理解不能な漫画
◯センゴク
俺は茶封筒からサカキの漫画を取り出した。
「まずこのマスがよくわからねえんだよ」
俺がそういってサカキの漫画をソウマに差し出した時、ソウマは口をぽかんと開けて俺をただ見つめるだけだった。
「何だよ、ソウマ」
「これはマスじゃない!コマって言うんだよ!!」
ソウマがあまりにも大きな声を出すから俺のほうが次にぽかんとした顔をしていた。
「駒?」
「いま違うコマを思い浮かべてるね。駒じゃなくてコマ!カタカナ2文字でコマ!!」
「あ?んだとコラ」
「あ、すみません」
俺はサカキの漫画を見つめた。
「じゃあこのコマ?がよくわからねえ」
「コマがわからないって」
「次にどこを読むのかがわからなくなってんだよ」
「そ、そこからか」
「あ?なんだ?」
「い、いえ。えっとコマは普通右から左に読む感じだよ」
「なるほどな。で、また下のマスじゃなくてコマにいったら右から読むのか。あ、でもここは縦になっててよくわかんねえぞ」
「ま、まあそういうところは適当に流して読むんだよ」
「適当に流す?まあ、いいや。でさ、あとこれこいつらが話してる言葉。これも誰が何言ってるかよくわからねえんだけど。このお化けみたいな枠に入ってるやつ」
「それは吹き出しね」
「そうそれ。吹き出し。たまにただの円だけになっている時とかさ誰の言葉がわかんなくなるだろ」
「うーん。まあそれはサカキ氏の書き方が悪いのもあるけど、キャラクターの個性がわかっていればなんとなくわかるところだよ」
「個性ねえ。てか、サカキの漫画に出てくる奴ら自体よく分からねんだけどよ。まずこいつ、主人公なのかよくわかんねえけどこいつ」
俺は頭がつんつん頭の男の絵を指さした。
「こいつがさ本当に何言ってるのか意味不明なんだよ。アステリア王国?だかなんだか知らねえけどそこの兵士?で、グルってのが悪い兵士っていうのはわかるんだけどそいつらのムラベルってなんのことだか。あと多分これ、主人公の女だよな?こいつのよくわからねえ言葉も理解できないんだよ。ほらここで言ってる“ベル・ゼ・ガイガー”って何だよこれ。英語なのか?それから」
「ちょ、ちょっとストップ!」
俺はそんなソウマの声に漫画から顔を上げた。




