4.許しません
私の名前を呼びながら、駆けてくる紘希。
まだ怒ってるんだからな。
「何…」
「い、えっ…と、謝ろうと思って…。ほ、ほら。さっき変なことして…ごめん。
妹みたいでついいじめたくなって」
垂れ下がる犬の耳が見えるのは幻覚!
騙されるな!!騙される…、な…。
だま…。あああ!!やっぱり無理!
「そう。別に…いい」
「良かったぁ…!」
パァッと、顔を輝かせる紘希。
クッソ、可愛いな。
「で、糸屋…だっけ?咲良との関係は?」
「専属使用人です」
「使用人…」
遥が使用人と言った途端、紘希は遥を睨んだ。
何でだろう?
「それは、住み込みの…?」
「はい。僕はまだ子供ですし。叔父もいますので」
そう。遥は家に住み込みで働いている。
因みに部屋は、私の向かい側のところ。
「へぇ…。まぁいいや。咲良、教室に帰ろう。糸屋は本読んでるみたいだから」
くいっとあざとく制服の裾を引かれる。
うわぁ…!!ベッドにダイブしてバタバタしたい!
ショタ紘希可愛い~~!!
「お待ちください島本様。咲良が行くのなら僕も行きます」
遥のこんな焦った声初めて聞いた。
いつも気だるげだから。
三人で帰ろうとしたとき……。
「小鳥遊さん…小鳥遊さーん!!いますかー?」
この声は…クラス委員長の永山君?
どうしたんだろう。
「永山君ー!私はここですよー!」
「あっ、うん!」
永山君は私の声に気付いたのか、返事をしてくれた。
永山君にだけ歩かせるのは少し申し訳ないので、私も永山君の方へ向かう。
「いたいた小鳥遊さん。実はね……って…。あの、糸屋君、島本君。少しだけ遠くに行っててくれないかな?
大事な話なんだ」
大事な話って何だろう?
遥と紘希はムッとしたが、特になにもせず、離れていった。
「な、永山君…?どうしたんですか?」
「あ……そうだったね。俺ね、小鳥遊のアプリゲー好きなんだ。その…乙女ゲームが…」
モジモジと恥じらうように言う永山君。
なん…だと。乙女ゲーム好き男子ぃいいい!レア!レア物!!
「乙女ゲームが!?わ、わ、私もなんだすよ…!!」
「だす…?」
「はっ!!」
話しているうちに噛んでしまったらしい。
うぉおおお!と叫んでいると、永山君が噴き出していた。
何だよ!?(キレ気味)
「あー。俺の小鳥遊さんのイメージが全部崩れちゃった。儚げ美少女かと思ったら典型的なオタクだなんて。面白すぎ」
儚げ美少女ってなに!?!?
笑いすぎて、涙が出てきたのか、永山君は裾で目を擦っていた。
「あ、駄目ですよ永山君!赤くなっちゃいます」
マジで、裾で目を擦ったら翌日凄く痛くなったからやめた方がいい。
充血もしちゃうし。
永山君の目を確認しながら、私は清潔なハンカチを取り出した。
「その…まだ使ってないんですけど…。嫌なら……」
「ううん。大丈夫。ありがとう」
ニコッと笑い、永山君は私のハンカチを受け取った。
私、周りがイケメンで埋められていたから分からなかったけど、永山君もこうして見るとイケメンだよね。
ジッと見ていたのがバレたのか、永山君は首を傾げた。
駄目だ。変に意識して、顔が熱い。
「どうしたの小鳥遊さん。顔、赤いよ?」
「えっあっ。少し暑くなってしまって…」
ハハハと乾いた笑みを浮かべる。
「そうなんだ。まだ梅雨前だけど、風邪には気を付けてね。夏風邪は厄介だから」
「ありがとうございます………」
人の心配も出来るイケメンとかイケメン通り越して超絶イケメンだよ!
「そうそう。でね、小鳥遊さんに声をかけたのは、今度一緒に俺の部屋でアニメ鑑賞会しないかなって思って。小鳥遊さん、烏丸さんとよくアニメ雑誌見てるから」
「えっ、ば、バレていたんですか…?」
端の方で見ていたから、バレていないと思ったんだけどな。
「ははっ。美少女二人が何か見てるんだもん。気にならない人はいないよね」
「ええっと、永山君?美少女二人って…」
「小鳥遊さんと、烏丸さんの事だけど?」
何!?その当たり前でしょ?みたいな反応!
そういうのは真矢さんだけに言っとけばいいのよ!
「皆さん目が腐っているんでしょうか。真矢さんならまだしも、私が…」
「くっ、くくく。小鳥遊さんは乙女ゲームのヒロインなのかな」
お腹を押さえながら、永山君は笑った。
乙女ゲームのヒロイン………?私、あそこまで鈍感じゃないよ。
可愛くもないし。髪の色だって茶色ってだけだし。
「私、あそこまで鈍感じゃないんですよ。美人でもないし…」
「あー、うん。予想通りで驚けないよ」
「よ、予想通り?」
「まぁいっか。それより、アニメ鑑賞会、どうかな?」
行きたい。行きたい。行きたい!!
「行きます!いつですか?」
「そうだな…。明日なんかどう?ちょうど休みだし。俺が小鳥遊さんの家まで迎えにいくよ」
明日ね…。後で遥に…って、遥は駄目。
家族じゃないって言われたし。頼らない。
それに、お母様とお父様に言えばいいだけだし。別に遥を頼らなくてもいいんだよ。
「いいですよ。でも家の場所わかりますか…?」
「大丈夫。小鳥遊家は大きいからね。すぐわかるよ」
「本当ですか?ありがとうございます」
こうして、私と永山君のアニメ鑑賞会の約束が決まった。