リリア王女
お待たせしてしまいすいません。
扉から入ってきたのは、十七、八歳ぐらいの少女だった。
「お父様、お呼びとのことですがなんでしょうか」
少女は、国王に向かってそういった。
「皆、紹介しておこう。知っているとは思うが、私の娘で、王国の王女リリアだ」
「皆さま、はじめましてリリアです。よろしくお願いしますね」
リリア王女は、国王の方からヘルニア公爵の方に体を向けて、そちらにきれいなカーティシーをした。
「これはこれは、はじめましてリリア王女。私はスカル・ヘルニアと申します。以後お見知り置きを」
スカルはリリア王女の手を取って言った。
「おっほん、各々の紹介はそこまでにしておいて、やっと全員揃ったな。これで本当の意味で本題に入ることができる」
国王は、ため息をつきながら言った。
「さて、話の続きだが、私には王子がいない。よって、ヘルニア公爵の長男である、スカルを指名しようと思ってあった」
国王がそういうと、ヘルニア公爵には隠しきれないほどの笑みが浮かんだ。
「……だが、その理由がなくなった。
よって、ここにおる我が娘、リリアを次期国王とする」
「「「「は!?」」」」
ヘルニア公爵の関係者たちは、国王の言葉を飲み込めなかった。
特に、ヘルニア公爵は取り乱した。
「陛下、もう一度おっしゃっていただけませんか」
「ああ、何度でも言ってやるぞ。私はリリアを次期国王とすることに決めた」
ヘルニア公爵は唖然とした。
今の今まで、ずっと自分の息子が次期国王になることを疑っていなかった。
息子が国王になれば、自分の思い通りに国を動かせると思っていた。
しかし、これではその夢が叶わないではないか。
「何故ですか。何故息子ではなく、リリア王女なのですか」
「だから言っただろ、理由がなくなったと」
「理由?」
ヘルニア公爵は取り乱しながら国王に聞いた。
「ああ、そうだ。何故、私が王家の血筋ではないものを次期国王の候補にしていたのか、わかるか」
「?」
国王の問いにヘルニア公爵は頭を傾げた。
「その様子では分かっていなかったらしいな。
では、説明してやろう。私には子供がいるにはいるが、王女であるリリアだけだ。しかし、リリアは女。
女というだけで他の者から舐められる可能性があったので私はリリアを次期国王にとは考えていなかった」
男が強くて、女が弱い。
この思想はこの国だけでなく他の国でも、ひいてはこの世界における大きな思想だった。
もしも、女性が国王になったとすれば、その国は弱い国だと舐められてしまうのだ。