こいつのスキルがチート過ぎて笑えないよ
シュウィイイイイイイイン…
ワープの効果音のようなものが流れた。
暗くなっていた視界が次第に明るくなっていく。
そしてそこにはThe 始まりの街というような屋台や教会などが並んでいた。
いや違った。
そこは空が見渡す限り赤黒くさらに火柱などが乱雑に下から出ているドラゴンの巣のようなところであった。
「は?おいおい嘘だろなんだよこれ!ラスボスと戦うような所じゃねぇかよ!」
「こ…こわいです」
そう言って少女が俺の背中に隠れてきた。
「そういえば君の名前をまだ聞いてなかったね」パニクっている頭を落ち着かせるためになにか呟いてみた。
「は?今聞くの?バカなの死ぬの!?今の状況考えろよ!」
ダークボイスでそう言いながらもまたピュアボイスに変えて彼女は言った。
「私の名前は…リンっていいます…よ、よろしくお願いします。」
どうやら彼女はリンという名前のようだ。
「アンタの名前も言いなさいよ」
真は「シン」と名乗った。
「ふーんシンねぇ……いや、まさかね。」
リンはそうなにか知っているような口振りで呟きながらも疑問を押し殺した。
今の状況をどうするか、それを考えるのが先である。
真が生き残る術を考えている中、
「ごめんなさぁーい、あまりにもぉでるのがぁ、おそかったんでぇ、わーぷほーるがぁ、ばぐっちゃいましたよぉ、」
話すことがとてつもなく面倒くさそうな不快感がある声が聞こえてきた。
「いまからぁわーぷさせてあげようかぁ~?」
何やら状況を楽しんでいるような声である。
「冗談じゃねぇ!早く転移しろ!」
「その必要はないわ」
真の声が裏返りそうなほど焦っている状況でリンはなにやら策がありそうな口振りで言った。
「私のパートナーになるんだからこれくらいは見してあげるわよ。私の……スキル……**Teleport**」
リンがそう唱えた瞬間、周りが青白い光に包まれた。
ゲーマーなら誰もが知っている技であろう。瞬間移動である。
使い方によってはただのチート呪文になる技である。
「……おいおい……お前のスキルチート過ぎだろ……」
そう誰にも聞こえないような声で真はそう呟き、ここで自分がどんな末路を辿るのか、それを今一度深く考えていた。