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7.嫌いな笑顔

今日はプール開きの日!

この学園の敷地内には大きなプールがあって、6月下旬から使えるようになっている。

プールは授業の時と、昼休み、放課後に使える。

今は放課後だから、たっぷり遊べる。


更衣室で学園指定のスクール水着に着替え、水泳帽を被る。

一緒に来た真矢さんも同じような格好だ。

他の皆もそうだ。みんな、暑さを凌ぐためにここに来ている。


「真矢さん…暑いですねぇー」


「ですねぇー」


ニコニコと談笑しながらプールサイドに出る。


なんか、男子が多いなぁ。

あっ、朝霧くんと秋澤くんと紘希がいた。

おぉっ、悠人もいる。

……イケメンズが集まってるなぁ。


あっ、秋澤くんがこっち見た。


「あれっ?おーい!小鳥遊さーん!ってうわっ!」


「キャッ!あ、秋澤くん!?大丈夫ですか!?」


ビターン!と激しい音を立てて派手に転んだ秋澤くん。

うん、プールサイドって走っちゃいけないね。

ありがとう、秋澤くん。よくわかったよ。


そんな、転んだ秋澤くんを女子たちは遠巻きに見て、心配そうにしている。

そして可愛いっ…!と悶えていた。


「えへへー、格好悪い…」


「そんなことないですよ。……それより、痛くないですか?」


「……うん。大丈夫」


ニヘラーと笑う秋澤くんはどこか掴めない。

なんだろう。変な感じ。

そう思っていると、ペタペタと足音がした。


「大丈夫か?日向…」


朝霧くんが心配そうに秋澤くんを見る。

紘希も、眉を下げている。


「章吾ー!全然っ!心配性だねぇ!」


ひらひらと手を振る秋澤くんだけど、


「……うーん、朝霧くん、秋澤くんを借りますね」


「たかっ小鳥遊さんっ!?」


「真矢さん、すみません。早めに戻りますね」


「はい。分かりました」


「すみません」


「いえいえ、しょうがないですよ」


秋澤くんが何か言っているが、私は無視して、秋澤くんの手を引っ張る。

しょうがないじゃん。分かっちゃったんだから。


「秋澤くん、腕、痛いんですよね」


「──っ!……何で、」


「いや、私の我慢してるときと同じだなぁ…と思ったので。

でも、それは我慢しない方がいいですよ。酷くなると思います」


「ふふ、やっぱり小鳥遊さんには敵わないなぁ」


どういう意味…?

私、秋澤くんとはあの日─娯楽ルームで─しか会ったことない気が…。


そんな私の気持ちを悟ったのか、秋澤くんは微笑んだ。


「あとで話してあげるね。保健室、行ってくる。

……付いてきてほしいんだけど…駄目かな?」


「いいですよ。着替えてきますね」


「うん。僕も着替えてくる」


あぁ、その笑顔、気持ち悪い。

嫌いだ。前の秋澤くんも、こんな感じだった。

秋澤くんの感情が読み取れない。

こんなこと言ったら、秋澤くんのファンクラブに抗議されそうだけど…。


モヤモヤする気持ちを抑え、更衣室に入り、制服に着替える。


廊下に出れば、憂鬱そうな秋澤くんがいた。


「秋澤くん、大丈夫ですか?」


私が声をかけると、いつもの笑顔を貼り付けた秋澤くんが。

…嫌いだ。


「はは、女の子と話してたんだ。元気元気」


……絶対信じない。

大方、秋澤くんのファンの子と話していたんだろうけど。

私達は他愛もない話をしながら保健室へと向かう。


「……小鳥遊さんは楽だね。居心地がいい」


突然、秋澤くんが言った。


「それはどういう…」


秋澤くんの言った『楽』という言葉の意味がわからずに、眉を寄せる。


「そのまんまの意味だよ?僕、小鳥遊さんと小さい頃に会ったことがあるんだ」


「私、覚えてないんですが…」


そんなこと、あっただろうか。

記憶を辿ってみるも、思い出せない。


「やっぱり!……くくっ、小鳥遊さん、僕、好きだよ。小鳥遊さんが」


「は、はあ……」


私はその時のいつもの嫌いな秋澤くんの笑顔ではなく、無邪気な年相応の笑顔が頭から離れなかった。

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