ファイナルレジスタンス(裏)
夜美は魔界の女王になりました。
反対勢力はいましたが、腐って頭蓋骨になった魔王と膨らんだ腹部を大事そうに抱えている女王に文句を言う度に「あの人の何を知っているのよ!」とヒステリックを起こして仲間を一撃で葬られていくことで、次第に反対勢力を勢いを無くしいつしか異議を唱える者は消え去りました。
魔界の女王は残りの1割ほどまでにしか無くなった人間の領地を残し軍を撤退させ、支配地を3つ目の大陸と呼ばれていた魔島にだけ絞り、手下に魔素が充満していた魔界の土地を浄化させて緑豊かで栄養満点な野菜の採れる土地にしました。
「ふふ、これであなたの子もきっと元気に育ってくれるわ。美味しいものを食べて、綺麗な景色を眺めて、外に遊びに行くの」
女王は大きくなったお腹を撫でながら彼の遺物でもある禍々しい城でロッキングチェアに座って窓を眺めていました。
いつしか魔素に頼っていた魔物も魔素を浄化したせいか穏やかな生物となり、緑いっぱいの自然を愛していました。
魔王の城はとても平和な城へと変わりました。
女王は外部からの侵入を防ぐため城に残った家来を集め大陸全体を覆う大きな魔法結界を作り出しました。
いくら穏やかで平和になったとしても外の世界は知りません。なので内側から外側に出る際には何も起きないですが、外側から内側へ入る際には通れないように特殊な結界を張りました。それでも世界と言うのは広いものなので、好奇心によって大陸を離れる者もいましたが、それもまた1つの選択でしょう。
世界の8割は国王が治めていました。残りの2割は魔王の住む城が存在する大陸で、そこには入ることの出来ないとても強力な結界が張られていました。
国王が滞在する3割の土地にはある強力な気体が生まれるようになりました。
それを吸うと魔力がみなぎりとても強い魔法を使うことができます。しかしその気体を以てしても魔王の大陸には入り込めません。
国王は国全体に呼びかけます。
魔王の城が存在する大陸の結界を破壊すれば次期国王に選ばれるだろう、と。
しばらく経っても達成の目処が立ちませんでしたが、ある日ようやく目新しい人物が依頼を引き受けに王室の間を訪れます。
その人物は以前言語が通じずに突然帰っていた少女を少年にしたような顔立ちをしている、どこか掴めないような独特な雰囲気の男の子でした。
「なんかこの辺、臭いような……あ、あぁいえ! 王様のことではありませんよ! 本当ですよ! へ、へへ……」
国王は口角を少し上げました。
こいつを育てれば魔王に対抗できるかもしれん。
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はい、ハッピーエンドですね。間違いないでしょう。
夜美が魔王が死んでから落ち着いたような感じになっていますが、それは魔王が死んだことにより理想を理想のままにして理想を抱き続けているからでしょう。
また、夜美はこれでも一途なので、他の人物から求婚されても再婚はしないです。
魔王の子供は夜美がしっかり面倒を見るので虐待の心配はありません。夜美にとっての理想は魔王に全て詰め込まれており、その副産物である子供は魔王と夜美が2人で作り出された結晶であり魔王のみが生み出した完全なる理想の姿とは違うと夜美は割り切っているでしょう。
城を残したのは魔王が作った完全な城だからです。
大陸や魔素、魔王の手下に関しては魔王が作り出し、操作しているものでは無い上、夜美にとっては不自由な部分も存在したので少し強引ですが改善しました。
魔物は魔素を主体として生きていましたが無くても大丈夫だったようです。
魔素を浄化、と書きましたが単に大陸に小さな穴が開き、そこから漏れ出ているだけなので防ぐだけで穴の周辺に魔素が行き届かなくなり浄化できる、と言うだけです。
魔王の軍がいなくなった人類サイドはもちろん手付かずの大自然を我が物にしようと侵入するでしょう。
所持している者がいなければ自分が所持してしまおうと考えるのが人間です。避けては通れない道でしょう。
もしこれが国王と手を組んで侵入している物語なら魔王の支配地を徐々に奪っていき、最後の魔王の城を壊滅させた者が次期国王に選ばれていたでしょう。
それでは第1回FTA、「ファイナルレジスタンス」は終了です。
小時間のご清覧ありがとうございました。
本編ではファイナルレジスタンス(最後の抵抗)と言うより、ファイナリーレジスタンス(最後に抵抗)でしたね。