第43話 「収束」
俺は走った。走って走って、走りまくった。どこに向かおうなんて考えなかった。それでも足は自然とあの場所へと向かっていたのだ。
雨が顔にバチバチと当たる。なんてありがたいのだ。おかげで涙も、鼻水も、涎も、みんな誤魔化せようというものだ。
そして俺はその場所についた。俺は土下座した。自分のふがいなさを申し訳なく思った。立ち上がろうとして、よろめいて、しりもちをついた。そしてそのまま、後ろに倒れた。
白河家累代の墓の前で、俺は大の字になって寝っころがっていた。顔中で、体中で、夏の到来を告げる雨粒を受け止めながら、いつのまにか俺は笑っていた。白河派の四ヶ条の一、『人と人とを結び合わせること』。俺たちはたしかに絆を結んだのだ。だったら俺たちの勝ちだ。白河派の圧倒的勝利。これが答えなのだ。
しかし、歴史にはそうは記されないであろう。衆人環視の中で結果発表がなされたのだ。そうだ。白河派は終わったのだ。これでもうお仕舞いなのだ。今日という日は歴史に記憶される。だからこそ未練がましいことをするべきではない。それは偉大なる白河光太郎を汚すことになるのだ。
雨は降り続いている。そうか、空よ。お前も泣いてくれるか。悲劇の主人公を気取る俺である。しかし、そのとき、たしかに俺は聞いたのだ。雨音を縫って、それは聞こえてきたのだ。唯一無二の、至高の、神にも等しいあのお方の笑い声が。それは人の心を浮き立たせずにはおかない、明るい、気持ちの良い笑い声なのだ。俺は間違っていなかった。今、白河光太郎の精神が俺を祝福しているのだ。そして俺も笑ったのだ。笑って、笑って、口の中に雨粒が流れ込んでも、笑いまくったのだ。
今日という日。それは白河部長が卒業して三ヶ月ほど経った、ある雨の日であった。まさにこの日、白河派の時代は終わり、新しい人たちによって新白河派ともいうべきものが始まったのである。
……というお話だったのだ。そう、最後の部分はついさっきの出来事だ。そういうこともある。つまり、そういうことなのだ。面白かったかな?
そのとおり、君も此ノ川高校に来れば、今の話に出てきた連中に会えるだろう。俺も実話小説を読んだら、登場人物の顔写真を見たくなる方の人間だ。君もこっそり見に来るとよかろう。
俺はもう終わった人間だ。しかし君はそうではない。これからどうにでもなる。そんな気がする。いや、そんな気しかしない。生きろ。生き抜くのだ。
さて、雨も止んだようだ。俺はもう行かなければならぬ。君もそうだろう。君も行かなければならぬ。そういうことなのだ。では、もし縁があればまた会おう。さらばだ。




