ソウマとの再会
◯センゴク
その男はサカキの母親に深々と一礼をすると立ち上がり俺の方に向かってきた。
俺は軽くその男を見つめたが、涙を浮かべ鼻を真っ赤にしたその男は俺のことなどまるで眼中にないようでそのまま通り過ぎた。
俺はその態度すら腹が立った。
昔と何ひとつ変わらない。
あいつらの存在はなぜか無性に腹が立つ。
その男が外に出たところで俺は声をかけた。
「おい」
男がこちらを振り返る。
「久しぶりだな。ソウマ」
鼻を真っ赤にしたソウマは俺のことをきょとんと見つめた後、大きく目を見開いた。
「センゴク君?」
俺は思わず鼻で笑った。
「お前。俺のこと覚えてるのか?」
「そりゃ・・・高校の同級生だし」
「へえ、同級生ならちゃんと覚えてるんだな?ロクに喋ったことのない俺でも」
ソウマは少しむっとした顔を俺に向けてきた。
意外だな。
少しはそんな顔もするようになったのか。
「ふうん。あのへらへらした顔以外もできるようになったのか。ちょっとはましになったんじゃねえの?」
「センゴク君。君こそ変わっていないね。高校の頃からずっと。そうやって人を見下している癖。相変わらず幼稚だね」
体中が熱くなった。
「てめえ!」
俺は思わず目の前のソウマの胸ぐらをつかんでいた。
「言うようになったじゃねえか!ソウマ!」
じっとまっすぐ、ソウマは俺を見つめていた。
「別に。僕は何も変わっちゃいない。ただ」
ソウマの目から涙があふれてこぼれた。
「ただ今日は、悲しくて悲しくてもうどうでもいいんだ」
そんなソウマを見た俺は思わず拍子抜けして、掴んでいたソウマの胸ぐらから手を離した。
と、同時だった。
まるで支えを失くしたようにソウマはその場で泣き崩れた。
俺はただただソウマを見つめるだけだった。
さっき俺の前で泣き崩れたサカキの母親を見つめた時を同じ様に。
自分は泣くこともなく。