そう、俺が求めているのは王道ヒロインだ
脳に直接叩きつけられるような思い声、管理者の声である。
「これからこのゲームでの最重要項目、恐怖値【SG】というものについて説明して差し上げよう。恐怖値とは文字通り君達の心情を読み取り、それを右上に出ている三本目の紫色のゲージに示すものである。恐怖を感じていない時ほど、ゲージは0に近い無色の状態となるが、恐怖をより感じるほどそのゲージは右へ進み、色が濃くなって行く。これがどういう事を表しているのか、君たちにはもう分かっているだろう?」
そこで参加プレイヤーの過半数は悟ってしまった。
【恐怖】
それは自らの過去に強く思い出があるものだ。
ある者は学校で陰湿ないじめにあい。
ある者は会社で重大なミスを犯してしまった。
ある者は生命の危機を感じたことも。
ここにいるプレイヤー達は、皆それぞれ思い【恐怖】を感じているのである。
故にこの恐怖値という物が自らにどんな影響を及ぼすのか、それが理解できてしまっていたのだ。
「この恐怖値が最大になるとHPが無くなるのと同じ処理、死となる。勿論デスペナルティが発生する。これはこの恐怖値を攻略する事で貴様らようなゴミ同然の人間を救おうと言うプロジェクトである。心して感謝をし、取り組むように。以上だ。」
そういうと後ろの方の扉が開きワープホールのようなものが出てきた。そこへ導くようにパーティクルが出て来る。
そのパーティクルに従いぞろぞろと流れに身を任せてこの場を後にする。
普通だったらそうだろう。しかしなぜ電脳世界なのにも関わらずわざわざその場でワープさせないのか、その疑問が残って、あえて少しその場に立ち尽くしていた。
プレイヤーがいなくなった時俺は唯一のこの場の死角であるモニターのようなものの裏を見てみた。
『君はなかなか勘のいいプレイヤーだな。そんな君にこれを授けよう。』
なんとも厨二心をくすぐっていく言葉だろうか、その下には紫色のチップのようなものが浮いていた。
ーーーー““エピックスキルチップ【恐怖値偽り】このスキルを獲得した者は、ある発動条件により恐怖値を偽ることができる 使用回数∞ レア度AAA ””ーーースキルを獲得しました。スキル装備は左フリックでメニューバーを出し、スキル選択をして下さい。
長年引きこもっていたゲーマーの勘というものだろうか。どうにも死角が気になってしまう。
その時後ろから気配を感じた。リアルではこんなものを感じなかったんだが、やはりそう言うステータスがあるのだろうか。
そうすると目の前に銀髪の美少女が下から見上げるような目線で
「それを獲得したのですか?」
そう聞いてきた。他人、ましてや女子と話すなんて言う能力が無いに等しい俺はただあわあわしているだけであったが、何を悟ったか、銀髪の少女はそう言った。
「私と……契約を結んでくれませんか…?」
これがその少女「リン」との出会いであった。