登場
「ローズは私と一緒にいた時に襲われたのです。そうだな、ローズ」
「はい。あの時スカル様に守って頂けなかったら私今頃どうなっていたことか分かりません」
「つまり、私自身が証言人ということです、陛下」
スカルは国王に力説した。
「そうか、分かった。
では、この話はエミリアが戻って来てから決着をつけるとしよう。本人がいなければどうにもできないからな。いいな、スカル」
「は、はい」
国王の口調は、王者の風格からか、反論を言わせぬ力強さがあった。
事実、これまで何度も国王の言葉に口を挟んできたスカルも受け入れるしかなかった。
「さて、それでは本題に入ろうか。
先程より話に上がっている婚約についても関係してくるのだが、今回の本題は王位継承者についてだ」
国王は先程よりもより一層、表情を引き締めた。
「私はあと数ヶ月の後に正式に次代の国王を指名しようと思っておる。
発表は数ヶ月後だが、もうすでに私の中で、次期国王は決まっておる。
それをお前たちには伝えておこうと思っので、今回はそなたらを集めたのだ」
国王がそういうと、ヘルニア公爵は一歩前に出た。
「では、次期国王には、我が息子を……」
「待て待て、そう焦るでない。話には、順序というものがあるからな」
「し、失礼しました」
ヘルニア公爵は、嬉しさを隠せていなかった。
国王から自分達だけが招集されて次期国王について話される。つまりは、次期国王に自分の息子が選ばれる。
そうすれば、実質的に自分がこの国を支配できるという一連のの流れが頭の中で想像できていたのだ。
「まず、今一番この国で問題となっているのは、私に王子が生まれていないということだ。
もしも、私のもとに王子が生まれていれば、その子を次期国王に指名していたのだが、結局生まれていない」
今、この国が抱える問題は次期国王に誰がなるかということだった。
今まで、この国の歴史の中で、国王は全員が男だった。しかし現国王には、直系の男子は生まれておらず、後継者がいないという状態なのだ。
「つまりは、今までとは違う形で王位を継承しなくてはならなくなったということだ」
と、その時、
「お父様、入ってもよろしいでしょうか」
「リリアか、入ってきなさい」
「……失礼します」
そっと扉が開かれた。