一話《入学式の朝》
今、私は驚愕しています。大きすぎる門に。言われなければ人外でも通るかのような怪門に見える門が、偉そうに私を見下ろしている。敷地面積が何とかドーム何個分なのかは知らないが、全国の主要な機関の付属学園なのだから、相当な面積であろう。そして、その奥の気圧されそうな雰囲気に似合うほどのどっしり構えた外壁と門。流石としか言い様のない堂々たる気迫が漂う。ただただ、「うわ、怖い……」
おっと思わず声が出てしまった。上から目線で実況してみたものの、漂う圧に耐えられはしないのだ。
けれど、ここに来たことは全く後悔していない。私は門をくぐった。どうしてかわからないけれどその時間はとてもゆっくりに思えた。
ここを卒業出来るのは毎年数十名。学園と言えども国営で、国を支える人材の育成施設でもあるのだから、優秀な人材以外はそぎおとされていく。そのため、1年生が百人だと仮定すれば、2年生には半減し、3年生にはそのまた1/4程度。最終学年には0.5割いれば優秀な年なのだそう。この門は一体何人を追い出し、何人を見送ったのだろうか。過去を遡ればわかるのだろうけれど、生憎誰かの過去なんて興味がない。ここにいる全員と張り合わなければならないのだ、何より自分の事を考えて
そしてこんな門をいつか飛び越えて見せる。
少し歩けば、人だかりがあった。組分けが紙に書いて貼り出されていたようで、達筆な文字の羅列の中に自分の名前を見付けた。上へ視点を動かすと「1組…か。」さっさとその場を離れる。馴れ合いたくないとか、どこぞの主人公みたいにいきっている訳じゃない。ただ、人混みが苦手。そう。それだけ。
たどり着いた教室には誰もいなかった。それぞれの机には堆く冊子が積まれている。黒板には、おめでとうの文字。「~~~~……」誰かの言い合う遠い声が彼女の耳に届いた。ここまで来るまでに人っこ一人見掛けず物音も自分の歩く音のみだった。だからこそ、捉えようのない好奇心に易々と体の支配権を明け渡す。「誰だろう」と呟き、鞄を自分の席において、なるべく足音を忍ばせて声のする方へ歩いた。少しずつ声が大きくなり、はっきりとし始める。
一歩…二歩……
一歩…二歩……
あと少し。
というところでサザッというスピーカー特有の音がした。驚いて、あわててそばの箒立ての裏に隠れる。
「連絡です。澤木理沙さん、風城ミナミさん、準備に戻ってください。繰り返します。澤木理沙さん、風城ミナミさん、準備に戻ってください。」少し、慌てたような、怒っているような放送に、近付いていた声が「あちゃ、怒ってる怒ってる……」「だーから勝手に出てきちゃ駄目だって言ったでしょう。」……離れていった。
ごほうびを取り上げられた犬のような気分がする。取り敢えず、席に戻ろう。待っていれば、あの入り口付近でたむろしていた人達も教室へやって来るだろう。そう考え、来た道を辿る。--後ろからの視線に気付かずに。
入学式書くと言った上に朝場面で終わってしまった……。
1ヶ月空いたのはテストや地域予選会やらでつぶれたせいです。
本当は、時間の分け方が下手なだけです。