― とあるウサギの悲しい話 ―
これは番外編です。良ければ見ていってください。
よっす!俺は一角ウサギ。いっかくちゃんとかウサギちゃんとか好きに呼んでもらっていいぜ!
実はというとなんと今日は俺の誕生日。こう見えてももう三歳だぜ。大人だろ~。
けど悲しいかな……俺にはそれを祝ってくれる友達もいなけりゃ、親もいない……誰でもいいから祝ってくれねぇかな~……
ザッ、ザッ、ザッ
遠くの方から誰かの足音が聞こえてきた。
俺は岩影に隠れて息を潜める。
ん? あれは人間の女。えらいべっぴんさんだな!
どうやら、人間の女もこっちに気づいたみたいだ。
なんか、えらいジリジリ寄ってくるな……
もしかして……サプライズパーティーか!
後ろからワッ! て驚かそうとしてるな!
よしよし、そう言うことなら驚かされてあげましょう!
俺は気づかないふりをして、目をそらす。
しかし、一分くらい待ってみたが一向に来る気配がない。
あの距離なんだからそろそろ来てもいいと思うんだが……
チラッと女の方を見てみると目があってしまった。
しまった! 気づいてることに気づかれてしまった!
一瞬、時が止まったような感覚に襲われた。しかし、こうなっては仕方がない。俺は思い切ってあの女の胸に飛び込むことにした。
わざわざ、見知らぬ俺の誕生日を祝ってくれてありがとー!
後ろ足に思い切り力を込めて女の胸へと飛び込んだ。
が、力を入れすぎた俺は誤って女の顔の横を素通りしてしまった。
やべ! やらかした!
俺は急いで女の方に向き直す。
すると、あの女もこちらを見つめ、体勢を整えていた。
おっ! オッケー今度は失敗しないぜ!
俺は再び女の胸に向かって飛び込んだ。
うまくいった! 今度は成功だろ!
しかし、今度は女のはるか頭上を通りすぎていってしまっていた。
そして、俺はそのまま目の前の岩にぶつかってしまった。
いってぇ……なんでだ、今度はうまくいったと思ったのに……
今度こそ成功させようと女の方を向くとなんと女の服が淡い光をまとい、光っている。
おお! なるほど、その準備をしていなかったからあえて、俺のことを避けたのか!
よし! 次こそは!
俺は再び、女の胸に飛び込んだ。
ゴォーン!
そんな音が俺の頭に響いた。
なんだ、なんだ! もしかして、新しいクラッカーか! ああ、さすが人間だ……こんな盛大な誕生日プレゼントは初めてだったよ……
俺の意識はそこで途絶えた。
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「なんてこと、昨日のウサギが思ってたらどうしよう!」
ただの妄想とはいえ、そんなことを想像すると目頭が熱くなってきた。
「いやいや、魔物がそんなこと思うはずないでしょ……」
エルジュが呆れた顔でこちらを見ている。
「なによ! あんたが暇だからなんか話してって言うから話してあげたのに……」
そう言うと私は列の前の方を見てみる。
まだまだ人がたくさん並んでいた。
手荷物検査はまだ終わらないようだ。
あの長い列を待ってるときにこんな話してたら面白いだろうな、と思いながら書きました。
皆さんも普段食べてるお肉なんかの気持ちを考えてみると面白いかもしれませんよ?
まぁ、その代わりお肉が食べれなくなるかもしれませんけど。