招集
国王が王都に帰還して数日が経ったある日。
ヘルニア公爵家長男スカル・ヘルニアに国王からの招集がかかった。
また、同時にシシリア男爵長女ローズ・シシリアにも。
他にもその二人の親類などにも王城に来るようにとの招集があった。
「国王陛下の招集のもと、今回、招集されたもの全員揃いました」
「うむ、わかっておる」
宰相が口上を述べた後、国王はそれに軽く反応した。
「陛下、この度はどのような理由で私どもをお集められたのでしょうか」
国王にそう言ったのは、今回招集されたものの中で一番位の高いヘルニア公爵だった。
普通、ある程度の人数がいる場合、一番位の高い人物が話をすることになっているのだ。
しかし……
「陛下、どうかあの悪女であるエミリアを死刑にして下さい」
そのことを平然と破るものがいた。
スカルだ。
彼はその行為が無礼だとは考えず国王に向かって言った。
「ほう、何故だ」
国王は特にそのことでお咎めもしなかった。
ヘルニア公爵もスカルの行動を咎めようとしていなかった。
ただ宰相だけはその行為に不快感を隠しきれていなかったが。
「あの悪女は、ここにいる我が婚約者のローズを暗殺しようとしたのです。それはつまり将来国母となる女性の命を狙ったということです。そのようなオンナが生きていていいはずがありません。そうだろ、ローズ」
「はい、スカル様。
私、あの時はとっても怖かったです〜」
「大丈夫だぞ、お前を殺そうとするものはもうすぐでいなくなるからな」
スカルとローズが甘い空間を作っているのに対して、その様子を冷ややかな目で見ていたものが三人ほどいた。
「それは本当のことなのか、ファニア伯爵」
この場には、ヘルニア公爵とシシリア男爵だけでなく、ファニア伯爵も呼ばれていた。
「全くの虚偽ですな。エミリアは、そのようなことをする子ではありません。まず、あまり社交などにも出ておりませんでしたから、ローズ嬢のことを知らなかったと思います」
「陛下、その男の言うことを聞いてはいけません。その男はあの悪女の味方です。陛下にも平然と嘘をつくでしょう」
スカルは声を大にして言った。
そこに、ドアをノックする音が響いた。