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3.羞恥と悲しみ

「秋澤、く、ん…」


詰まり詰まりで出した言葉。朝霧君の御友人というだけで胸が裂けそうだ。

朝霧君、怖かったんだもん。


「覚えててくれてたんだぁ。ふふ。ありがとう」


その仔犬系スマイル眩しすぎます。


「お入り下さい。お姫様」


スッと手を差し伸べてくれた秋澤君は本当に王子様のようでカッコ良かった。

さすが、朝霧君の御友人と言うところだろうか。

こういうところがモテるんだろうな。


「では、お言葉に甘えて」


薄く微笑み、秋澤君の手を取る。秋澤君の手は柔らかくて、目を瞑っていたら女の子の手だと思える位だった。


秋澤君のエスコートで入った先には、朝霧君、島本君がいた。


「咲良、久しぶり」


島本君が昔の呼び方で挨拶をする。


島本家と小鳥遊家は、当主同士が同級生ということもあり、仲が良かった。

私と島本君も仲が良かった…のに。


紘希ひろき、久しぶり」


私も、昔の呼び方で挨拶をする。

なんだか懐かしくてむず痒い感じがした。


「制服、似合ってるよ」


「ありがとう」


初等部とは違う、大人っぽいイメージの制服は私のお気に入りだった。

ブレザーは赤で、スカートなどは白を基調としている。

深緑色のネクタイは素敵だった。


「でもね。スカートはもう少し長くした方がいいよ?」


紘希は目を細めて、私の足を見た。その行為に私は恥ずかしくなって、秋澤君の後ろに隠れた。


というか、私のスカートの丈はそこまで短い気はしない。

遥には、渋々という感じで了承を得た長さだったけれど。

膝丈なんだよ?他の女の子より長いのにそれを更に長くしろと?

そう思いながら、私は紘希を軽く睨んだ。


日向ひなた?」


低く、冷たい紘希の声は怖かった。何で秋澤君に怒っているんだろう?

睨んでいた私を怒るのなら納得なのだけれど。


「小鳥遊さん、大丈夫だよ。紘希は、執着心が強いから」


何に執着しているのかは分からないけれど、私は紘希にとって妹のような存在だから、注意してくれたんだろうな、と改めて考える。


「はい」


「咲良、こっちにおいで」


紘希が手招きをするから、秋澤君の手を放し、紘希の方へ向かう。

グイっと手を引っ張られ、紘希の膝に乗せられた。

この体勢は…恥ずかしい。


「ひ、ひろき…。放して…?」


お腹に手を回されて固定されているから身動きが取れない。

なにより、紘希は、普通の男子より長身で力もある。

そんな紘希に体育2の私がどう抵抗できるのだろうか。


こんなことなら、護身術でも習っとけば良かった。


「駄目。放さない」


ギラギラした目で言われて、少し怯んでしまった。


「俺たちの前でイチャイチャするな」


朝霧君がはぁ、とため息を吐いた。

イチャイチャって…!!


「イチャイチャなんてしてませんっ!」


私が大声を上げて反論すれば朝霧君はふっ、と笑った。

その時の目が優しくて不覚にもドキッとしてしまったのは秘密だ。


「章吾、イチャイチャしてたように見えた?」


何嬉しそうな顔してんの!?


「ていうか、紘希、放して。…っ!」


紘希に手を握られてびっくりしてしまった。

貴方本当に十二歳!?私、十八歳までいったんだよ?


やっぱり、私って男子耐性がないのかな。


「ふふ。咲良…本当に…」


「いっ…。やぁ…」


指の間をスゥーとなぞられ、ゾクゾクしてしまう。

嫌だ。止めて。


「止めてっ…。ひろき…」


私がそう言えば、紘希はすぐに止めてくれた。

男子耐性のない私には本当に怖かった。

紘希が…。


金持ち界では、普通のことなのだろうか?

後で遥に訊いてみよう。


小さい頃から分からないことは遥に訊きなさいと教えられていた私は、今でもそうしていた。

遥は優秀だったから。聡明だったから。


「紘希なんて…。嫌い」


突発的に出た言葉。

本当は、そんなこと思ってない。

でも、余裕綽々の紘希に何か言ってやりたかった。


「えっ…。えっ!?まっ…!!」


紘希の言葉なんて耳にもくれずに部屋を出ていった。

こんなことなら、遥に言って断ってもらえば良かった。

後悔してももう遅いのだ。


――――――――――――――


走って向かった場所は、遥がいつも昼休みにいる場所。

学園の、裏庭だった。


裏庭は綺麗に手入れされていて、花も様々な種類があった。


キョロキョロと視線をさ迷わせて遥を探す。


「いた…」


遥が眼鏡を掛けて読書をしていた。

遥は、普段は眼鏡を掛けていないけれど、勉強や読書をする際に掛ける。


前に、遥の眼鏡を掛けたら、度が強すぎてクラッとした。


「お嬢様…?」


びっくりさせてやろうと思ったけれど、それはすぐに失敗に終わった。

人の気配を察するのが上手いな。


「遥…。あのね、話したいことがあって。いい?」


「はい。あのお三方の事ですか?」


「うーん。三人というか、紘…島本君のことについて」


危ない。紘希と呼びそうになっていた。

呼んでもいいんだろうけど、遥の手前、呼びにくかった。


「島本様…」


遥は、曇った顔をした。

どうしたんだろう?


「それで、島本様がどうしたんですか?」


私は先程の事について遥に言った。

疑問に思っていたことについても訊いた。


「そう、ですか…。いいですかお嬢様。あのお三方に近づいてはいけません」


私には、遥の言っている意味が分からなかった。


「どういうこと?」


「まず、自分の膝の上に女性を乗せる殿方がどこにいるんですか。

しかも、指の間まで…撫で回すなんて」


「た、確かに。でも、島本君にとって私は妹みたいなものなのかも。

私も遥のこと、家族だと思ってるし」


すると、遥は顔をしかめた。


「どうしたの…?」


「僕、お嬢様を家族だと思ったことはありません」


「え…?」


悲しかった。

遥はお兄ちゃんの様だったし、相談にも乗ってくれていたから。


私は、泣きたくなる気持ちを抑えてそっぽを向いた。


「その、僕は――」


「咲良!!」

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