。


 だから神に選ばれた特別な人間などいない

 「神様はいつもあなたを見ていますよ」って言われたところで喜んではいけない。そんなに暇なの?と驚く方が健全なのだ。

 俺は特別なんだと言う自負と、優越感にひたる者が世の中にいるとしても、皆が皆自分は特別なんだと思っていれば、逆にそれが当たり前の普通で標準的人間なのだ。


 善行を積み重ねたところで人は人

 悪行を積み重ねたところでやはり人は人

 常に無情と無慈悲な人生に彩られて、自分は特別な人間なんだと慰める日々が続く

 何かもし……何か授かったとしても、それは積み重ねた自分の行いの結果ではなく、単純に神様の気まぐれの結果だと考えるしかないのだ。

 何故ならば、かく言う俺だって生きるために動物を殺し、生きるために魔物を殺し、生きるために人を殺して来たからだ


「だから……だからチビ母さん、俺は特別に選ばれた人間だとは思ってはいない。増長もしてなければ優越感にも浸っていない。この力は自分が生き残るため、そして俺の身の回りにいるごく僅かな人々のために使う。ひどく自己中心的だけど、それこそが善でも悪でもなく俺だけの正義なんだ」


 ……ラルフレイン・フェルフール 十六歳の春

 スラムマフィア討伐に赴く際、見送る八百万(やおよろず)女王に向かって言った言葉である。

 そして彼を見送る八百万女王は、彼の言葉にこう返したと言う。

 夜明けに向かって進む君には世界の祝福が広がり

 君の背後には、君がぶちのめして来た悪意が転がる

 思うように生きて思うように果てろ、酸いも甘いもその記憶それこそが、君の幸せであり財産なのだから と



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